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「龍一さん……どしたんですか?」
「…いえ、ここしばらくあなたを体の上に載せてたので、その…」
「もしかして眠たいです?」
「すみません…ハイ」
砂浜から涼しい室内に戻り、リビングでパソコンをぽちぽちしていた萩原さんに冷やかされつつ寝室に戻って…数分。
さっきまで興奮してたはずなのに、龍一さんがわたしを自分の上に載せた途端に瞼がとろん、と下がる。
病院でもずっとそうしていたから、パブロフの犬状態なのかも知れない。……そういうわたしも、正直を言うと眠たくなってしまっている。
彼の筋肉は衰えていないから、わたしの知らないところで鍛えてるんだと思う。使い込まれた体は本当に優秀なクッションになってくれる。
わたしが背中の傷で痛くないように、そうしてくれていたのだと思う。暖かいし、好きな人に抱きしめられて、高級な天然低反発クッションに囲まれているような状態だし……気持ちよくて仕方ない。
「せめて、ご飯を食べてから寝ませんか?お薬も飲まないといけませんし」
「……しないんですか?」
「優さんも眠たそうですし、無理にするのも気が引けます」
「龍一さん、わたしが他の人に触られたから嫌なんですか?」
「そんなわけないでしょう。あなたがどんな姿でも愛せます」
「…………」
「証明して見せましょうか」
「うーん…うーん……」
思い悩むわたしの耳にキスして、龍一さんが微笑む。
「もう、ずっと一緒なんですから…いつでもできます。僕は、ずっとあなたを自分の手元に留めおきたくて必死でした。……そう言う欲がないわけじゃありませんし、したいですけど。
優さんが、自分の意思で僕を選んでくれたんだと思うと胸がいっぱいで。どうしたらいいのかわからないんです」
「……わたしもです」
好きな人の傍に居られるだけで、こんなに安心できるのは本当に幸せなことだと思う。すこし、ゆっくりしてみてもいいのかも知れない。
「とりあえず、昼食を食べましょう。それから…後のことは考えましょう」
「はい」
何も考えなくていいなんて、よく考えたらとっても贅沢かも知れない。
今はただこの時間を楽しむのも素敵な事かも。
わたしは龍一さんと手を取り合って、再びリビングに戻ることにした。
━━━━━━
「えっ…社長、早くないですか」
「何がだ。昼食にするんだからどいてくれ」
「えー…あっ、なるほど、昼ごはんが先ですね。俺もご一緒していいですか」
「と言うか何故ここにいるんだ。朝食以外は別行動のはずだろう」
大きなダイニングテーブルに萩原さんがボーッと佇んでいる。ご飯も食べずに、どうしたんだろう。
「公式供給が欲しいっス」
「…………は?」
「公式?供給ってなんですか?」
「優さんと社長のイチャラブが見たいっス。会社のメールにも散々要望メールが届いてますからね!」
「「…………」」
萩原さんはパソコンを仕舞い込み、高そうなカメラを三脚にセットし出した。
……えっ、供給ってそう言うことですか?
「ご飯の様子を…撮影するんですか?」
「そうしてもらえると助かるんですけどー。正直ファンとしては新しい動画が欲しいんですよねー」
「な、なるほど。龍一さん、撮影したほうが良さそうですけど……どうします?」
「まぁいいでしょう。しかし、需要があるのかそれは」
「あります!!!ぜひ!ファン達に優さんが元気にしてる姿を見せてあげてください。
マジでメールボックスが阿鼻叫喚なんっスからね!!!」
「じゃあ、そうしましょう。萩原さんもせっかくだから一緒に食べましょうよ」
「いいんですか!?優さんの手作りでしたよね!?」
「はい、久しぶりなので上手にできたかわかりませんが……いいですよね?」
苦い顔をした龍一さんは渋々頷き、萩原さんはスキップでキッチンに向かう。
さっき浜辺に持って行ったお昼のバスケットをテーブルに乗せて、サンドイッチやフルーツたちをテーブルに並べていく。
龍一さんがテーブルの下にある引き出しから複数のお薬を出してわたしの手のひらに置いてくれた。
萩原さんは、ビールを二つ、オレンジジュースと牛乳を持ってわたしの前に置いてくれる。
「サンドイッチには牛乳がおすすめっス。カルシウムたくさん取らないとダメっスよ!」
「ふふ、ありがとうございます。……ここのビール、美味しそうですね……」
「優さんが飲めないのに僕が飲むわけにいきませんよ。萩原が飲め」
「何でですか?飲んでいいですよ。酔っ払った龍一さんを見てみたいです」
「えっ、見たことないんですか?!」
「ないです。萩原さんは?」
「そう言えばないっスね。会食のときは全然酔わないから、マジで酔うのかすら知らないっス」
「ほほー…」
ビールのグラスを龍一さんの元へとん、と置いてにっこり微笑み、わたしは告げる。
「飲んでください」
「………………」
「あっは!いい!これは素晴らしい。ちなみにこのカメラでモザイク追跡できるようセットしてありますんで、顔バレは心配しなくていいっスからね」
「はーい!」
「…………」
萩原さんがカメラのスイッチを押して、ニヤリと笑む。
(楽しみっスね)
(はい)
こそこそ話して、二人でほくそ笑む。三人で手を合わせて『いただきます』とつぶやいた。
「龍一さん……どしたんですか?」
「…いえ、ここしばらくあなたを体の上に載せてたので、その…」
「もしかして眠たいです?」
「すみません…ハイ」
砂浜から涼しい室内に戻り、リビングでパソコンをぽちぽちしていた萩原さんに冷やかされつつ寝室に戻って…数分。
さっきまで興奮してたはずなのに、龍一さんがわたしを自分の上に載せた途端に瞼がとろん、と下がる。
病院でもずっとそうしていたから、パブロフの犬状態なのかも知れない。……そういうわたしも、正直を言うと眠たくなってしまっている。
彼の筋肉は衰えていないから、わたしの知らないところで鍛えてるんだと思う。使い込まれた体は本当に優秀なクッションになってくれる。
わたしが背中の傷で痛くないように、そうしてくれていたのだと思う。暖かいし、好きな人に抱きしめられて、高級な天然低反発クッションに囲まれているような状態だし……気持ちよくて仕方ない。
「せめて、ご飯を食べてから寝ませんか?お薬も飲まないといけませんし」
「……しないんですか?」
「優さんも眠たそうですし、無理にするのも気が引けます」
「龍一さん、わたしが他の人に触られたから嫌なんですか?」
「そんなわけないでしょう。あなたがどんな姿でも愛せます」
「…………」
「証明して見せましょうか」
「うーん…うーん……」
思い悩むわたしの耳にキスして、龍一さんが微笑む。
「もう、ずっと一緒なんですから…いつでもできます。僕は、ずっとあなたを自分の手元に留めおきたくて必死でした。……そう言う欲がないわけじゃありませんし、したいですけど。
優さんが、自分の意思で僕を選んでくれたんだと思うと胸がいっぱいで。どうしたらいいのかわからないんです」
「……わたしもです」
好きな人の傍に居られるだけで、こんなに安心できるのは本当に幸せなことだと思う。すこし、ゆっくりしてみてもいいのかも知れない。
「とりあえず、昼食を食べましょう。それから…後のことは考えましょう」
「はい」
何も考えなくていいなんて、よく考えたらとっても贅沢かも知れない。
今はただこの時間を楽しむのも素敵な事かも。
わたしは龍一さんと手を取り合って、再びリビングに戻ることにした。
━━━━━━
「えっ…社長、早くないですか」
「何がだ。昼食にするんだからどいてくれ」
「えー…あっ、なるほど、昼ごはんが先ですね。俺もご一緒していいですか」
「と言うか何故ここにいるんだ。朝食以外は別行動のはずだろう」
大きなダイニングテーブルに萩原さんがボーッと佇んでいる。ご飯も食べずに、どうしたんだろう。
「公式供給が欲しいっス」
「…………は?」
「公式?供給ってなんですか?」
「優さんと社長のイチャラブが見たいっス。会社のメールにも散々要望メールが届いてますからね!」
「「…………」」
萩原さんはパソコンを仕舞い込み、高そうなカメラを三脚にセットし出した。
……えっ、供給ってそう言うことですか?
「ご飯の様子を…撮影するんですか?」
「そうしてもらえると助かるんですけどー。正直ファンとしては新しい動画が欲しいんですよねー」
「な、なるほど。龍一さん、撮影したほうが良さそうですけど……どうします?」
「まぁいいでしょう。しかし、需要があるのかそれは」
「あります!!!ぜひ!ファン達に優さんが元気にしてる姿を見せてあげてください。
マジでメールボックスが阿鼻叫喚なんっスからね!!!」
「じゃあ、そうしましょう。萩原さんもせっかくだから一緒に食べましょうよ」
「いいんですか!?優さんの手作りでしたよね!?」
「はい、久しぶりなので上手にできたかわかりませんが……いいですよね?」
苦い顔をした龍一さんは渋々頷き、萩原さんはスキップでキッチンに向かう。
さっき浜辺に持って行ったお昼のバスケットをテーブルに乗せて、サンドイッチやフルーツたちをテーブルに並べていく。
龍一さんがテーブルの下にある引き出しから複数のお薬を出してわたしの手のひらに置いてくれた。
萩原さんは、ビールを二つ、オレンジジュースと牛乳を持ってわたしの前に置いてくれる。
「サンドイッチには牛乳がおすすめっス。カルシウムたくさん取らないとダメっスよ!」
「ふふ、ありがとうございます。……ここのビール、美味しそうですね……」
「優さんが飲めないのに僕が飲むわけにいきませんよ。萩原が飲め」
「何でですか?飲んでいいですよ。酔っ払った龍一さんを見てみたいです」
「えっ、見たことないんですか?!」
「ないです。萩原さんは?」
「そう言えばないっスね。会食のときは全然酔わないから、マジで酔うのかすら知らないっス」
「ほほー…」
ビールのグラスを龍一さんの元へとん、と置いてにっこり微笑み、わたしは告げる。
「飲んでください」
「………………」
「あっは!いい!これは素晴らしい。ちなみにこのカメラでモザイク追跡できるようセットしてありますんで、顔バレは心配しなくていいっスからね」
「はーい!」
「…………」
萩原さんがカメラのスイッチを押して、ニヤリと笑む。
(楽しみっスね)
(はい)
こそこそ話して、二人でほくそ笑む。三人で手を合わせて『いただきます』とつぶやいた。
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