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第207話:小谷城燃ゆ
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1570年11月22日、小谷城に到着した山田軍はすぐに城を取り囲んだ。
「なるほど・・・本気でワシを潰す気か。」
小谷城本丸からそれを見下ろす浅井長政。
その表情からは絶望は感じられない。
むしろその眼は輝きを増していた。
10年前にあたる1560年8月近江国野良田。
「浅井の小童・・・あやつはバケモンか・・・」
六角軍総大将六角義賢は総崩れとなった自軍の中で動けなかった。
「戦は兵の数ではない。兵の・・・そして将の覚悟で決まるんだァァァ!!」
わずか齢十五の浅井家当主浅井賢政(長政)の見事なまでの勇将さ。
そして浅井家譜代の猛者たちの戦いぶりは圧巻であった。
「六角承禎(義賢)・・・その首貰ったァァァ!!」
遠藤直経が槍を振るって六角軍本陣へと突入してくる。
「大殿ォッ!! 何をされておる!! 早くお逃げ召されよ!!」
そこに立ちはだかった蒲生賢秀は遠藤直経の攻撃を捌きながら声を張り上げた。
「ヒィ・・・」
思い直したかのように慌てふためいて逃げ出す六角義賢。
我が六角家にあのような勇猛果敢な主はおらぬ・・・
獅子奮迅の活躍で浅井の猛攻を食い止める蒲生賢秀の眼には、前線で武を誇示しながら兵たちを鼓舞し続ける浅井賢政の姿が輝いて見えていたのである。
総大将を守り切った賢秀は六角軍に退却の指示を出すしかなかった。
六角軍二万五千と浅井軍一万一千という戦いであったが、こうして圧倒的勝利を収めた浅井長政。その勇名は日ノ本中に轟くこととなったのである。
「何か嬉しそうなお顔をされてますな、殿。」
長政の隣に浅井家重臣赤尾清綱が立つ。
「あの野良田での戦では我らは一万一千の兵で六角の二万五千の兵を打ち破った。」
「ただ此度の戦は我らは三千。山田は二万三千」
「清綱・・・色々と済まなかったな。この期に及んでだが。」
「構いませぬぞ。ワシにとっては殿は新九郎様じゃて。」
「フッ・・・なんかのう・・・憑き物がとれたような気分だぞ。」
そんな長政の表情に清綱はただ頷いていた。
やっと戻られた・・・ここで死なせるには惜しい御方・・・
清綱の背後にはダルハンが控えている。
わかりました・・・清綱様・・・
清綱からの手の合図を受けるとダルハンは静かに立ち上がるのだった。
「頃合いだ・・・氏家殿。攻めるぞ!!」
美濃山田軍の本陣で青彪が氏家直昌を促す。
「なッ!?」
「動かねば時間の無駄・・・」
白虎も直昌に詰め寄っていく。
「兵を減らすのは得策ではない。それにワシは一応この軍を殿から任されておる・・・」
直昌は勇気を振り絞り反論するも、すぐに動けなくなった。
この男たち・・・平気でワシを斬れる・・・そういうことか・・・
青彪と白虎の尋常ならぬ殺気に気圧された氏家直昌は声を上げた。
「全軍突撃じゃ!!」
美濃山田軍三千の兵が一斉に小谷城へと突撃をかけていく。
これには山田軍本軍も小谷城の浅井軍にも全く予想ができなかった。
「左近殿。美濃の軍勢が攻めに出たぞ。」
「これに乗じて俺たちが攻めに出る訳にはいかん。あくまで俺たちだが・・・」
六兵衛と清興は動こうとはしなかった。
それはあくまで本軍が動かないということである。
「ふう・・・赤井殿。」
「なんじゃ。」
六兵衛に呼ばれたのは赤井直正。今は六兵衛の副将となっていた。
「手勢五百を率いて城の西の曲輪へ。」
「相分かった。必ずや突破口の発端になって見せよう。ガハハハッ!!」
丹波の赤鬼と謳われる名将赤井直正は武勇だけではなく知略にも長けている。
「勝政殿、我らには出番はないのか?」
「赤鬼ばかり贔屓にする気が!!」
そこに詰め寄ってくる籾井教業と荒木氏綱。彼らもまたこの戦で六兵衛の副将となっているのだ。
「そんな訳はござらん。籾井殿と荒木殿は東の曲輪・・・浅井家一の重臣赤尾清綱が守りし曲輪をそれぞれの手勢五百ずつで攻めていただきたい。」
「分かった!!」
「久方ぶりの攻め方じゃ!!」
丹波の三鬼たちは喜び勇んで本陣を出ていった。
それを見た清興はほくそ笑む。
「あれでは家臣ではなく友だろうが?」
「それでよろしいかと。あの方々は裏表無き好漢たち。」
「そうか・・・オマエも殿に似てきたな?」
「殿の私に対する扱い・・・我らに対するものと同じと考えればよろしいかと。」
「違いないな。」
六兵衛と清興はひとしきり会話を交わすと黙り込んだ。
あとは五右衛門たちが動く。その後に頃合いが来るだろう・・・
小谷城清水谷に攻め入った美濃山田軍は浅井軍の必死の抵抗を受けていた。
「だから言っただろうがァァァ!! このような攻め方では兵を失う・・・あれ?」
氏家直昌は声を荒げて青彪と白虎を責めたてようとするも、その二人の姿は既にそこにない。
その時だった・・・
ドドーンという轟音が次々と起こる。
「な・・・なんだ!?」「大地が割れるのか? 山が崩れるのか?」
清水谷の屋敷群から火柱と土煙が巻き上がると浅井軍はたちまち混乱状態に陥った。
開戦に乗じて浅井の兵に化けた山田忍軍の忍びたちが爆薬を仕掛け回っていたのだ。
予想よりも遥かに早い攻め入り・・・まさかな・・・美濃か・・・
五右衛門は何かに勘付くとそのまま姿を消した。
小谷城赤尾屋敷のある東の曲輪。
「なんと・・・山田の旗印。」
赤尾清綱はわずか二百の手勢で、迫りくる籾井教業と荒木氏綱の兵を迎え撃つしかなかった。
「ウルァァァァァ!!」
「なかなかの魂のこもった矢ではないかァ!!」
丹波の青鬼、荒木鬼は笑みを浮かべながら降り注ぐ矢を叩き落していく。
その光景を見ていた清綱は天を仰いだ。
これまでか・・・あとは・・・あとは頼むぞ・・・ダルハン・・・
「西の曲輪は我らが制したぞォォォ!!」
赤井直正は小谷城西の曲輪の守将である浅井政元を捕えていた。
「何故・・・何故に我が首を獲らぬ?」
浅井長政の弟である政元は智勇に秀でた浅井家屈指の傑物である。
「我が殿である山田大輔はそなたも、そしてその兄である浅井長政の首も欲してはおらぬわ。ただ天下の為にこの小谷城と浅井領を攻め落とさねばならぬだけ。」
赤井直正はそう言うと兵に命じて狼煙を上げさせた。
ちょうど美濃の兵たちが小谷城へと攻め入って半日が過ぎていた頃合いに赤井直正からの狼煙。
「そろそろ・・・」
「ああ・・・わかっておるわ。山田軍全軍小谷城へ突撃だ!! 手筈通りに逃げ道なく浅井長政を捕らえるぞ。」
それを受けた清興の号令で山田軍本軍が動き出した。
「これまでか・・・ワシは降るぞ・・・」
清水谷で徹底抗戦を続けていた磯野員昌は兜を脱ぐとそのまま降伏の意思を示す。
「ワシはこの城と共に散ろうではないか・・・」
東の曲輪では赤尾清綱が燃え上がる屋敷の中で自害していた。
やがてその火は次々と城内に飛び火していく。
本丸では・・・
「うぬう!!」
浅井長政は山田忍軍の忍びを斬り倒していた。
「ダルハン・・・ダルハンはいるか?」
「ここに・・・」
長政に呼ばれたダルハン。
そしてその配下たちも集っていた。
「よくワシの我儘についてきてくれた。感謝する・・・我が首を獲って山田に降れ。手柄になろう。」
そう言うと長政は兜と具足を脱いで座り込んだ。
「Явцгаая・・・」
ダルハンの指示で配下の者達はそれぞれ走り去っていく。
長政は満足そうな顔でそれを見送る。
ダルハンはすぐに長政の手をとると立ち上がらせようとした。
「私は美濃に降ります。」
その言葉に長政は苦笑するしかなかった。
「市姫に続いておぬしまでもか・・・余程、山田岳人は優れておるのか・・・」
「殿には命を救っていただいた恩がございます。生き延びれば私のように再起の芽も・・・」
ダルハンの眼に一寸の曇りもなかった。
やがて飛び火を受けて、本丸も炎に包まれていく。
その時だった。
「ダルハン殿か? 我が殿がそなたを欲しておる。早く来い。」
青彪が炎の中から姿を現した。
その異質なオーラにダルハンは顔をしかめる。
「ただこの浅井長政は要らぬ。」
更に白虎が刀を手にして炎の中を何事もなく歩いてきた。
こ・・・この者どもは・・・明・・・明の者か!?恐るべき強さを感じる・・・
ダルハンは長政を庇おうとするが、
「構わん・・ワシの首を獲って山田岳人に見せてやるがよい。」
長政はダルハンを制して前に進み出た。
「わかった・・・では死ね。」
白虎は表情一つ変えることなく刀を一閃。
悔い無き人生ではなかったがな・・・
浅井長政は完全に死を覚悟していた。
しかし、その首と胴が離れることはなかったのである。
「おいおい・・・白いヤツ。俺の方の殿様は浅井長政に用があるんだが!!」
白虎の刀を何者かが防いでいた。
「石川五右衛門・・・」
「邪魔するか・・・」
白虎と青彪はおぞましい程の闘気を放ちながら五右衛門を睨む。
五右衛門は片手で白虎の一撃を防いでいたのだった。
「山田のな・・・本家の筋を通させてもらう・・・二人がかりだろうが関係ねえぜ。」
五右衛門は二刀流の構えでそれに応える。
激しく燃え上がる炎・・・小谷城全域は火の海と化していた。
果たして五右衛門と青彪、白虎の戦いは?
そしてダルハン、浅井長政の運命は・・・
「なるほど・・・本気でワシを潰す気か。」
小谷城本丸からそれを見下ろす浅井長政。
その表情からは絶望は感じられない。
むしろその眼は輝きを増していた。
10年前にあたる1560年8月近江国野良田。
「浅井の小童・・・あやつはバケモンか・・・」
六角軍総大将六角義賢は総崩れとなった自軍の中で動けなかった。
「戦は兵の数ではない。兵の・・・そして将の覚悟で決まるんだァァァ!!」
わずか齢十五の浅井家当主浅井賢政(長政)の見事なまでの勇将さ。
そして浅井家譜代の猛者たちの戦いぶりは圧巻であった。
「六角承禎(義賢)・・・その首貰ったァァァ!!」
遠藤直経が槍を振るって六角軍本陣へと突入してくる。
「大殿ォッ!! 何をされておる!! 早くお逃げ召されよ!!」
そこに立ちはだかった蒲生賢秀は遠藤直経の攻撃を捌きながら声を張り上げた。
「ヒィ・・・」
思い直したかのように慌てふためいて逃げ出す六角義賢。
我が六角家にあのような勇猛果敢な主はおらぬ・・・
獅子奮迅の活躍で浅井の猛攻を食い止める蒲生賢秀の眼には、前線で武を誇示しながら兵たちを鼓舞し続ける浅井賢政の姿が輝いて見えていたのである。
総大将を守り切った賢秀は六角軍に退却の指示を出すしかなかった。
六角軍二万五千と浅井軍一万一千という戦いであったが、こうして圧倒的勝利を収めた浅井長政。その勇名は日ノ本中に轟くこととなったのである。
「何か嬉しそうなお顔をされてますな、殿。」
長政の隣に浅井家重臣赤尾清綱が立つ。
「あの野良田での戦では我らは一万一千の兵で六角の二万五千の兵を打ち破った。」
「ただ此度の戦は我らは三千。山田は二万三千」
「清綱・・・色々と済まなかったな。この期に及んでだが。」
「構いませぬぞ。ワシにとっては殿は新九郎様じゃて。」
「フッ・・・なんかのう・・・憑き物がとれたような気分だぞ。」
そんな長政の表情に清綱はただ頷いていた。
やっと戻られた・・・ここで死なせるには惜しい御方・・・
清綱の背後にはダルハンが控えている。
わかりました・・・清綱様・・・
清綱からの手の合図を受けるとダルハンは静かに立ち上がるのだった。
「頃合いだ・・・氏家殿。攻めるぞ!!」
美濃山田軍の本陣で青彪が氏家直昌を促す。
「なッ!?」
「動かねば時間の無駄・・・」
白虎も直昌に詰め寄っていく。
「兵を減らすのは得策ではない。それにワシは一応この軍を殿から任されておる・・・」
直昌は勇気を振り絞り反論するも、すぐに動けなくなった。
この男たち・・・平気でワシを斬れる・・・そういうことか・・・
青彪と白虎の尋常ならぬ殺気に気圧された氏家直昌は声を上げた。
「全軍突撃じゃ!!」
美濃山田軍三千の兵が一斉に小谷城へと突撃をかけていく。
これには山田軍本軍も小谷城の浅井軍にも全く予想ができなかった。
「左近殿。美濃の軍勢が攻めに出たぞ。」
「これに乗じて俺たちが攻めに出る訳にはいかん。あくまで俺たちだが・・・」
六兵衛と清興は動こうとはしなかった。
それはあくまで本軍が動かないということである。
「ふう・・・赤井殿。」
「なんじゃ。」
六兵衛に呼ばれたのは赤井直正。今は六兵衛の副将となっていた。
「手勢五百を率いて城の西の曲輪へ。」
「相分かった。必ずや突破口の発端になって見せよう。ガハハハッ!!」
丹波の赤鬼と謳われる名将赤井直正は武勇だけではなく知略にも長けている。
「勝政殿、我らには出番はないのか?」
「赤鬼ばかり贔屓にする気が!!」
そこに詰め寄ってくる籾井教業と荒木氏綱。彼らもまたこの戦で六兵衛の副将となっているのだ。
「そんな訳はござらん。籾井殿と荒木殿は東の曲輪・・・浅井家一の重臣赤尾清綱が守りし曲輪をそれぞれの手勢五百ずつで攻めていただきたい。」
「分かった!!」
「久方ぶりの攻め方じゃ!!」
丹波の三鬼たちは喜び勇んで本陣を出ていった。
それを見た清興はほくそ笑む。
「あれでは家臣ではなく友だろうが?」
「それでよろしいかと。あの方々は裏表無き好漢たち。」
「そうか・・・オマエも殿に似てきたな?」
「殿の私に対する扱い・・・我らに対するものと同じと考えればよろしいかと。」
「違いないな。」
六兵衛と清興はひとしきり会話を交わすと黙り込んだ。
あとは五右衛門たちが動く。その後に頃合いが来るだろう・・・
小谷城清水谷に攻め入った美濃山田軍は浅井軍の必死の抵抗を受けていた。
「だから言っただろうがァァァ!! このような攻め方では兵を失う・・・あれ?」
氏家直昌は声を荒げて青彪と白虎を責めたてようとするも、その二人の姿は既にそこにない。
その時だった・・・
ドドーンという轟音が次々と起こる。
「な・・・なんだ!?」「大地が割れるのか? 山が崩れるのか?」
清水谷の屋敷群から火柱と土煙が巻き上がると浅井軍はたちまち混乱状態に陥った。
開戦に乗じて浅井の兵に化けた山田忍軍の忍びたちが爆薬を仕掛け回っていたのだ。
予想よりも遥かに早い攻め入り・・・まさかな・・・美濃か・・・
五右衛門は何かに勘付くとそのまま姿を消した。
小谷城赤尾屋敷のある東の曲輪。
「なんと・・・山田の旗印。」
赤尾清綱はわずか二百の手勢で、迫りくる籾井教業と荒木氏綱の兵を迎え撃つしかなかった。
「ウルァァァァァ!!」
「なかなかの魂のこもった矢ではないかァ!!」
丹波の青鬼、荒木鬼は笑みを浮かべながら降り注ぐ矢を叩き落していく。
その光景を見ていた清綱は天を仰いだ。
これまでか・・・あとは・・・あとは頼むぞ・・・ダルハン・・・
「西の曲輪は我らが制したぞォォォ!!」
赤井直正は小谷城西の曲輪の守将である浅井政元を捕えていた。
「何故・・・何故に我が首を獲らぬ?」
浅井長政の弟である政元は智勇に秀でた浅井家屈指の傑物である。
「我が殿である山田大輔はそなたも、そしてその兄である浅井長政の首も欲してはおらぬわ。ただ天下の為にこの小谷城と浅井領を攻め落とさねばならぬだけ。」
赤井直正はそう言うと兵に命じて狼煙を上げさせた。
ちょうど美濃の兵たちが小谷城へと攻め入って半日が過ぎていた頃合いに赤井直正からの狼煙。
「そろそろ・・・」
「ああ・・・わかっておるわ。山田軍全軍小谷城へ突撃だ!! 手筈通りに逃げ道なく浅井長政を捕らえるぞ。」
それを受けた清興の号令で山田軍本軍が動き出した。
「これまでか・・・ワシは降るぞ・・・」
清水谷で徹底抗戦を続けていた磯野員昌は兜を脱ぐとそのまま降伏の意思を示す。
「ワシはこの城と共に散ろうではないか・・・」
東の曲輪では赤尾清綱が燃え上がる屋敷の中で自害していた。
やがてその火は次々と城内に飛び火していく。
本丸では・・・
「うぬう!!」
浅井長政は山田忍軍の忍びを斬り倒していた。
「ダルハン・・・ダルハンはいるか?」
「ここに・・・」
長政に呼ばれたダルハン。
そしてその配下たちも集っていた。
「よくワシの我儘についてきてくれた。感謝する・・・我が首を獲って山田に降れ。手柄になろう。」
そう言うと長政は兜と具足を脱いで座り込んだ。
「Явцгаая・・・」
ダルハンの指示で配下の者達はそれぞれ走り去っていく。
長政は満足そうな顔でそれを見送る。
ダルハンはすぐに長政の手をとると立ち上がらせようとした。
「私は美濃に降ります。」
その言葉に長政は苦笑するしかなかった。
「市姫に続いておぬしまでもか・・・余程、山田岳人は優れておるのか・・・」
「殿には命を救っていただいた恩がございます。生き延びれば私のように再起の芽も・・・」
ダルハンの眼に一寸の曇りもなかった。
やがて飛び火を受けて、本丸も炎に包まれていく。
その時だった。
「ダルハン殿か? 我が殿がそなたを欲しておる。早く来い。」
青彪が炎の中から姿を現した。
その異質なオーラにダルハンは顔をしかめる。
「ただこの浅井長政は要らぬ。」
更に白虎が刀を手にして炎の中を何事もなく歩いてきた。
こ・・・この者どもは・・・明・・・明の者か!?恐るべき強さを感じる・・・
ダルハンは長政を庇おうとするが、
「構わん・・ワシの首を獲って山田岳人に見せてやるがよい。」
長政はダルハンを制して前に進み出た。
「わかった・・・では死ね。」
白虎は表情一つ変えることなく刀を一閃。
悔い無き人生ではなかったがな・・・
浅井長政は完全に死を覚悟していた。
しかし、その首と胴が離れることはなかったのである。
「おいおい・・・白いヤツ。俺の方の殿様は浅井長政に用があるんだが!!」
白虎の刀を何者かが防いでいた。
「石川五右衛門・・・」
「邪魔するか・・・」
白虎と青彪はおぞましい程の闘気を放ちながら五右衛門を睨む。
五右衛門は片手で白虎の一撃を防いでいたのだった。
「山田のな・・・本家の筋を通させてもらう・・・二人がかりだろうが関係ねえぜ。」
五右衛門は二刀流の構えでそれに応える。
激しく燃え上がる炎・・・小谷城全域は火の海と化していた。
果たして五右衛門と青彪、白虎の戦いは?
そしてダルハン、浅井長政の運命は・・・
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