黒虎の番

月夜の庭

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嫉妬に駆られたラファエルに捕まった

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しばらくエスクァイアに滞在すると言う勇者達と別れ、拠点に帰って来ていました。


『ただいま~♡』


「ただいま戻りました」


ラファエルに縦抱きされながら帰って来ると、居間の大きな絨毯の上に寝転がって昼寝するパパンとアンちゃん。


なんだか幸せな気持ちになる光景に、静かに部屋から離れて2階に上がる。


『最近、2人で昼寝してる事が増えたね(小声)』


「………色々有るのでしょう。…………羨ましい」


『なんか言った?』


「いえ」


それから押し黙ったラファエルに、部屋に送ってもらうと、素早く鍵を掛けられて、そのままベッドの上にコロンと寝転がらされて、顔面をお腹に埋めてしまう。


短い手で銀色の頭に添えてみる。


『どした?』


ナデナデする。


逆に誰かの頭を撫でるのは、あまりないので新鮮で楽しくなっちゃいました。


もふもふ………サラサラ……ナデナデ。


ラファエルの髪の毛がサラッサラなのは知っている。


毛皮や肉球が邪魔して分からないのが勿体ない気がします。


こんな時、人間だったらと思ってしまう。


小さくても***を撫でる手が欲しい。


あれ?


なんかノイズが入ったみたいに、考えに集中出来ません。


何を撫でる手なの?ラファエルでは無いの??


戸惑う あたしの前足が止まると、鼻から下を毛皮に埋めながら、目だけを上げて見上げる視線が突き刺さる。


これが噂の”必殺 うるうる上目遣い”なのか?!


ぶりっ子属性の女子が連発すると言われる、免疫力がない男子ならイチコロと噂される技。


カッコ可愛いラファエルの上目遣い。


くっ……恐ろしい子!!


「モゴモゴ」


『口を、あたしのお腹に付けたままだと喋れないから』


眉間に皺を寄せながら顔を上げる仕草も可愛く思える。


「昨日までは、ビアンカ様と2人きりでした。なのに勇者達が加わると、一緒に居るのに距離が遠いのです。寂しくてたまりません」


真剣に小虎の あたしに訴えている。


人間の女の子に、言えば良いのに。


そう思うものの、なぜか胸の奥がツキンと痛んだ。


病気かな?


風邪?


「私が我儘なのでしょうか?もっと一緒に居たいと思うのは」


泣きそうな顔で、大きな手がお尻から尻尾の付け根にかけて撫で始める。


『やあぁぁん』


ピリピリっと電流にでも感電したような衝撃が背中を駆け抜けた。


『ジッポ……ダメ』


「私以外の男に撫でられて、気持ち良さそうに委ねる姿に、腹が立つやら羨ましいやら」


尻尾の付け根を揉みしだかれて、身悶えてもラファエルの手が弱まる気配がありません。



『やぁらぁん………グスッ』


「泣いて逃げるのは狡いです」


『逃げてな…ヒクッ』


「泣かれたら、止めざるおえないじゃ無いですか。本当は、もっと触りたいのに。ずっとエヴァンス達に触らせていたのに。私無しでは生きられなくしてしまいたい」


まるで獲物を狙っている猛獣の様な強い視線に、背中やお腹がゾクゾクする。


逃げ出したいけど、逃げられない気がして、逃げたくない自分もいる。


パニック状態の頭には、ラファエルが何をしたいのか理解できない。


「私以外の手で気持ち良さそうにしないでください」


ラファエルの唇が額に近づいてきたので、無意識に頭を逸らして逃げる。


「私にはビアンカ様だけなんです」


そのまま泣きそうな顔のラファエルに離してもらえず、そのまま彼の腕の中で朝を迎えるのでした。


あたしは虎なのに、女とし愛されている錯覚に捕らわれている自分がおかしく思えるけど、嬉しいのも事実だった。


もっと、あたしを好きになって。


不意に浮かんだ気持ちを振り払うように、小さな頭を振ると、不思議そんな顔で小首を傾げて見ているラファエルに『なんでもない』と答えるしか出来ませんでした。
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