不死身の魔女との妖しい契り~そして俺は魔女の剣となる~

nene2012

文字の大きさ
上 下
67 / 105

サービラ死す

しおりを挟む
 サービラは鎖に引き千切られたランシーヌを見て、心の内に勝ちを確信していたのである。しかし、突然、自分に突き刺さった杭が爆発したのだった。

 彼女の上半身と下半身が吹き飛ばされ地面を転がり血塗れになりながらも自分の状況を把握しようとしたのだ。


「一体……何が……」


 そう呟き痛みに耐えながら自分に起きたことを把握しようとしたのだ。

 すると、視線の先に自分の下半身が横たわっていたのだ。


「私の……半身が……」


 サービラは現状を把握できずに混乱していた。そして、自身の胴体を確認すると、内臓は飛び出して散乱していた。辺りは自身の血と臓物で血みどろになっていたのだ。


「あ……あぁ……」


 サービラは自分の状況を段々と理解していったのだ。


(体……、体をくっつけなくては……)


 彼女は自分の体を必死にくっつけようと、横たわった下半身を引き寄せ始めたのである。だが、どうやっても下半身は癒着しなかったのだ。


(何故……、繋がらないの……)


 サービラは必死に考えていると、自分の目の前にランシーヌの生首が転がっていたのだった。

 彼女の生首が、こちらに視線を向けると喋りだした。


「貴女の守護者が死んだのね……」

「オトフリートが死んだ……?」

「魔女は守護者が死ぬと不死身の能力が弱まるわ……」


 サービラはランシーヌの話を聞いて絶望と悲しみが襲っていたのだ。


(オトフリートが死ぬなんて……。私が愛したあの人が……)

「これで貴女は死を待つだけね……」


 ランシーヌは生首の状態でいても笑みを浮かべていたのだった。彼女が不死身であることを知らない者が、この状況を見たら仰天して失神してしまうだろう。

 サービラは、ただ地面を這いずっていた。彼女は自分の死期が近いことを感じていたのだった。


(このまま死ぬの……? 死ぬ前にあの人の元へ……)


 サービラは必死に這ってオトフリートのいる場所に向かっていたのである。


 俺はランシーヌの元へ向かっている時、這いずってこちらに近づいて来る何かの影を見つけたのだ。

 そして、その影の正体がサービラだと分かり、しかも半身だけになって這っていることに肝をつぶしていたのである。


「……」


 俺は無言でサービラを見詰めていた。彼女は一心不乱に這いずりながら俺の事に眼中はなく通り過ぎたのだった。その顔は苦痛で歪み目を見開きながら這っていたのである。

 這った後には彼女の血の跡が続いていたのだ。あの様子だと、もう死期が近いのだろう。

 彼女の行く先がオトフリートの所だと悟り、俺はランシーヌの元へ急いだのだった。


 森の中央まで来ると、そこには先に双子達とシャイラが先にいたのだった。

 俺は双子達とシャイラが、落ち着きをなくして何かを見つめているのに気がついたのだ。

 視線を辿るとそこにはランシーヌの首と千切れた手足、胴体が転がっていたのである。

 彼女達も先程、着いたらしくランシーヌの状態を見て気が気でなかったのだ。


「どうしよう……ランシーヌが……」


 ニアはその光景を見て唖然としていたのだった。ミラ、シャイラも息を呑んでオロオロしていたのである。

 以前、ランシーヌが敵から首を切断されたことがあるため、この状況に彼女達より多少慣れていた。


「ランシーヌ……」


 俺は彼女の首を持って胴体の切断面にくっつけたのだった。


「刃物の痕じゃないから癒着するのに少し時間が掛かると思うが……」

「うぅぅ……痛かった……」


 彼女は目を閉じながら苦痛に顔を歪めて答えていたのだ。そして、次第に痛みが引いてきたのか、ゆっくりと目を開け俺の方に視線を向けて見つめていたのである。


「ランシーヌ……」


 俺は彼女の頭を撫でていた。すると彼女は俺に視線を向けて喋りだしたのだ。


「あぁ……ラドリック……」

「しっかりしろ……」

「貴方がいるってことは……私は勝ったのね……」

「あぁ……そうだ」


 俺は彼女に返事すると、彼女は嬉しそうな表情を浮かべてゆっくりと目を閉じようとしていた。


「手足もくっつけるからな」


 すぐに彼女の手足を、それぞれの切断面に癒着させたのだった。


「これで大丈夫だ、しばらく安静にしていろ」


 俺がそう言うとランシーヌは幽かに笑みを浮かべていた。


「ありがとう……ラドリック……」


 彼女はそれだけ言うと目を閉じて眠ったのだった。

 俺がランシーヌの看病をしている間、双子達はずっとその場を動かずに心配そうに見つめていたのだ。


「ねぇ……大丈夫よね……?」


 ニアが俺に質問してきた。俺は彼女とミラの不安げな顔を見て安心させるように答えたのである。


「大丈夫だ……後は暫く安静にすれば回復するだろう」

「わかった……」


 ミラは安堵の表情を浮かべて言葉を漏らしていた。そして、俺達はランシーヌが目覚めるまで待つことにしたのだった。



 その頃、サービラは森の中を這いずって遂にオトフリートを目の前にしていた。

 今こうして大剣に寄りかかって死んでいる彼を見て思い出に耽っていたのである。


(オトフリート……私の愛する人よ……最後に貴方のところで死にたい……)


 彼女は最後の力を振り絞り上半身を引きずって彼の近くに寄せたのだった。


「……私の愛しい人……」


 彼女はそれだけ言うと動かなくなっていた。彼女は愛する人の傍に寄り添って冷たくなっていた。そして、微笑みを浮かべながら逝ったのである。



 ランシーヌの容態は数時間で安定して、彼女はゆっくりと目を開けたのだった。


「気分はどうだ?」


 俺は彼女に声を掛けると、彼女は微笑みながら答えていたのだ。


「大丈夫よ……」


 俺が彼女の様子を見て安心していると、彼女達の傍で見ていた双子達が話しかけて来たのだ。


「ランシーヌ!!」


 ニアが泣きながら彼女の名前を呼んでいたのだ。すると、ランシーヌはニアに微笑んでいたのだ。


「心配かけたわね……」


 彼女はそれだけ言うと、俺の顔を見つめたのである。


「貴方には感謝しきれないわ……、また助けて貰ったから……」


 俺はランシーヌに感謝されて照れ臭くなり顔を背けたのだった。すると、ミラがランシーヌに質問してきたのだ。


「サービラの手下を私の眷属にしたんだけど、彼女はどうするの?」


 ミラはベスの処遇をランシーヌに訊ねたのである。すると、彼女は少し考えて答えていたのだった。


「そうね……暫くは、様子を見てみましょうか……。私達の仲間になってくれたらいいけど……」

「えっ? 彼女を仲間にするの……?」

「えぇ……、魔女を倒すためには一人でも味方は多い方がいいから……」


 ランシーヌがそう答えた時、ニアは露骨に嫌な顔をしたのである。


「嫌よ……あんな卑怯な女……」

「そう言わないで、彼女だって私達の役に立てるはずよ」


 ランシーヌに言われて、彼女は渋々と言った感じではあったが了解していた。

 俺は今後の彼女達の関係に不安を覚えながらも森を後にしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...