がんばれと いうよりほかに のうもなし

野栗

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頑張れと言うより他に能もなし

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 最近、時空のかなたから表題の川柳がふっと脳裏に姿をあらわしました。
 中学時代、怒りとともにノートにしたためたものです。

 野栗は、詩歌にはずっと無縁で今日まで来ました。しかし川柳や狂歌の諷刺には、子どもの頃からずっと親しみをおぼえてきました。

 どこの中学校も大同小異だと思いますが、クラス対抗の球技大会というものがありました。男子女子それぞれ、上手い子を集めた選抜チームと、その他大勢の子で人数合わせたチームが二つ三つ、そんな感じでした。
 野栗はもちろん、その他大勢の方です。

 クラスには必ず、こういう行事に熱くなる子が何人かいました。そういう子たちが「その他大勢」の子たちに自分たちと同じ熱量を当然のように要求し、朝や休み時間、放課後に練習しようと強いてくる、という話も相当あるようですね。
 野栗の場合は、幸いなことにそこまでのことはありませんでした。もし強制してきたとしたら、間違いなく全力で拒否です!! たまたま同じクラスになったという事実に、同調圧力という暴力を肯定する権利など一ミリもないからです。
 それでも、名状しがたい圧力を伴った雰囲気は、心の中に強烈な怒りを呼び覚ますに十分なものでした。

 基本、球技は「自分のやることではない」「関係ない」というのが野栗の生活感覚です。クラス対抗の勝利に熱量を傾ける趣味は野栗には全くありません。やってられん、冗談きついわ、そんな本音の中で、表題の川柳をひねり出しました。

 一生懸命頑張っている人に冷や水をぶっかけることは、この社会では強い非難を招来します。しかしながら野栗は、彼らに冷笑を浴びせることが「悪い」とは全く思いませんし、むしろそういう人々がいてこそ、辛うじてこの世の中で命を保つことができる存在があるのでは、と確信しています。

 球技大会で勝って泣き、敗けて泣きしているクラスメートが、もう気持ち悪くて気持ち悪くて死にそうでした。この感覚は、社会に出て働いている今もずっと自分の中にあります。みんな優しいから口には出さないでいるとは思いますが、同じような感覚を内にいだいている人は決して少なくないのでは、と感じています。

 球技大会のようなものに熱量を傾ける人々の訳知り顔に冷ややかな視線を送り、彼らの傲慢を全力で拒み揶揄することに、野栗は自分の熱量を傾け続けてきました。

 今日、ささやかに狸系与太を書き散らすその原動力は、徳島に生まれた野栗のルーツもさることながら、ここにあったのだと改めてしみじみ感じています。
 
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