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サービラの屋敷で

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 ランシーヌは、堂々とサービラの屋敷の扉に近づいて行った。そして、屋敷の扉をノックしたのである。


「ランシーヌよ! この屋敷の主人と話があるの!」


 そう言うと、扉がゆっくりと開いたのだ。中からはサービラではない女性が出てきたのである。

 彼女は女性を見ると首を傾げていた。

(この女性も配下かしら?)

 そう思って見ていると、女性はランシーヌを睨み付けながら話しかけてきたのだ。


「何の用ですか?」


 彼女の口調は丁寧だったが、何故か不快感を感じていたのである。


「魔女に話があるのよ」


 すると、女性が更に睨んできたのである。


「魔女が、サービラ様に話とは一体……」


 女性はそう言いながらランシーヌに近づこうとしたのだが、その歩みを止めていたのだ。


「通して貰えるかしら?」


 ランシーヌがそう言うと、女性は困惑しているかのような表情を浮かべていた。


「だ、駄目です……!」

「何故かしら?」


 ランシーヌは不思議そうに聞き返すと、彼女は少し冷静になったのか話しかけてきたのだ。


「サービラ様は、現在取り込み中ですので……」

「待てないわ……」


 ランシーヌはそう言うと、強引に入ろうとしていた為ベスは驚愕の表情を浮かべ、声を荒げたのである。


「ちょっと……! 待ちなさい!」


 しかし、彼女は無視して入ろうとすると、ベスがランシーヌの腕を掴んだのだ。


「いい加減にしなさい!!」


 そして、彼女はランシーヌを怒鳴りつけたのだが、表情を変えることなくそのまま中に入ろうとしたのである。

(この女……!)

 ベスが力を入れて引っ張るのだが、ランシーヌはピクリとも動かなかったのである。

 そんな時だった……。部屋の扉が開き中からサービラが出てきたのだ。彼女は、ランシーヌの姿を見て驚いていたのである。


「何をしてるの……?」


 2人が振り向くと、サービラが怪訝な表情を浮かべていた。そして、ランシーヌは平然とした表情で言ったのだ。


「私を中に通してくれないかしら?」


 すると、サービラはランシーヌの顔を見て更に驚いていたのだ。


「まさか1人で……」


 だが、彼女はすぐに冷静になっていた。そして、ベスに向かって口を開いたのである。


「ベス! その人は魔女よ!早く捕まえて!」


 すると、ランシーヌがベスの腕を逆につかみ返したのだ。そして、そのまま彼女を投げ飛ばしたのだった。


「ぐはっ!」


 ベスは壁に叩きつけられて倒れ込んでいたのだ。それを見たサービラは、驚いて目を見開いていたのである。


「貴女は、なぜ1人で無防備にもやって来たの!?」


 サービラが叫ぶように言うと、ランシーヌは不思議そうな顔で首を傾げたのである。


「何を言っているのよ? 貴女達と話をしに来たに決まっているじゃない」


 ランシーヌはそう言ってニッコリと笑うと、サービラは慌ててベスに駆け寄ったのだ。そして、彼女が無事か確認していたのである。

 ベスは壁に叩きつけられ倒れていたが、意識はあったようだ。そして、ランシーヌを睨み付けていたのだ。


「すみません……。私とした事が油断してました」


 ベスはそう言うと、悔しそうに唇を噛み締めていたのだ。すると、サービラがランシーヌに向かって叫んだのである。


「何をしに来たのよ!?」


 ランシーヌは平然とした表情で答えたのだ。


「だから言ったでしょう! 貴方達に話をしに来たの!」

「ふざけないで!!」


 サービラは叫ぶと、部屋の中からオトフリートとアニウスが姿を現したのだ。


「うるさいぞ……。何を騒いでいるんだ?」


 オトフリートが不機嫌そうに言うと、サービラは彼に向かって叫んだのである。


「魔女が1人で来たみたい!」


 サービラがそう言うと、アニウスは鼻で笑っていた。そして、ランシーヌを見てニヤッと笑ったのだ。


「ふんっ! 魔女1人か……。相手にならないぞ……」


 アニウスは図々しく笑っていると、オトフリートもランシーヌを見ながら自信たっぷりに笑っていたのである。


「ガハハ! 1人なら楽勝だぜ!」


 2人はそう言うと、それぞれ武器を構えて戦闘態勢に入っていたのだ。それを見たサービラは違和感を抱いたのである。

(何かおかしい……!?)

 そう思っていると、ランシーヌはクスクスと笑っていたのだ。

 その笑い声を聞いてサービラは確信したのである。

(まさか……!?)

 だが、サービラの気持ちに気付かずにオトフリートとアニウスがランシーヌに向かって攻撃を繰り出していたのである。

 そして、ランシーヌは呪文を唱えていた。


「我に襲い掛かる者に最も臭き悪臭をもたらせよ!」


 すると、辺り一面に腐った匂いや糞便の匂い等の悪臭が漂いオトフリートとアニウスは鼻を押さえ苦しんでいたのだ。

 オトフリートは吐き気を催しながら咳き込んでおり、アニウスは鼻を押さえ床に反吐を戻しそうにしていたのである。

 サービラはその様子を呆然と見ていたが、すぐに悪臭で鼻を押さえ顔を歪ませていた。ベスも鼻を押さえて涙目になって気持ちが悪くなりむせている状態であった。


「貴女……、一体これは……?」


 サービラがランシーヌに問いかけると、彼女はクスクスと笑っていたのである。


「うふふ、私の呪文よ……。悔しかったら、私を捕まえて見せなさい!」


 そう言うと、彼女は走り出して屋敷から出て行ったのだった。


「待て……!」


 サービラは慌てて追いかけて行き、その後をオトフリート、アニウス、ベスが慌てて追いかけていたのである。

 そして、屋敷の外にいたニアとミラは走り去るランシーヌを見ていたのだ。すると、双子達はお互いに顔を見合わせた後、ニアが急いで屋敷の中に入って行ったのであった。
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