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トラウマからの呼び出し
しおりを挟む優side
「それでは、これで契約締結となります。東雲先生、今後とも何卒宜しくお願い致します」
「こっ、こちらこそ!!あの、本当にプレイ中の動画見せてくれるんです?」
「じゃないと『ズレ』が出るっすから。画像、動画の保存禁止、流出禁止ッスよ。一応男優がうちの社長なんで」
「そうですね、もし流出したら……」
「しません!!!しませんから!!!怖い!!!」
萩原さんと佐々木さんがニコニコしてるんだけど、その笑顔の中に怖いものを混ぜている。
……圧力をかけないであげてほしい…。
「アッ!ユ、ユ、ユウさんとのケー番交換、したいですけど。レインの交換でもいいんですけど」
「はっ!!」
「…………」
東雲先生とメッセージ…!!したい!お話ししたい!!!!!!
眉根を寄せた龍一さんの袖を掴み、無言で見つめる。
したいです。女の子とお話し凄くすごく、したいです。わかりますよね?通じますよね??
「……………………」
「……………………」
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「わかりました。東雲先生だけですよ」
「きゃあっ!やったぁ!!先生、ありがとうございます!やった!やったあ!」
「……かわい…おほん。東雲先生、ユウさんの個人データこそ流出されたら殺……いえ、社会的制裁は免れませんよ」
「いや殺すって言おうとしてましたよね!?こわ……まぁいいです。あの、私基本的に夜型人間なのでいつでもメッセージください!電話でもいいです!」
「わあぁ…ありがとうございます、よろしくお願いします!!」
何故か先生に携帯を取り上げられて、東雲先生のアカウントが追加された。
「優さん。僕といる時は携帯禁止ですから」
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「……………浮気しませんね?」
「し、しません!しませんから!」
「絵本のお話もしてくれますよね??」
「します!します!!!」
「浮気は?」
「しますん!!うっ……」
「…………セーフにします」
「「「セーフなんだ……」」」
ようやくスマホを返してもらえて、先生のアカウントが龍一さんの下に追加された。……かわいい、アイコンが絵本の主人公になってる!
「優さん…文字化けしてるけどなんで……?どう言うアカウントなんですか?」
「……秘密です」
「怖い…」
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「社長」
「なんだ」
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「私は帰るぞ」
「三上物産の……」
「わかった」
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三上物産…て、龍一さんの許嫁さんがいる財閥の……。
「優さん」
「……」
「優さん。すみませんが、帰りは佐々木に送らせます。先に帰っていてくれますか?早めに終わらせますから」
「……あの、大丈夫ですか?」
襲われかけた、と言っていたことを思い出して私は思わず問いかける。
あの時の龍一さんの顔はぼんやりとしか思い出せないけど、落ち込んでいた気がするから。
「……大丈夫ですよ。監視カメラ、音声録音、ボディーガード付きです。」
「じゃあ大丈夫かな…あの、ご飯作って、待ってますからね」
「……はい」
龍一さんは噛み締める様に微笑み、私の頬にキスをして出て行く。
……みんなの前なのに、自然に受けてしまった。だんだん顔が熱くなってきて、思わず両手で覆った。
「かわい…」
「東雲先生、ユウさんまじ可愛いっすよね?!」
「二人とも、命が惜しければその辺で。」
「命って…こわっ」
「先生そればっかスね?」
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「あ、よろしくお願いします」
「……私は別に…電車で帰れるんですけど」
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「く、クレープ!」
「何それ…可愛い反応…てか久しぶりの外出??」
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「……マジです?」
「はい。苦学生をしてたのでお買い物はいつも半額セールでしてましたし、屋台とかそういうの憧れてました」
「行きましょう。佐々木殿、今すぐに参りましょう」
「はい」
「気をつけてください…いろんな意味でっすよ。」
「萩原に言われるまでもありませんよ。行きましょう」
「「はい!」」
勢いよく席を立ち、もふもふのコートを抱える。……あっ。
「あの、私…靴がありません。」
「優さん、監禁されてるんじゃないんですかそれ?大丈夫なのかな……」
「いや、あの、あはは……」
「……では私が」
「えっ?」
微笑みを浮かべた佐々木さんは、コートで包んで私を抱き上げる。
………………みなさん力持ちですか?
「すみません、ご迷惑をおかけして」
「いえ。……役得ですね」
「え?」
「ふふ。さ、先生いきましょうか」
「ハ、ハーイ」
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「マジで色々気をつけてくださいッス……」
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