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真のゲームが動き出す

消えた男爵令嬢

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「え?ラフレアが行方不明?」


「あぁ、リリーに諭され改心したあの後、屋敷に戻る為に馬車に乗ったまでは確認出来たのだが、それ以降の足取りが掴めない」


私とセシル先生で、のんびりパンを持ち寄りランチしていたら、暗い顔のデズモンド先生とオースティンが入って来てラフレアが行方不明だと教えてくれた。


「どうも拐かされた疑いがあるらしい」


「魔法で追跡もしているそうですが、上手くいっておりません」


オースティンが私の隣に、デズモンド先生がセシル先生の隣に座りなが話している。


「最近………よく聞く年頃の少女が姿をくらます件と関係があるのか?」


「そんなことがあるのですか?」


「うん。まだ城でも一部の人間しか知らないんだけど、12~18位の少女が何人か行方不明になっているらしい。それも突然に」


セシル先生の話しで、物凄く嫌な予感がします。


「男爵も、なんだかんだ言って自分の娘だからな、ラフレアが可愛いんだろう。血眼になって探し回っているらしい」


オースティンが私の頭を撫でる。


「リリーは、絶対に1人になるなよ」


「え?私が誘拐される心配がある お話でしたの?ラフレアは大丈夫なの?って お話ですわよね?」


「オレの最優先はリリーの安全だ」


「用心はしてください」


フードを外したデズモンド先生に机の上で、私の手を握って心配そんに見詰めていた。


「いや、婚約中のリリーは大丈夫だろう。オースティン叔父さんが用意した指輪は特注品だからね。いざとなれば追跡も出来る」


そんなに凄い指輪なの?!


セシル先生の言葉で安堵の空気が流れた。


「行方不明では無いが、マルガリータ嬢の遅刻や欠席が目立つ様になったな」


ラフレアが姿を消して内心はホッとしている人達が多い中、マルガリータの反応が微妙だった。


少し焦っている様にも見えた。


「あの…………私の話を聞いて欲しいのですが、デズモンド先生…………音を遮断する結界を張って頂けませんか?」


ここには、私が信用している人達しかいません。


何より、マルガリータはオースティン以外で、デズモンド先生、セシル先生に対する警戒心が薄い気がした。


諦めて身を引く形になったエドとランスロット様は、観察対象の様だった。


マルガリータの行動は、ヒロインとして攻略対象者を堕としていく感じではなかったので、気になって見ていました。


「実はラフレアが時々、口走っていた前世の記憶というモノが、私とマルガリータにもございます。しかし、私には彼女達が言うゲームを知りませんので、実際にあった事しか分かっていないので……………話すべきか悩んでおりました」


デズモンド先生が結界を張ってくれた事を確認して、私は全てを話して聞かせた。


それこそ前世の記憶から全て。


思い出しても何とも思ってない気がしていたけど、いざ口にすれば言葉に詰まり、涙が溢れてきて止まらなかった。


殺された記憶さえ話し切ってしまえば、落ち着いて話す事ができ、3人は静かに聞いてくれていました。


「ラフレアがマルガリータに当たりが強かったのは、彼女が知っているゲームのヒロインそのものの姿の男爵令嬢の存在が許せなかったのだと思いますわ」


話終えるよりも早く、オースティンの手が私を捕らえて抱き締められてビックリしました。


「オースティン?」


「リリーは、一方的な暴力に近い行為で殺された記憶を持ったまま……………オレには、マルガリータが何をしたいのか分かった気がする」


「そうですね。兄の処刑は偶然ではなかった。見事な配置だと思いますよ。セシル先生を保健医にしたいラフレアをそばに置くことで、本来なら襲われる筈だったリリアーヌ様を守りつつ2人を追い詰める。自分が側に居なくてもリリアーヌ様を守るには、ラフレアを側に置けば間違いなく目的を実行できます」


「でもリリアーヌ大好きなマルガリータが、そんな危険な賭けにも見える配置を考えるとは思えないな。まして襲われる心配がある立場だと分かっていて、リリアーヌをブルームフォンテーン公爵令嬢に配置するとは思えないよ。今になって考えれば、デズモンド先生の兄は…………よく媚薬に耐えてリリアーヌを襲わなかったと思うんだけど」


確かに、私とランスロット様の秘密のお茶会の側で口にした紅茶に…………あれ?


「あの…………ラフレアはランスロット様の事を知らなかったのに、よく間違わずにデズモンド先生のお兄様に媚薬を盛れたわね……って思ってしまいました」


あの時、予め用意されていた紅茶は二人分ですが、影武者さんを放置することは出来ないので内密に、もう一人分を用意していた。


ピンポンで影武者さんに媚薬を盛るなんて、凄技な気がする。


「マルガリータ以外の存在を感じますね。その者はマルガリータ嬢が登場するまでの間、確実にリリアーヌを守っていたようです」


何も言わずにギューっと抱き締め続けるオースティンをよそに、デズモンド先生とセシル先生の話が進んで行きます。


「オースティン?」


「すまない。あんな話を聞いて………とても他の事など考えられない。オレはリリーを愛せているだろうか?触れられて嫌だとか思った事は無いのか?」


あ………やばい…また泣きそう。


オースティンは、マルガリータやラフレアの行動よりも、殺された記憶に傷付けた私を心配してくれている事が嫌でも分かった。


空気を読んで外に出て行く2人を目で追いながら、痛いほどキツく抱き締めてくれるオースティンを更に好きになっていた。


最初から手放しでマルガリータが応援してくれたのは、オースティンだけだった。

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