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僕のおもちゃになって下さい

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 朝ごはんをしっかり食べて、空になったお皿たちをシンクに重ねる。キッチンが大きい…洗い物をしたいけど、食洗機があるという事はこれを使うってことですよね…?使い方がわからない…。

 スマホはネットワークが制限されているらしく、謎のカメラマークのアプリとメッセージアプリしか使えないし…どうしよう。


 
「今はお仕事してるよね…?」
 私がウロウロしてるからメッセージが来そうなモノだけど、スマホはうんともすんとも言わない。

 ふとシンクの横に白い段ボールが置いてあることに気づいた。白い封筒には先生の文字で「契約書」と書かれている。
 
 …これ、私宛だよね??刃物は全部隠すくらい用意周到なので、わざわざこんなふうに置き忘れることもないだろう。
 抱えるほどの大きさの段ボールを持ち上げ、ダイニングテーブルに乗せる。
封筒を手にすると段ボールの中身がチラッと見えた。

「何か、肌色の物体が入ってる…」

 怖いその4。ま、まずは封筒の中からみましょう!!そうしましょう!!!

 

 
 きっちり封をされた分厚い封筒から紙を取り出す。綺麗に三つ折りされた用紙が複数枚出て来た。
 付箋が沢山貼り付けられており、記入をしてほしいという感じかな?

「…専属雇用契約書…?」


 大仰な感じの文字が並び、意外に真面目な感じの文章が並んでいる。乙とか甲とか…そう言う。
 見た感じは雇用契約を先生と私で結ぶ感じ。一見まともそうに見えるけど、契約内容には恐ろしい言葉が並んでいる。

 
 1 雇用主は期限の限りなく被雇用者の生活を保証する《贅沢三昧させます》
 2 被雇用者は雇用主の許しなく自宅から出てはならない《出たら一本ずつやります》
 3 被雇用者は指令を拒否する場合、「本当に嫌です」と伝える事で仕事内容の変更を可とする《セーフワードです》
 4 前職務への復職、副職は禁止《戻れないと思いますけど》
 5 被雇用者は自分を大切にする事《あなたは僕の大切な人なので。》


「……この、いちいちツッコミが入ってるのはなんなの?ポストイットのカラーで区別してまで書く事ですか??」

 雇用期間は期限なし、褒賞は望むままとあるがここにもツッコミが入ってる。
《外に出たい、僕から離れたいと言われたら四本行きます》

「なんの本数ですか!?もしかして手足のことですか!?怖い!!!!!」



 仕事内容については「おもちゃ」とある。昨日のようにえっちなことでご奉仕する人間のおもちゃってこと?
《あなたが本当にいいと思えるまでは仕事として僕の傍にいてください。言葉は悪いですが、暮らしの保証をする代わりにあなたは体を差し出していただきます。
 僕の、おもちゃになってください》

「なんと言うパワーワード…」


 一緒に入っていた別書類には前の職場を退職した旨の証明書も入っている。元々住んでいたアパートからの退去届に…住所が塗りつぶされた住民票まで。

 私を拾ったの、昨日ですよね???いつこんなの出したんですか?色々とおかしい。



 それらの書類を全部開いてテーブルに並べ、もう一度眺めてみる。
 
 …なんか、変なの。明らかに私は監禁されている。携帯もないし、お財布もないし、この書類が本物ならお仕事も住まいも失っている。
 彼氏も元彼になったと言えるだろう。あの日私との待ち合わせに来ず、あの人は新しい出会いを求めて合コンに出ていた。
 ここまで用意周到な先生が元彼を放っておくはずがないし。


 あの後、どう言い訳をするつもりだったのか…しないつもりだったのかも、もうわからない。
 自分自身が死んだと思っていたからか、何もかもがなくなってしまったのにあまり心が動かなかった。


 それなのに…たった一つ、項目5の言葉がやけに目に染みる。
「自分を大切にすること。先生は、私を大切だと思っている…」


 おかしな環境下では人間って判断力がなくなるらしい。私は封筒に添えられたペンを手に取り、契約書にサインした。

 

 ━━━━━━


 ダンボールの箱の真ん中に紙が貼られて《初仕事です。これを使って録画して、僕にメッセージで動画を送ってください》


「……………肌色だなぁ」
 
 小さく呟き、その紙を剥がす。
 そろっと蓋を開けると予想通りのものがたくさん詰め込まれていた。
全て未開封である。


 そして、私はほとんどの物を正しく使う方法を知っている。
 先生がストーカーで、私が何をしていたか知っているならそうなるとは思ってた。昨日私の声を聞いて、「何か違う」と言っていたのも納得できる。


「まずはお風呂ですかねぇ…」

 段ボールを抱えてリビングを出る。バスルームの札を見つけて迷わずそのドアを開けた。
 



 
 
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