マイホーム戦国

石崎楢

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第47話:輝け!!黒漆剣

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かつて鞍馬山に一人の天才がいた。
その男の名は黒炎。
驚くべき法力で都の巣食う魑魅魍魎共を退治していた。
しかし黒炎はある過ちを犯し鞍馬山を追放された。

「間違いなく黒炎だ。我ら全員でも食い止められるかはわからない。」
煉静は配下の山伏たちに言う。
「あやつの狙いは黒漆剣じゃろうて・・・。」
そこに一人の老僧がやってきた。
「法眼様!?」
煉静と山伏たちは驚く。

「御客人・・・ワシは鬼一法眼・・・正式には十代目の鬼一法眼じゃが。」
その老僧は優しい表情で私に声をかけてきた。
「私は宇陀の国人の山田大輔です。」
私はまたも思わず名刺を差し出してしまった。
この習性は治らないだろうと作った戦国時代用の名刺だから通じるだろう。
一応、今の肩書は宇陀国人、宇陀川城・貝那木山城城主山田大輔だ。

「法眼様は普段は人にお姿を見せることのない御方です。」
「まあ良いではないか。鞍馬に強い悪意が押し寄せてきておる。」
煉静をなだめながら法眼は私を見つめた。

どうしたんでしょうか・・・名刺がマズかった?

「黒炎はあの時と同じように黒漆剣を手に入れようとしておるのじゃろ。」
「しかしあの男は使いこなせずに・・・」
「逆に数多の魑魅魍魎を常世に解き放ってしまったということじゃ。」

よくわかりません・・・それにくろうるしのつるぎって何?

「ワシがそなたらの武具に力を与えようぞ。妖共と戦えるようにの。」
法眼に言われるがままに真紅たちは全てのクナイと刀を差しだした。
五右衛門の刀も一応出しておいた。
私はとりあえず護身用に持ってきた7番アイアンを法眼に渡した。

「・・・ハアァァァッ・・・カアァァァッ!!」

法眼の気合と共に一陣の風が堂内に吹きつけた。

おお・・・7番アイアンがキラキラしている。
少し感動していると金堂の外が慌ただしくなってきた。

「参るぞ!!」
煉静と山伏たちは外に飛び出していった。
「いくわよ・・・」「はいよ。」「やりましょう。」
真紅、銀八、千之助も後に続く。
「山田殿・・・頼みますぞ。」

法眼さんに言われたら・・・行くしかありません・・・

「大丈夫じゃ。妖に憑りつかれたらワシに任せればよい。」

えっ・・・憑りつかれるの前提?

私は金堂から境内に出た。
そこには驚くべき光景が広がっていた。

黒装束の男と必死に戦う煉静と山伏たち。

そして魑魅魍魎の群れがこちらに押し寄せてくるのを真紅達が必死に食い止めようとしていた。

「のっぺらぼう~」
「イヤ~!!」
真紅はのっぺらぼうに怯えて逃げ惑う。

「化け猫~」
「おいおいマジかよ~ってギャー!?」
銀八は化け猫に捕まって舐められまくっている。

「赤鬼~・・・ぶべ!?」
「青鬼~・・・ばべ!?」
「私は信じない・・・妖怪なんて信じないぞォォォ!!」
千之助は一人で赤鬼・青鬼を倒すと魑魅魍魎の群れに飛び込んでいった。
しかし・・・実力不足のようだ・・・
「ぎゃああああッス!!」

千之助・・・メタメタにされてますやん・・・。

戦況を見守る私にも遂に妖の魔の手が・・・

「おい・・・●太郎!!」
小さい目玉に体と手足がついた妖怪が現れた。
私の7番アイアンが火を噴く。
「ギャアァァァァ!!」
涙を流しながらその目玉の妖怪は飛ばされて池に落ちた。

「父さんに何をするんだァ!!」
そこに一人の少年の妖怪が走り込んでくる。
片目に前髪がかかっておりよく見ると某ガンバ大阪の●ットに顔が似ている。
「喰らえ!!」
その妖怪は下駄を蹴り飛ばしてきた。

「下駄や靴を人に向かって蹴り飛ばしたらダメだろうがァァァ!!」
私は思わず7番アイアンで打ち返した。

「ぼべッ!?」
打ち返した下駄が妖怪の顔面に直撃!!
そのままその妖怪は下駄ごと森の中まで吹っ飛んでいた。

すると次は猫のシルエットの妖怪がやってくる。
多分・・・猫の娘のアレだよ・・・このパターンは・・・

「ジーバ●ャン♪」

あれ・・・僕の友達呼んじゃった?

「百裂・・・」
「可愛いけどォォォォ!!」
「ニャ~!?」
私の7番アイアンで国民的人気の猫の妖怪そっくりの妖怪は吹っ飛んでいった。

更に次は小さい可愛らしいつぶらな瞳の黄色い生き物がやってきた。

「ピカ―ッピッ♪」

それ妖怪じゃねえから・・・

「ピガー!!(怒)」
「ぎゃあああっス!?」
私は何で電撃を食らわないといけないのでしょうか・・・
ラブリーチャーミーなわけでもありませんし、白い明日も要りませんから・・・

「ピガァァァッス!!」
その黄色い可愛らしい世界的人気キャラによく似た生き物も7番アイアンの餌食になった。

「ぼくドラ●も・・・ギャアアアアア!!」
青い猫型ロボットも吹っ飛ばした。
「やめろ~バイ●ンマン・・・ってギャアアア!?」
アンパンが顔になったマントの男もやっつけた。

それ・・・妖怪じゃねえから・・・絶対に妖怪じゃねえからさ・・・

気がつけば私の前には妖怪たちと人気キャラの紛い物たちが山のように倒れていた。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
私は息が切れていた・・・久しぶりだ・・・ここまで運動したのは。
いや・・・運動じゃない・・・妖怪退治か・・・。

「殿・・・実はこんなに強かったのですね・・・。」
千之助が私を尊敬の眼差しで見つめてくる。
「凄いです。なんで五右衛門が殿をあれだけ慕うのかよくわかりましたぞ。」
銀八・・・もっと褒めろ。
「なんか・・・抱かれてもいいわ・・・♥」
真紅ちゃん・・・私はあなたぐらいの年頃に弱いのよ♪

「山田殿・・・油断は禁物ですぞ。」
気がつくと法眼が私の隣に立っていた。
「!?」
金堂下では煉静や山伏たちが全員倒れていた。

「法眼様・・・お久しゅうございます。」
黒装束の男は法眼を一別すると私の前に立った。

「お初にお目にかかります。私の名は黒炎。」
その男、黒炎が名乗った瞬間
「動かないで・・・」「殿に近寄るな!!」「殿には指一本触れさせん。」
真紅達が黒炎を囲んでクナイを突きつけていた。

「忍びか・・・」
黒炎の姿が消えた。
「どこに・・・!?」
「ここだ・・・。」
三人の前から姿を消した黒炎は法眼の後ろに立っていた。

「黒漆剣を頂きたい。」
「断ると言えばこの場の全ての者を殺すのであろうな?」
「・・・♪」
黒炎は笑みを浮かべる。
「待っておれ・・・。」
法眼は姿を消した。

「おのれ!!」
千之助が黒炎に斬りかかるもまたも姿が消える。
真紅のクナイも空を斬るのみ。
銀八は怯えて立ちすくんでいる。

その気になればこの場の者を全て・・・命を掌握しているかのようね・・・
真紅は私の前へ庇うように立った。

「安心しろ・・・今日はお前らの命には興味はない。」
黒炎は笑みを浮かべたままその場に座り込み瞑想を始めた。

そして法眼が戻って来た。
手には鞘に収められた一振りの太刀。

「黒炎よ。この剣を使いこなせた者はかつての征夷大将軍坂上田村麻呂のみじゃ。」
「・・・。」
「かつておぬしがこの剣を奪おうとしたときのことを覚えておるじゃろ。」
「・・・。」
「京の都に数多の妖が解き放たれ、おぬしは魑魅魍魎に命を吸われ続けておる。」
法眼が言うも
「フッ・・・おかげで私は妖を操る術を身につけた・・・この魑魅魍魎は全て私の支配下にある。」
黒炎は法眼に近づいていく。
「この黒漆剣でおぬしは何を望む・・・手にすればまた京の都に・・・」
「・・・。」
その一言で黒炎は立ち止まった。
そしてニタリと笑顔を見せると言い放った。
「黒漆剣をご所望される方がいる・・・あの御方なら使いこなせる。」

あの御方・・・あの御方か・・・悪い予感がする。

私は咄嗟に黒漆剣を法眼から奪い取った。
何故、奪ったかはわからない。
そのとき勝手に黒漆剣は宙に浮くと鞘から刀身を露わにする。

オカルトォォォ!!

私は立ちすくんで動けない。
法眼と黒炎は驚愕している。

すると黒漆剣は私の右手に・・・右手が勝手に動いてしまう。
そして私はまるで操られるかのように黒漆剣を両手で握りしめていた。

突風が吹き荒れ、竜巻が巻き起こる。
私は大きく黒漆剣を振りかざした。

「滅却ゥゥゥゥ!!」

私の一振りが巻き起こした巨大な竜巻に魑魅魍魎の群れは巻き込まれ天高く舞い上がる。
そして大きな光に包まれて消え去っていった。

「封印ではなく・・・あの数多の妖共を全て消し去った・・・じゃと・・・」
法眼は腰を抜かしてへたり込む。
「なるほど・・・黒漆剣・・・その真なるチカラか・・・。」
そう言うと黒炎は姿を消した。


こうして鞍馬山の・・・京の都の危機を事前に回避することできた。
煉静たちも辛うじて一命はとりとめた。
法眼曰く、黒漆剣の力らしい。

「黒漆剣は山田殿に託しますぞ。」

こうして私は黒漆剣の所持者となった。
あの征夷大将軍坂上田村麻呂以来ということになるらしい。
何故、使いこなせたかは皆目見当がつかない。



大和の国への帰路。

「殿さま。スゲーじゃねえか・・・俺と今度勝負するぞ。」
元気になった五右衛門が私に声をかけてくる。
黒漆剣の話を聞いたことによりテンションが高い。
ただ・・・髪型は爆発したままだ。

「殿様・・・マジで惚れたかも・・・♥」
真紅は私にベッタリである。
朋美にバレたら間違いなく殺されそうだ・・・。


こうして私たちは五右衛門の呪いも解け、ついでに京の都の危機を救った。
ただ魑魅魍魎を滅却する際に国民的人気の猫の妖怪そっくりの妖怪も巻き込んでしまった。
もし現代に戻れたら、おもちゃ屋さんであの時計のおもちゃを買って呼んでみようかな・・・。
そんなことを思ったりしつつ・・・

それにしても何故、私が黒漆剣を使うことができたのか・・・
この謎だけが心に引っ掛かってならなかったのだった。
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