不死身の魔女との妖しい契り~そして俺は魔女の剣となる~

nene2012

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アレシアとの出歩き

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 ランシーヌが酒場にいた頃、ラドリックとアレシアはネスコーの街中を歩いていた。

 アレシアは笑顔だったが何処かぎこちなかった。

 俺は気になり話しかけたのである。


「どうしたんだ?」

「う、ううん。なんでもないわ」

「さっきから様子が変じゃないか。アンドレアと言う領主に会った時からだよな?」

「それは……その……」


 アレシアは言い淀んでいた。

 すると、突然アレシアは立ち止まったのである。


「アレシア?」

「ねぇ……、もしもの話をするけど聞いてくれる?」

「ああ……」

「もし、私が貴方の事が好きだと言ったら……、ラドリックは私の事を好きになってくれるかな?」

「えっ!?」


 俺は驚き戸惑っていると、アレシアは真剣な眼差しでじっと見つめてきた。


「ラドリックって恋人いるの?」

「えっ? いや、今は居ないよ」

「そうなの……?」


 アレシアは嬉しそうに微笑み、少し頬を赤らめていた。


「あ、ああ……そうだよ」

「そう……。それじゃあ、私にもまだチャンスがあるってことね」

「い、いや、そういうわけじゃなくて……。アレシアの事は嫌いじゃないよ」

「ふぅん……。それじゃあ、私が好きだって言ったら付き合ってくれるの?」


 アレシアは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


「それは……」

「それは?」


 俺は話題を変えるため、わざとらしく咳払いをした。


「ゴホンッ! それよりも明日の夜、集会に行く事になった件だけど……」

「あっ、誤魔化した!」


 アレシアは不満げな表情をしていたが、すぐに機嫌を直した。


「分かったわ。もう聞かない」


 アレシアはあっさり引き下がったのである。

 そして、俺達は教会の前を通ったのであった。

 教会はボロボロになっており、廃墟になっていた。


「この町にはエルミス教の教会はないのか?」


 俺はアレシアに訊ねてみた。


「この町には信者は殆どいないのよ。アンドレア様が追い出してしまったから……。それに、あの人の奇跡の力が宗教より大事だって町の人も思っているわ」

「そんなに凄い力なのか……」

「うん。彼女の奇跡の力で病が治った人がいるもの。そして彼女は町の人達には救世主として慕われているのよ」

「なるほど……」


 そう話しながら歩いていると、後ろの方で悲鳴が聞こえたのだ。


「キャアァー!!」


 俺とアレシアが振り返ると、女性がナイフを持った男に襲われていた。

 男は女性の腕を掴むと逃げられないようにしていたのだ。

 女性は恐怖で泣き叫んでおり、抵抗する事もできずにいた。


「誰か助けてぇ~!!」

「くそっ……!」


 俺は舌打ちをしながら剣を屋敷に置いて出かけたことを後悔した。


「俺があいつを止める。その間に、アレシアは女性の救出を頼む」

「わかったわ」

「よし、行くぞ」


 そう言うと、俺とアレシアは走り出した。


「な、何だ貴様らは!?」


 男は俺達を見ると驚いていたが、気にせずそのまま突っ込んだ。


「くらえ――!!!」


 俺は叫びながら男に体当たりを食らわせた。


「ぐわぁ~!?」


 男は吹っ飛び地面を転がる。

 俺は倒れている男の胸ぐらを掴み、睨み付けた。


「お前、何でこんな事をするんだ!?」

「うるせぇ~! 離しやがれ!!」


 男は暴れていたが、俺は手を緩めることはしなかった。


「おい、大人しくしろ!」


 アレシアは泣いている女性に声をかけた。


「大丈夫?」

「う、うう……。え、えぇ……」

「今のうちに逃げなさい」

「ありがとうございます」


 女性はお礼を言うと慌ててその場から離れていった。


「てめぇら……。よくもやりやがったなぁ……?」


 男は怒りの形相で俺の顔を見てくる。


「お前が女性に手を出してきたんだろ?」

「黙れぇ――! この野郎!!」


 男は俺の手を振り払うと、立ち上がり再び襲いかかってきた。

 だが、アレシアが割り込んできて拳を顔に叩きつけたのである。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ―――!!!」


 男が絶叫を上げた。

 アレシアの一撃は強力だったようで、鼻は潰れ鼻血を吹き出しながら倒れた。


「くそっ、この女……」


 男は悪態をつくと、アレシアを睨み付ける。


「覚悟はいいかしら?」


 アレシアは冷たい目つきで見下ろしていた。


「さようなら……。死になさい……」


 そう言うと、アレシアは拳を握りしめ振り上げたのである。


「止めてくれぇ――!!」


 男が懇願した、その時であった。

 騒ぎを聞きつけた警備隊が駆けつけて来たのである。


「そこまでだ! おとなしくしろ!」


 それを聞いたアレシアは残念そうな顔をして構えを解く。


「仕方がないわね……」


 アレシアは男から離れて俺の隣に来た。

 すると、警備隊の隊員達が駆け寄ってくる。


「これは、アレシア様ではないですか……?」


 隊長らしき人物が声をかけてきたが、アレシアは不機嫌そうに答えたのだ。


「私の名前を知っているという事は、貴方達はクレムの部下なの?」

「はい……。その通りです」


 すると、アレシアは厳しい眼差しを向けたのであった。


「これまで貴方達は一体何をしているのかしら?」

「それは……」


 隊長は言い淀んでいた。すると、アレシアは警備隊の隊長を問い詰めたのだ。

 その光景を見ていた他の警備隊達は萎縮していた。

 警備隊はアレシアに叱られ小さくなっていたのである。

 しばらくすると、アレシアがこちらに向き直り話しかけてきた。

 先程とは違い、笑顔になっていたのである。だが、何故か目が笑っていなかった。

 俺は昔の知っているアレシアとは考えられない行動を見て思わず背筋が凍るような感覚を覚えたのであった。


「ラドリック、怪我はない?」

「あ、ああ……」


 俺は戸惑いながらも返事をした。


「よかった……」

 アレシアは安堵した表情を浮かべていた。

「それじゃあ、帰りましょうか……」

「そうだな……」


 こうして俺とアレシアはクレムの屋敷に帰ったのであった。
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