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MMORPGのNPCもモブデリ

和の国のモビッチ②

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違うBLゲームの鬼の如月が僕を縛る赤い紐を丁寧に解くと、床に転がり頬を腫らした黒騎士さんに睨みつけた。


「モビッチを傷付けることは許さない」


腐女子さんは、凄い隠し球を仕込んでいたようです。


「如月」


和の国の妖怪たちの中に、淫獄の鬼を混ぜるなんて想像もしていませんでした。


「モビッチが近くにいる気配がしてな。会いたい一心で探していたら、紐で縛られ襲われているモビッチを見つけた時は腸が煮えくり返るかと思ったぞ」


「なんで、この世界に?」


「この和の国でエリアボスを務めれば、モビッチに、もう一度会えるかもしれんと勧誘されてな」


「オリジナルキャラって勧誘出来るの?」


そういえば帝王くんも、元はオリジナルキャラだったっけ?ライオン、元気かな?なんて思ったりしていた。


「作品から出られたのは俺だけだから、これが普通なのかは理解出来ていない。極悪非道とかいう会社に所属する事になったのだ」


極悪非道って強面の悪役派遣の会社じゃんか!


「モビッチ、会いたかった」


「僕も「ちょーーーーっと待った!」」


優しく如月に抱き寄せられて、すっかり身を委ねていた僕の言葉を遮ったのは黒騎士さんでした。


「ゴホン。和の国のエリアボスの如月がBLキャラなのは理解致しました。ですが、ここでの本番は禁止されております。あくまでも私は上の指示で味見をさせて頂いただけなので勘違いしないでください」


「逢い引き宿だって」


「ここはヤリ部屋ではございません。許されるのは障子に映る影のみです」


「ならば俺のテリトリーならば構わぬだろう。モビッチよ、和の国を案内しよう」


僕を連れ去る気満々の如月の腕を黒騎士さんが掴んで止めている。


「お待ちください。司祭様が鬼に襲われる設定はございません」



黒騎士さんと如月の攻防が続くなか、如月の手は僕の髪や耳、首筋を指でなぞりながら抱き寄せる腕の力を強めてられていました。


胸筋が盛り上がった厚い胸板に頬を寄せれば、耳に伝わるのは少し早い鼓動。


「はぁ~っ。司祭様も罪なお方ですね。和の国でもエリアボスに溺愛されるとは」


呆れながらも部屋の片付けをしてくれるから、教会に帰る時間は厳守する様に釘をさしながら部屋から送り出してくれた。


「教会に帰さねばならぬのか」


2人で手を繋いで歩いていると、会話は無く自然と指を搦め恋人繋ぎに変わり、少しづつ距離が狭まり寄り添うように歩いていました。


歩幅は段々と小さくなりスピードが落ち、ゆっくり進む先がどこなのか尋ねることを忘れて風に靡く長い金色の髪を見ていました。


腰の辺りの長さで切ったみたいです。


シンプルな白い着流しは黒と金色の糸で梅の花の模様が刺繍されて少しだけ派手になっている。


「俺は和の国から出られない。その権限が無いからだ。エリアボスが他の国に現れると問題らしい」


「僕は司祭だけどモブだから、割と自由がきくんだよ」


「そうか」


また無言で歩き始める。


屋台を素通りし竹林に入ると竹の奥に海が見える。


カラカラと笹が風を受けて音を立てて揺れている。


「和の国で隠しBLキャラって如月だけなの?」


「………俺では不満か?」


「そうじゃないよ。他のキャラが居るなら近寄らない様にしないと、如月に吹き飛ばされちゃうでしょう?」


「ふむ。和の国に2人のボスを倒すとエリアボスとして俺が戦うのだが、ケツを掘られたい漁師が居ると聞いているが興味が無くてな」


帝王くんが喜びそうな情報だけど、僕も興味は無いかな。


「白い服も似合うな」


「簪」


「ん?」


「梅の花の簪。使い方がわからないけど大事に持ってるよ」


「そうか」


少し嬉しそうに声のトーンを上げたり、耳をほんのり赤くしたり…………狡いよ、


ドキドキするじゃんか。


ぷっくり頬を膨らます僕の顔を覗き込む如月の顔がだらしなく緩んでいて、額にチュッと音を立ててキスをしてきた。


離れた唇が鼻先に止まり、頬の肉に吸い付かれると引っ張られて口が開いてぷふぅと音を立てて空気が抜けてしまった。


「やだ。変な音がで…んっ」


唇が触れるだけのキスをされた。


背が高いから中腰になっているから、ガニ股に開いた足が可笑しくて、握られている手が暖かくて、なぜか泣きそうになった。


「次に和の国を訪れる時は変な乗り物など使わずとも直通できる様にしょう」


「え?」


「モビッチが来たい時に来れるようにな」


「できるの?」


「あぁ、俺はエリアボスだからな」


そのまま竹林の奥に行くと、岩で造られた大きな井戸が現れ、よく見れば中を下りるように縄ばしごが設置されている。


「この下がダンジョンになっている。最下層に俺の寝所がある。縄ばしごは危ないからな。俺の権限でモビッチ専用のワープポイントを作ろう」


ワープポイントは、1度は自分の足で訪れた場所でないと作れないし、しかもプレイヤーがエリアボスの部屋には作れない。


僕を軽々と横抱きにした如月は、縄ばしごを無視してジャンプして飛び込んだ。


「ひぃっ…にやああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ!」


胃が持あがる気持ち悪さと下から吹き付ける風と独特の浮遊感に泣きながら如月の首にしがみついた。


地面に到着してもバクバクと音を立てて心臓が暴れて止まらない。


「モビッチは本当に猫みたいだな」


「ばっ馬鹿じゃないのぉ!!飛ぶ前に言ってよ!せめて心の準備させてよ!!!」


もう恐くてギャン泣きだよ!


「すまない。そんなに泣かないでくれ」


横抱きされながら頭を撫でられ、顔を覆っていた手の上なら大きな舌が舐め、指の隙間に滑り込まされた口に吸い付かれてくすぐったいから我慢できずに、顔を上げれば唇が瞼やまつ毛をキスされる。


「ばか…グズッ…ばかばか…ヒクッ……ばぁーか」


意味も無い文句が止まらない。


「もう恐い思いわさせないから許してくれ」


「もう…ズッ………バカ」


「すまない」


「ワープポイント…ッ…作った後に優しく……いっぱいエッチしてくれたら許す」


「きひゃっ」


まだ横抱きにされたままなのに、急にしゃがみこんで抱き込まれお腹の辺りに顔を埋めて固まってしまった。


「する。何度でもしてやる」


お腹に声が響いて息が熱いくらい服を通して届いてくる。


「秘密の控え室に案内してやる」


復活した如月に抱っこされたままダンジョンを突っ切る途中で見たのは頭を下げて道をあける妖怪達の姿でした。
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