【完結】ストーカーに拾われて、心も体も満たされる──『ラブトイ』動画配信で下剋上を果たします!

只深

文字の大きさ
上 下
47 / 79

久しぶりの外出

しおりを挟む

佐々木side

「では参ります。クレープ屋さんにはすぐ着きますので、何を食べたいか考えておいてください」

「お願いしまーす!クレープ屋さんの名前何ですか!」
「クレイジークレープという名前でしたね」

 
「おいっす!あったあった。イソスタにメニューありますよ!優さん、見ます?」
「わぁ、ありがとうございます!」


 社用車に乗り込み、後部座席に優さんと東雲先生が仲良く座っている。
 二人は年頃も近い女性同士、仲良くなれそうだった。

「東雲先生はどんなのが好きなんですか?カラフルなんですね、クレープって……」
「私はキャラメル系とかチョコ系の茶色いのが好きですよ!優さん、名前で呼んでほしいなー、なんて…」 
「はわ……いいんですか?さぎりさん?」

「ヴッ゙…く…撃ち抜かれた…」
「えっ!?な、何を?大丈夫ですか!?」
「マイハートが撃ち抜かれました…優さんが可愛くて…はぁ。優さんはクレープ初ですよね?」
 
「は、はい!見たことはあります!……甘いものが普通だと思ったらしょっぱいのもあるんですね?」
 
「そうそう。サンドイッチみたいなイメージ?かなり軽い軽食見たいな。生地が薄いので二つ行ってもいいと思いますが…」
「そうなんですか?…この、ツナマヨコーンとハムが気になります…生地は甘いんでしょうか?」

「甘いのとしょっぱいのでここのお店は同じ生地だから『甘じょっぱい』感じで食べられますよ。病みつきになりそうですねぇ」
「美味しそう…あぁ、でもそのバターシュガーというのも気になります」
 
「全部の基本がバターシュガーですし確かにいいかも…でもせっかくだから生クリーム乗っかったやつも食べてほしいな…半分こします?」
「半分こ!お友達とするやつですよね!わぁ…わあぁ…憧れてました!」


 
 赤信号待ちで車を止め、バックミラーで覗くと優さんは手を胸の前で組んで、東雲先生のスマホを覗き込んで飛び上がりそうなほどウキウキしている。
 ……可愛い。小さい時と何も変わっていない。自分の記憶そのままの姿に、思わず口の端が上がる。


「……いくつか買って、三人で分けましょうか」
「あっ、それいいですね。佐々木さん甘いのイケる口ですか!」

「えぇ、優さんはまたしばらく外に出られないでしょうから、せっかくですし楽しんでいただきましょう」

「三人で分けっこ!すごい!凄いですね!」

「可愛いことこの上ないんですが、あのー…優さんマジで監禁されてる?」
「え、えーと、監禁というか軟禁というか?でも、あの…不自由なく暮らしてますけど…」
 
「うーん…佐々木さん、ちと説明してほしいんですけど」
「……よろしいですか?優さん」
 
「あ、はい!私じゃうまく説明できないのでお願いします」

「かしこまりました」


 
 しょんぼり眉を下げてしまった優さんから目線を外し、ハンドルを切りつつ優さんの現状を伝える。
 
 
 元々モラハラを受けて、貧乏な生活を強いられていたこと。
その彼氏に捨てられて凍死しかけたこと。 
 うちの社長に絡め取られてはいたものの、それがきっかけで命を落とすことなく今の生活になり、社長の独占欲で軟禁状態であること。
ただし、生活自体は安定しており優さんも嫌がってはいないと言う話をした。

 

「もう一つ、新しい情報を加えておきます。優さんの過去動画は全て消去されたはずが、一部闇サイトを介して販売されています。……先生、お買い求めになられましたね」
「わー、こわーい…なんで知ってるんですかー。
すみません、優さんのことどこかで見たような気がして、個人的に気になって買いました」

 
「そのおかげでサイトを摘発できましたから問題ありませんよ。おそらく発信元は優さんの元彼です。……どこまでも浅ましい人のようですね」
 
「だいぶ癖ありですよね。刑事事件に発展しそうで怖いですわ。軟禁は仕方ないかも…こんな可愛いホワホワした優さんが外を歩いていたこと自体に恐怖を覚えます。それに、元カレ…多分諦めてないですよね」
 
「先生のおっしゃる通り、優さんの行方に懸賞金をかけているサイトを見つけています。すでにこちらも動いてはいますが…優さんは外に出ないほうが良さそうですね」

「……は、はい……」
「なるほど」

 
 東雲先生は納得してくださったようだ。彼女は「怖い」と口にしながら怯えた様子を表すが、その実自分の気になることは解明されないと黙るタイプではないらしい。
 優さんが好ましく、身のうちに入れてもいい、仲良くしたいと判断し、もし害がなされているなら何かしらの動きをしそうだった。

 ――なかなか、作家先生は手強そうですね。この存在が吉と出るか、凶と出るかは難しいところだ。


 
「そういう事情なら納得したんで、お仕事で応援します。社長がいなくて寂しい時は、私がお相手しますから。佐々木さん!私を介して色々優さんに協力してくださいよ!」
「えぇ、もちろんです。直は社長に殺されかねませんので…よろしくお願いします」
 
「社長やばいなー…でも、優さんのこと好きなら今のところ安全かな?
 何かあったらなんでも言ってくださいね、優さん!」
 
「ありがとうございます…なんだか、嬉しいです。お友達が居てくれると、こんなに心が穏やかになるんですね」


  
「かわいい…うぅ…尊い…」
「さぎりさん…なんで泣くんですか…」


 東雲先生は優さんに手を握られて仰け反り、額に手を当てて泣き出している。
 慌てた様子でハンカチを持ち、それを拭う優さん……。


 三上財閥の我儘お嬢様には感謝するしかないな……会長の手助けがあったとはいえ、社長から引き離すには一番わかりやすい口実だ。


 優さんの風に揺れる長い髪を眺め、ため息をひとつ落としてクレープ屋の駐車場に乗り入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...