マイホーム戦国

石崎楢

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第127話:明かされる真実

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鞍馬山・・・思えば五右衛門の呪いを解きに訪れた時以来だ。
あの時戦った黒炎が本能寺の際には助けてくれた。
それにしても黒漆剣・・・。
私はこの剣の持ち主となってから、恐ろしい程の早さで山田家は勢力を伸ばしている。
全てはこの剣のおかげだろうと思うのだ。

私は鞍馬山の山門の前に到着した。

「お待ちしておりました。山田大輔殿。」
出迎えてくれたのは煉静。

「久しぶりですね。煉静さん。」
「さあ・・・法眼様がお待ちです。」

私は煉静に連れられて鞍馬山の中へと入っていった。


その頃、多聞山城。

「やはり外せないのは石川殿、前田殿、島様、疋田様、滝谷様でしょうか・・・。」
重治が考え込んでいた。

「ちなみに俺たちと同等な者として柳生宗厳殿がおる。あとは一人だが・・・。」
五右衛門の視線は慎之介と英圭に注がれた。

「一馬や義成、純忠に元規・・・それに箸尾様もおるし、半兵衛殿も・・・。」
慎之介は重治に声をかける。

「私は腕には覚えはありますが、身体が皆様程強くないのです。」
確かに重治の顔色はいつも悪い。そのことで五右衛門たちは納得した。

「まあ俺たちも強いが、危険なのは武田、上杉、北条、毛利、大友か・・・。」
「徳川も危険だぜ、あの本田平八郎や榊原康政と同等のがいればだが・・・。」
五右衛門と慶次は早くも盛り上がっていた。

「ここに疋田様、明智様が書き記した諸国の資料がございます。」
重治は大量の資料を出してきた。

「どれどれ・・・」
五右衛門がおもむろに広げまくる。

「なんと乱雑な・・・。」
「雑にしたからとて減るものでもあるまい。」

そして慎之介が読み上げていく。

「奥州は出羽国の最上義光、その武勇は奥州随一だとよ。名刀鬼切丸を使い、更には鉄棒の達人とも聞く。」

「高屋城の戦いで義輝様に加勢された御方か・・・是非、手合わせしたいものだな。」
英圭は思わずつぶやく。

「ただ出羽国内でも幾多の勢力がひしめき合い参加は不可能でしょうな。」
重治が首を横に振った。

「越後国の上杉輝虎。その配下には恐るべき猛者共が控えていると言われています。」

「・・・。」
さすがに五右衛門たちも静まり返る。

「まずは勇名高いのが柿崎景家。既に年を召されているが勇猛さは若き頃と変わらずということです。」

「聞いたことがあるぞ。川中島で武田を追い詰めた男だな。」
慶次は嬉しそうな顔だ。
とにかく強き者の名を聞くたびに心躍るかのようだった。

「そして上杉家で最強と謳われているのが小島弥太郎。鬼小島と呼ばれたその武勇は甲斐の武田家でも称賛されるほどとのことです。」

慎之介は話を続ける。

「後は鬼神と呼ばれる猛将本庄繁長という男がおりますが、どうやら武田に寝返ったとのこと。更には我らも面識がある北条景広殿、若き天才登坂藤右衛門、新津勝資などがおるようです。多すぎて省略します。」

「上杉と戦うのが楽しみだぜ。」
五右衛門は笑みを浮かべていた。

「続いては北条氏政。東の覇者ともいえる北条家も恐るべき力を秘めているようです。」
慎之介は五右衛門を見る。

「風魔だろ。」
「はい。」
「上杉と戦うのは楽しみだが、北条と戦う際は感情が入りまくりそうだぜ。」

そんな五右衛門に呆れ顔の重治。

「北条家の猛将といえば北条綱成、笠原能登守、多目周防守などがおります。ただそれよりも風魔小太郎を特記事項として疋田様や明智殿は記しております。」
「まあ、やり方はともかくこの俺にあそこまでの手傷を負わせたのは風魔の連中のみ。」

怒り心頭の五右衛門を横目に慎之介は更に話を続ける。

「甲斐国武田はと言いますと・・・」


その頃、鞍馬山。

「黒漆剣を自在に使いこなせるようになってきているようじゃな。」
鬼一法眼は満足そうに私に声をかけてくる。

「そうですね・・・今じゃこんな感じです・・・河童さんカモン!!」
「河童でやんす。」

河童が姿を現した。山積みのきゅうりを入れた籠を手にしている。
そして私の隣に腰を下ろすときゅうりを丸かじりで食べ始めた。

「なるほどじゃな。魑魅魍魎とも友好関係を築けるとはさすが山田大輔殿じゃ。」
「ところで法眼殿。何故、私が黒漆剣を使いこなせるのでしょうか?」
「・・・」

私の質問に法眼は黙り込む。

「有史の上で黒漆剣を使いこなせたのは坂上田村麻呂なる人物だと聞いております。」

「ふう・・・」
一呼吸置くと法眼は静かに口を開いた。

「山田大輔殿。そなたがこの時代の者ではないことをワシは知っておる。」
「なんですと!!」

集っていた煉静たちは驚きの声を上げる。

「この御方は遠い先の時代より来られた坂上田村麻呂様じゃ。」
法眼の更なる言葉。

「えッ・・・マジ?」
私は思わず軽口で返してしまった。

「そうでやんすよ。大輔さんは田村麻呂様でやんすよ。」
河童は満面の笑みで法眼の言葉に同調する。

「意味がわかりません・・・私は山田大輔ですよ。」
「そうですぞ。大輔殿は大輔殿。しかしその中には坂上田村麻呂様が在るということじゃ。」
「それはともかく何故、私がこの時代に呼ばれたのですか? そこには何かしらの必然があるということでしょう。」

私は法眼の目をじっと見据えた。

大輔殿の雰囲気が変わりおったわ・・・

「ワシは未来を読むことができる・・・まあ所詮は占いには違いないものじゃがな。」

法眼は静かな口調で語り始めた。

「まずは1567年に南都にて三好と松永が争い、東大寺が焼かれ廬舎那仏を焼失するという恐ろしい占いが出ておった。しかし、大輔殿はそれを未然に防いだのじゃ。」

「なんと・・・東大寺を・・・さすが大輔様じゃ。」
煉静たちは感嘆する。

「それどころか尾張の織田信長の上洛を阻止したのも大きいのじゃよ。本来は昨年で将軍義栄が亡くなり、次期将軍として足利義秋が擁立されるはずじゃった。その義秋擁立の後ろ盾が信長じゃ。」

法眼は更に話を続けていく。

「そして数年後に信長が比叡山に火を放ち、僧や女・子供問わずに皆殺しにするという恐ろしい占いもあったが、大輔殿が都に入ったことで占いが変わったのじゃ・・・比叡山焼き討ちはなくなったということじゃ。」

「では・・・これからの私はどうなるのですか?」

私からすればここまで凄い占いならば聞きたくなるものだ。

「それがこの先は全く占えんのじゃよ・・・。」
法眼は目を閉じると首を横に振った。

「だが、この時代に大輔殿が来られたのはそれだけではないじゃろうて。時代を知る大輔殿の御子と力を合わせてこの日ノ本を守ってもらいたい。それがワシやこの日ノ本に根付くモノたちからの願いじゃ。」


私は鞍馬山を後にした。
空からは白い雪が舞い落ち始めていた。
真実を知った・・・そしてもう現代には帰れないということもわかった。

要は私は坂上田村麻呂が現代に転生した存在であり、更に戦国時代に転移して神仏を守るために戦わなければいけないということなのだろう。

「大輔さん、らしくないでやんすよ。悩んだときはこれでやんす。」

河童が私を気遣ってくれている。いいヤツだ・・・ただ、きゅうりはいらないんだけど。

そう思いながらも私はきゅうりをかじるのだった。


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