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第43話:松永包囲網
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1566年も秋になった。
柳生攻めの失敗により筒井家の勢いが止まっていた。
更に十市家は新当主の遠長の下で再び勢力を取り戻しつつあった。
それにより、大和平野では筒井と十市の小競り合いが繰り広げられていた。
そんな中、貝那木山城に岳人と義輝が現れた。
何やら重大な話があるらしい。
大広間に家臣団が集まった。
「景兼さんは?」
「柳生にいるんだ。」
岳人は私の言葉を聞くと笑みを浮かべた。
「すまぬ・・・義兄上。これは俺の考えなのだが。」
そこに義輝が続けて言う。
「どうした?」
「今こそ、多聞山城を落とすべきだと思う。」
義輝は私の目を見つめた。
その中に確固たるモノが感じられる。
「多聞山城は堅固です。松永久通の・・・!?」
光秀は言いかけて義輝を見た。
義輝は深くうなずく。
「今の勢いで攻めれば勝機はあると思う。多聞山城を落とせば絶対に松永の勢力は弱まる。」
岳人は地図を広げた。
「でもそれを確実にするのは難しい。多聞山城の松永久通は三千の兵力。周囲の支城も合わせれば五千はあるだろうね。」
「五千か・・・多いですね。」
義成が考え込む。
「・・・。」
何かよくわからないが、凄い戦を考えているのね・・・
とりあえず私も考え込んでいるフリをした。
「策としては筒井に援軍を頼もうと思っているんだ。」
岳人の言葉に一同どよめきが走った。
「筒井が受け入れるとは思えないな・・・。」
一馬がつぶやく。
「松永に恨みがあろうとも我らにも恨みがあるでしょう。」
純忠は首を横に振る。
「その援軍を頼む使者にもよるでしょう。」
ここで源之進が口を開いた。
「そう・・・源之進さんの言う通り使者が全て・・・。」
そう言うと岳人が私をチラ見した。
マジか・・・私か・・・久しぶりの営業か・・・
一瞬、動揺するも私は覚悟はできていた。
いつも命懸けで戦っている家臣たちに対して私はやれることはしたかった。
私がやれることがあれば、それはしなければならないと思っていた。
そう・・・会社に不利益をもたらしたことは接待ゴルフのときだけだった。
あとは微々たるものでも会社に有益な契約ばかりだったはずだ。
やれる・・・私はやれる。
「よし・・・私が・・・」
言いかけたときだった・・・
「俺が筒井順慶と交渉をしに行こうと思う。」
義輝が言ってしまった。
「俺は順慶とは個人的に面識がある・・・皆の衆、任せてくれぬか?」
「ははッ!」
家臣団は平伏した。
「義兄上?」
「何?」
「俺の代わりに多聞山城攻めの指揮をお願いしたい。」
そうきましたか・・・予想の斜め上ですやん。
「義兄上が前線に立てば兵の士気が上がります。」
そんなもんですかねえ・・・私にそんなカリスマないと思うよ・・・
「俺は・・・いや、私はあの久通を討ち取りたいのです。例えどのような手段を講じても!!」
義輝の眼差しはまっすぐに私の心に届いた。
永禄の変・・・義輝は全てを失った。
その首謀者の一人が松永久通。
憎しみに囚われた戦い・・・因果応報の繰り返しだ。
でも・・・もし・・・美佳や岳人、朋美が誰かに殺されたらどうする?
法も無きこの時代で・・・。
いや・・・現代でもそうだ。
法で裁いても心の傷は癒えない・・・だろう。
「わかった・・・義輝。我が軍の全力を持って多聞山城を落とす。そして、松永久通の首を獲る。みなさん・・・この戦いは大和の命運がかかっています。」
私は静かに言った。
「絶対に勝ちましょう。」
「おお!!」「殿がやる気だ!!「オッサンカッケ―!!」
若干、耳に障る発言も聞こえるが家臣団は一斉に声を上げた。
義輝は平伏していた。
その肩が小刻みに震えているのがわかった。
私はその肩に手を乗せる。
「義輝。私とあなたは兄弟・・・。朋美の思いつきからの義兄弟だが、血は繋がらなくとも家族だよ。」
「義兄上・・・ありがたきお言葉・・・。」
その様子を見ていた岳人は涙を浮かべていた。
更に大広間を覗いていた美佳と朋美も涙していた。
犬なのにサスケも涙していた。
その隣でサスケの親友のツキノワグマのシンイチも泣いていた。
手にはニジマスを抱えていた。
私が横目で見ながら思うこと・・・
カオスだよ・・・
なんでクマが城の中にいるんだよ・・・
この戦いは本当に重要な戦である。
もし多聞山城攻めに失敗すれば・・・
一気にここまで積み上げてきたモノが全て崩れ落ちていく。
軍の編成と作戦立案も今まで以上に慎重に練らねばならない。
岳人と光秀、更に檜牧から清興、井足から六兵衛、吐山から九兵衛を呼んだ。
何故か美佳も同席している。
「九兵衛・・・久しぶりね。」
「美佳様、お変わりなく・・・。」
美佳と九兵衛、なんか見つめ合う二人が気になる。
視線のレーザービーム出てませんか?
評定よりも二人が気になる私に
「おい、集中しやがれ!!総大将だろうが!!」
六兵衛が厳しい言葉を投げかける。
「すんまそん・・・。」
「いえ・・・ご無礼をいたしました。モウシワケゴザイマセン。」
六兵衛さん、棒読みです。謝罪の意思が全く感じられません。
「此度の戦は総力戦です。我々だけでは兵力は足りません。」
光秀が言う。
「多聞山城は大きな城です。いつものような作戦だけでは落とせません。」
岳人は地図を広げると指で多聞山城の位置を示す。
「正面から攻めるのは本軍で兵力は二千。父さんたちだね。」
岳人は南から攻める軍を書き足す。
「東からは景兼さんと柳生、そして北畠から鳥屋尾さんが援軍を率いてきてくれる。合わせて二千ぐらい・・・もっと来てくれるかもしれないけど。」
東からの軍も書き足す
「西からは龍王山城の軍と筒井軍で攻めるつもりだ。これは三千は欲しいよね。」
西からの軍も書き足すと全軍の配置図になった。
「攻城兵器といってもカノン砲はまだ弾数に制限があるからね。今井さんのところで色々とやってくれているけれど年内は無理だから・・・。」
岳人はカノン砲を三か所に配置する。
「どれだけ多聞山城から兵を出させるか・・・あぶり出せるか・・・ですな。」
光秀が岳人を見る。
「はい・・・総力戦でもここで消耗しすぎたら後がないから・・・どれだけ大きな松永包囲網を作れるかです。」
そして筒井城。
城門の前に立つ義輝。
「何奴じゃ!!」
城門の前の兵たちは一斉に槍を構える。
「筒井順慶殿にお目通りを申し上げたい。」
「なんと・・・」
「私の名は山田義輝。」
「なんとォー!?」
城門の前の兵たちは驚きの声を上げた。
筒井城大広間。
「殿、お目通りを願う者が参られております。」
筒井家重臣松倉重信が入ってくる。
「・・・。」
筒井順慶は考え事をしていたのか返事がない。
「殿、お目通りを願う者が・・・」
「聞こえておるって・・・どのような者だ?」
「山田大輔が義弟の山田義輝と・・・。」
「なっ!?」
筒井家の家臣団はどよめく。
「馬鹿な・・・どのようにして・・・」
筒井家筆頭家臣慈明寺順国は思わず立ち上がってしまった。
「落ち着け順国。」
順慶は重信を見つめる。
「一人で来られたのか?」
「はッ・・・一人です。」
「通せ・・・。」
「なんと!?」
驚く家臣団。
そして義輝が大広間に入って来た。
「!?」
順慶は義輝の顔を見ると思わず固まってしまった。
ど・・・どういうこと・・・なんだ?
「筒井順慶殿。拙者、山田大輔が義弟の山田義輝と申し上げます。」
義輝は平伏し、顔を上げると義輝の顔を見た。
久しいな・・・大きくなったな・・・藤勝。
「すまぬ・・・皆の衆。下がってくれ。この者と二人で話がしたい。」
順慶は家臣団に言った。
順慶と義輝だけになった大広間。
「義輝様・・・よくぞ生きていてくださいました。」
順慶は涙を流す。
「藤勝・・・。いや・・・もう今は順慶だったな。大きくなった。」
義輝は笑顔で順慶の頭に手を置いた。
「誰も義輝様が生きておられるとは思っておりませんでした。」
「そうだろうな。山田家でも俺の正体を知っておるのはわずかだ。」
「それで・・・私に会いに来られた真意は?」
順慶の表情が突然変わった。
藤勝・・・さすがだな・・・
「我ら、山田家は多聞山城を攻める。」
「!?」
義輝の言葉に順慶はまた固まってしまう。
多聞山城の松永久通は手強い・・・山田家は本気なのか?
「そこで筒井家の力を貸して欲しい。松永を倒すために。」
義輝は頭を下げた。
「な・・・なんですとォ!!」
さすがの順慶も思わずたじろいでしまった。
「俺の私怨による戦いと思ってくれて良いぞ・・・。」
「義輝様・・・。」
果たして義輝は順慶を説得することができるのだろうか・・・
そして義輝が語りだす永禄の変の真実とは・・・
柳生攻めの失敗により筒井家の勢いが止まっていた。
更に十市家は新当主の遠長の下で再び勢力を取り戻しつつあった。
それにより、大和平野では筒井と十市の小競り合いが繰り広げられていた。
そんな中、貝那木山城に岳人と義輝が現れた。
何やら重大な話があるらしい。
大広間に家臣団が集まった。
「景兼さんは?」
「柳生にいるんだ。」
岳人は私の言葉を聞くと笑みを浮かべた。
「すまぬ・・・義兄上。これは俺の考えなのだが。」
そこに義輝が続けて言う。
「どうした?」
「今こそ、多聞山城を落とすべきだと思う。」
義輝は私の目を見つめた。
その中に確固たるモノが感じられる。
「多聞山城は堅固です。松永久通の・・・!?」
光秀は言いかけて義輝を見た。
義輝は深くうなずく。
「今の勢いで攻めれば勝機はあると思う。多聞山城を落とせば絶対に松永の勢力は弱まる。」
岳人は地図を広げた。
「でもそれを確実にするのは難しい。多聞山城の松永久通は三千の兵力。周囲の支城も合わせれば五千はあるだろうね。」
「五千か・・・多いですね。」
義成が考え込む。
「・・・。」
何かよくわからないが、凄い戦を考えているのね・・・
とりあえず私も考え込んでいるフリをした。
「策としては筒井に援軍を頼もうと思っているんだ。」
岳人の言葉に一同どよめきが走った。
「筒井が受け入れるとは思えないな・・・。」
一馬がつぶやく。
「松永に恨みがあろうとも我らにも恨みがあるでしょう。」
純忠は首を横に振る。
「その援軍を頼む使者にもよるでしょう。」
ここで源之進が口を開いた。
「そう・・・源之進さんの言う通り使者が全て・・・。」
そう言うと岳人が私をチラ見した。
マジか・・・私か・・・久しぶりの営業か・・・
一瞬、動揺するも私は覚悟はできていた。
いつも命懸けで戦っている家臣たちに対して私はやれることはしたかった。
私がやれることがあれば、それはしなければならないと思っていた。
そう・・・会社に不利益をもたらしたことは接待ゴルフのときだけだった。
あとは微々たるものでも会社に有益な契約ばかりだったはずだ。
やれる・・・私はやれる。
「よし・・・私が・・・」
言いかけたときだった・・・
「俺が筒井順慶と交渉をしに行こうと思う。」
義輝が言ってしまった。
「俺は順慶とは個人的に面識がある・・・皆の衆、任せてくれぬか?」
「ははッ!」
家臣団は平伏した。
「義兄上?」
「何?」
「俺の代わりに多聞山城攻めの指揮をお願いしたい。」
そうきましたか・・・予想の斜め上ですやん。
「義兄上が前線に立てば兵の士気が上がります。」
そんなもんですかねえ・・・私にそんなカリスマないと思うよ・・・
「俺は・・・いや、私はあの久通を討ち取りたいのです。例えどのような手段を講じても!!」
義輝の眼差しはまっすぐに私の心に届いた。
永禄の変・・・義輝は全てを失った。
その首謀者の一人が松永久通。
憎しみに囚われた戦い・・・因果応報の繰り返しだ。
でも・・・もし・・・美佳や岳人、朋美が誰かに殺されたらどうする?
法も無きこの時代で・・・。
いや・・・現代でもそうだ。
法で裁いても心の傷は癒えない・・・だろう。
「わかった・・・義輝。我が軍の全力を持って多聞山城を落とす。そして、松永久通の首を獲る。みなさん・・・この戦いは大和の命運がかかっています。」
私は静かに言った。
「絶対に勝ちましょう。」
「おお!!」「殿がやる気だ!!「オッサンカッケ―!!」
若干、耳に障る発言も聞こえるが家臣団は一斉に声を上げた。
義輝は平伏していた。
その肩が小刻みに震えているのがわかった。
私はその肩に手を乗せる。
「義輝。私とあなたは兄弟・・・。朋美の思いつきからの義兄弟だが、血は繋がらなくとも家族だよ。」
「義兄上・・・ありがたきお言葉・・・。」
その様子を見ていた岳人は涙を浮かべていた。
更に大広間を覗いていた美佳と朋美も涙していた。
犬なのにサスケも涙していた。
その隣でサスケの親友のツキノワグマのシンイチも泣いていた。
手にはニジマスを抱えていた。
私が横目で見ながら思うこと・・・
カオスだよ・・・
なんでクマが城の中にいるんだよ・・・
この戦いは本当に重要な戦である。
もし多聞山城攻めに失敗すれば・・・
一気にここまで積み上げてきたモノが全て崩れ落ちていく。
軍の編成と作戦立案も今まで以上に慎重に練らねばならない。
岳人と光秀、更に檜牧から清興、井足から六兵衛、吐山から九兵衛を呼んだ。
何故か美佳も同席している。
「九兵衛・・・久しぶりね。」
「美佳様、お変わりなく・・・。」
美佳と九兵衛、なんか見つめ合う二人が気になる。
視線のレーザービーム出てませんか?
評定よりも二人が気になる私に
「おい、集中しやがれ!!総大将だろうが!!」
六兵衛が厳しい言葉を投げかける。
「すんまそん・・・。」
「いえ・・・ご無礼をいたしました。モウシワケゴザイマセン。」
六兵衛さん、棒読みです。謝罪の意思が全く感じられません。
「此度の戦は総力戦です。我々だけでは兵力は足りません。」
光秀が言う。
「多聞山城は大きな城です。いつものような作戦だけでは落とせません。」
岳人は地図を広げると指で多聞山城の位置を示す。
「正面から攻めるのは本軍で兵力は二千。父さんたちだね。」
岳人は南から攻める軍を書き足す。
「東からは景兼さんと柳生、そして北畠から鳥屋尾さんが援軍を率いてきてくれる。合わせて二千ぐらい・・・もっと来てくれるかもしれないけど。」
東からの軍も書き足す
「西からは龍王山城の軍と筒井軍で攻めるつもりだ。これは三千は欲しいよね。」
西からの軍も書き足すと全軍の配置図になった。
「攻城兵器といってもカノン砲はまだ弾数に制限があるからね。今井さんのところで色々とやってくれているけれど年内は無理だから・・・。」
岳人はカノン砲を三か所に配置する。
「どれだけ多聞山城から兵を出させるか・・・あぶり出せるか・・・ですな。」
光秀が岳人を見る。
「はい・・・総力戦でもここで消耗しすぎたら後がないから・・・どれだけ大きな松永包囲網を作れるかです。」
そして筒井城。
城門の前に立つ義輝。
「何奴じゃ!!」
城門の前の兵たちは一斉に槍を構える。
「筒井順慶殿にお目通りを申し上げたい。」
「なんと・・・」
「私の名は山田義輝。」
「なんとォー!?」
城門の前の兵たちは驚きの声を上げた。
筒井城大広間。
「殿、お目通りを願う者が参られております。」
筒井家重臣松倉重信が入ってくる。
「・・・。」
筒井順慶は考え事をしていたのか返事がない。
「殿、お目通りを願う者が・・・」
「聞こえておるって・・・どのような者だ?」
「山田大輔が義弟の山田義輝と・・・。」
「なっ!?」
筒井家の家臣団はどよめく。
「馬鹿な・・・どのようにして・・・」
筒井家筆頭家臣慈明寺順国は思わず立ち上がってしまった。
「落ち着け順国。」
順慶は重信を見つめる。
「一人で来られたのか?」
「はッ・・・一人です。」
「通せ・・・。」
「なんと!?」
驚く家臣団。
そして義輝が大広間に入って来た。
「!?」
順慶は義輝の顔を見ると思わず固まってしまった。
ど・・・どういうこと・・・なんだ?
「筒井順慶殿。拙者、山田大輔が義弟の山田義輝と申し上げます。」
義輝は平伏し、顔を上げると義輝の顔を見た。
久しいな・・・大きくなったな・・・藤勝。
「すまぬ・・・皆の衆。下がってくれ。この者と二人で話がしたい。」
順慶は家臣団に言った。
順慶と義輝だけになった大広間。
「義輝様・・・よくぞ生きていてくださいました。」
順慶は涙を流す。
「藤勝・・・。いや・・・もう今は順慶だったな。大きくなった。」
義輝は笑顔で順慶の頭に手を置いた。
「誰も義輝様が生きておられるとは思っておりませんでした。」
「そうだろうな。山田家でも俺の正体を知っておるのはわずかだ。」
「それで・・・私に会いに来られた真意は?」
順慶の表情が突然変わった。
藤勝・・・さすがだな・・・
「我ら、山田家は多聞山城を攻める。」
「!?」
義輝の言葉に順慶はまた固まってしまう。
多聞山城の松永久通は手強い・・・山田家は本気なのか?
「そこで筒井家の力を貸して欲しい。松永を倒すために。」
義輝は頭を下げた。
「な・・・なんですとォ!!」
さすがの順慶も思わずたじろいでしまった。
「俺の私怨による戦いと思ってくれて良いぞ・・・。」
「義輝様・・・。」
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