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Ⅰ.
Lv1. 1日目
しおりを挟むpipipipi ガチャ
目覚まし時計の音で目が覚める。
「ふぁ~… 今日もまた憂鬱な1日が始まる…か。」
毎日同じ支度をして同じ時間に家を出る。
隣にはいつもお兄ちゃん。
お父さんとお母さんは小さい時に事故で死んじゃった。
思い返してみると、お兄ちゃんが変わり始めたのもその頃だった。
どうしてそうなっちゃったのかはわからない。
教えてもくれなかった。
「悠亞? 何を考えているんだい? 僕の事以外を考えるなんて許さないよ? もし約束を破ったら…わかってるね…?」
「っ… ごめんなさい、お兄ちゃん。」
「わかってるならいいんだよ。 僕の大切な大切な悠亞はそんな子じゃないもんね。」
毎日毎日同じような会話をしながら、早く学校に着いてほしいと願う悠亞。
(前のお兄ちゃんにはもぅ戻らないの…?
ねぇ、お兄ちゃん… 私、昔の優しかったお兄ちゃんの方が好きだよ…)
そう思いながら兄──悠陽の事を見る。
「そんなに僕のお仕置き欲しかったの~?
悠亞はワルイコだね?フフッ」
悠亞の望みは叶えないと…ね?
私がお兄ちゃんをチラッと見ただけでお兄ちゃんは私がお仕置きして欲しいと勘違いする。
(また今日もあれされるのかな…)
こうやって毎日のように何かと理由をつけては私にお仕置きをしてくるお兄ちゃん。
私の手を痕が残るくらい強く掴んで細くて薄暗い路地へと足を進める。
「お兄ちゃん…学校遅れちゃうよ…?」
もちろんお仕置きなんてされたくなくて、理由をつけて逃れようとする。
が、こうなったお兄ちゃんには通用しない。
「そんな事気にする人なんてあの学校には誰もいないから大丈夫だよ。」
第一僕は生徒会長なんだからこのぐらい融通が利くんだ。
なんて生徒会長の権利を使おうとするお兄ちゃん。
こんなお兄ちゃんだけれど、私たちが通っている高校の生徒会長やってるの。
(皆はお兄ちゃんが病んでるとは思いもしないだろうなぁ…)
お兄ちゃんは私の前以外、つまり学校や外出先では優しいお兄ちゃんになる。
私だけしかいない時だけ。こうして本当のお兄ちゃんが出てくる。
「優しいお兄ちゃんの方が好きなのに…」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「さて、今日は誰の相手をするのかなぁ~?」
連れてこられたのは少し古びた倉庫。
お兄ちゃんのお友達がよく集まっている。
私はお兄ちゃんからお仕置きと言われて、お友達の誰かの玩具(おもちゃ)として扱われる。
(今日は誰の玩具になるんだろう…)
初めてを奪われたのは、私が中学に上がった時だった。
その頃は何度も何度もお兄ちゃんの玩具にされた。
その頃からだっけ。感情を出さなくなったのは。
初めて玩具にされた日はまだ、感情があった。
痛くて苦しくて、何よりお兄ちゃんが怖かったから。
やめてと言っても止めてくれなかったお兄ちゃんを見て私は────拒むのを諦めた。
「待ってたぜぇ? 悠陽ぃ~」
「ちょっと遅くなったかな? 今日は誰が悠亞の相手してくれるんだい?」
ハッと考えていた事を中断する。
(もう着いたんだ…)
「そうそう、今日は新入りがいるんだよ。なぁ、お前ら。」
「そーだったそーだった! ほら、名前言えって。」
「 …玲。」
れ、い…?
小さい頃の光景がフラッシュバックする。
っ…
あと少しで思い出せそうな光景に、思わず頭を押さえる。
「悠亞? 大丈夫かい悠亞?! すまないが、今日は無しにしてくれ。 悠亞の調子が悪いみたいだ。」
「あららららら。悠陽さん、ヤりすぎなんじゃないっすかぁ~?ケラケラ」
お兄ちゃんはあれ以来私を玩具にする事は無くなった。
友達の玩具として扱われている私をただ見ているだけ。
何も言わずにただ、そこに立って見ているだけ。
(助けを求めても、笑って見ている。私が玩具にされている時のお兄ちゃんは──怖い。)
あの時のお兄ちゃんの顔を思い出して、反射的にお兄ちゃんの手を振り払う。
「ぁ… ごめ…なさ…お兄ちゃ…」
ハッとしてお兄ちゃんを見る。
「ゆう…あ? なぜ今僕の手を払ったんだい?
これは家に帰ってちゃんと教えないとダメみたいだね?」
あーあ。悠亞ちゃんやっちった。俺らにはどーも出来ねぇぜ?
なんて友達が言ってるのを聞きながら、お兄ちゃんに手を引かれて来た道を戻っていく。
家で行われるであろう行為は、
ここにいる奴らの玩具にされるよりも酷いものだと知っている数人は、去っていく2人を見ていた。
「あーあ。悠亞ちゃんこれで何回目よ?」
「さぁ? 数え切れねぇ程だろうよ。
最近はヤってねぇつってるけどなぁ…」
「可愛そうだよなぁ… 悠亞ちゃん。 俺らが言える事じゃねぇけどな笑。」
「玲も気を付けろよー?なんつってな。ギャハハハ」
「そんなに悠陽さんって酷い事してるんすか…」
彼────玲 以外の奴らは。
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