29 / 79
おもちゃ宅急便
しおりを挟む「……あの」
「よいしょ…よいしょ…」
「せ、先生?私手伝いますよ」
「ダメです。あなたには箸より重いものを持たせません。じっとしててください」
「で、でも…こんなにたくさん…」
社内会議が強制終了して、その日のお昼。ご飯を食べていたら宅急便が届きました。……ものすごい量の。
「これ…まさか全部おもちゃですか」
「いや、僕が注文したものもあります」
「おもちゃを追加したんですか?」
「いいえ。あなたのお洋服です」
「……お洋服!」
ダンボールを次々に置いて、リビングがすっかり段ボールまみれになった頃、ようやく先生が額の汗を拭った。
コップに水を注いで手渡すと、笑顔と共にキスが落ちてくる。
「ん、せん…むっ」
「優さんが僕にお水を下さるなんて…」
「む…んんっ!ちょ、ちょっと。まだダメです。…撮影、するでしょう?」
「…………ハイ」
Tシャツの脇から入ってきた手を避けて、無理やり体を引き剥がす。素直に離してくれた先生は水の入ったグラスを一気に煽って、ダンボールを開けはじめた。
「優さんのお洋服はこちらです。部屋着を増やしました」
「ありがとうございます!えっちな服しかなくて困ってました!」
「……お外に出ないでくださいね」
「わかってますよ…」
ダンボールを三つ開けた先生は不満げな顔をしてる。
でも、これで普通にお着替えできる!!
ダンボールの中を眺めていると「出していいですよ」と言われて中を探った。
ダボダボTシャツ…なんでこんなにたくさん?えっ、これだけ!?
白いTシャツと黒いTシャツ…全部先生のサイズなのですが。昨日着ていたものと全く同じ服が山のように入っている。
「それなら外に出られませんよね」
「あの、下は?」
「ワンピースみたいに着てください」
「ふぇ…」
い、いやきっと二つ目の箱にはまともなお洋服が!
二つ目のダンボールから出てきたのはえっちな衣装…。ボンテージ、水着、セーラー服……。
三つ目!三つ目です!!そこにきっと!!
「……手錠、拘束具、よくわかんない複雑な形のベルトが多いですけど…」
「優さんに似合いますよ!」
「似合いたくありません。…可愛いお洋服が欲しかったです」
「………………」
「ダボダボTシャツも良いけど、普通のお洋服が欲しかった」
「………………」
「お外に出てないのに。良い子にしてるのに。監禁されてても文句言わないのに。私の好きなお洋服知ってるって言ってたのに。嘘ですか」
「くっ…」
ぶつぶつ呟くと、むぅ、と答えた先生が渋々小さめな箱を取り出した。
テーブルの上でそれを開けて、手招きされる。
「……わ!わぁぁ!!」
「僕がいる時だけですよ」
「はい!はい!!かわいい!可愛いっ!きゃああ!」
ぷくっと頬を膨らませた先生がダンボールをたたみ始めた。一際大きいダンボールに山と積まれたおもちゃが…そんなに届いたんですか?
そ、それよりも!!
「可愛いワンピース!パーカーのやつ!あっ!ショートパンツも!ふわふわスカートにシンプルブラウス!はわわ…はわわわ!」
グレーやくすみピンクの可愛いお洋服たち。先生、私の好みを本当に知ってたんだ!
「あっ…これ…うそ…」
奥から現れた、カチューシャ。
パールがついていて、大人かわいい雰囲気のそれは…私が拾われた日につけていたものだ。
「……あの日の服も、ちゃんと取ってあります。目一杯可愛くなりたくて選んだ服を着たあなたを見て、褒めそやしたいので。
カチューシャは慌てて運んでしまったので途中でなくしたんです。同じものを探してようやく見つけました」
「せん…せ」
後ろから抱きしめてくる先生は、少し小さな声でそう告げる。
あの日一人ぼっちだった私の思い出のために…これを探してくれたの?
「あなたの悲しい記憶は僕が全部塗り替えます。……僕が出遅れてしまった贖罪になるかわかりませんが。」
「そんなの…いいのに。わたし…わたし、なんて言って良いかわかんないです」
胸の奥底からあの日の寂しい気持ちが、悲しい気持ちが湧き出して、抱きしめてくれる彼の言葉がそれを上書きしていく。
あたたかくて、優しくて、甘くて…私のお腹の前で組まれてぎゅうっと握り締められたその手は、力を込められすぎて白くなっている。
その手を撫でて、両手で自分の顔に引き寄せてわたしは頬をすり寄せる。
だいすき……私の事をちゃんとみて、ちゃんと大切にしてくれる。
あの日の事も、今までのトラウマたちも、先生が全部塗り替えてくれる。
私の事を女神だなんて言っていたけど、私にとってはあなたが神様だった。雪の中で死にたがっていた私は、先生が全部掬い上げてくれたから。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「…かわいい声になってますよ。元々かわいいけれど…。」
揺れる心を察知した先生は、首筋に唇で触れる。
おへそのあたりから服の中に侵入してくる手を受け入れて、目を閉じて…わたしはあたたかい涙をこぼした。
「先生、今日はわたし…なんでもします。お洋服も、やりたい事も、全部」
「本当ですか?ハードなプレイだったらどうするんです?」
「いいですよ。…いまから、しますか?」
腕の中で向きを変えて、彼と向き合い首に手を回す。柔らかい唇が触れて、その熱が私にも感染した。
「楽しみですねぇ…」
先生の笑顔の中に潜んだギラギラした欲望。それは私の中の本能を呼び覚ます気がした。
2
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる