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みんな仲良く

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 翌朝、目を覚まして起き上がると、隣ではまだユナが眠っていた。

  俺は頭を掻きながら立ち上がり、リビングへ向かう。

  眠たい眼を擦りながら、洗面所で顔を洗い、歯を磨く。

  ふと鏡に映った自分の姿を見て、昨日の事を思い出す。

  ユナが俺の記憶を読み取れなかったら、残党の犯行は続いていただろう。

  改めて、ユナに感謝の気持ちが込み上げてくる。

  俺は朝食の準備に取り掛かった。

  トーストを焼いて、バターを塗って皿に乗せる。

  その上に、レタスとトマトを添える。

  コーヒーをカップに注ぎ、食卓に並べた。

「おはよう~」

  欠伸をしながら、ユナが起きてきた。

「おう、起きたか……」

  俺は振り向かずに返事をした。

「うん……。ねぇ、何か手伝うことある?」

「いや、もう準備できたぞ」

「そっか……。ありがと」

  ユナは嬉しそうな声で礼を言うと、椅子に座って食べ始めた。

「ねえ、パパ……」

「ん?」

「今日の講義が終わったら、何処か遊びに行かない?」

「おぉ、いいぞ!」

「やったぁ!」

「よし、じゃあ決まりだな」

「うん!」

  2人は笑顔で会話しながら食事を済ませ、俺は支度を整えて大学に向かう。

  大学では美和が隣に座ってきた。

「おはよう!」

  俺は挨拶する。

「隆司……。おはよ……」

「どうした? 元気ないなぁ……」

「う、うん……。隆司はアイカさんのことは、どう思っているの?」

「アイカのこと? まあ、綺麗とは思うけど……」

「それだけ?」

「何だよ? いきなりそんなことを聞いてきて……」

「別に……。何でもないわよ……」

「変な奴だな……」

「ふんっ……。もう知らない……」

  美和は不貞腐れたような態度を取る。

 俺には何故、彼女が不機嫌なのか理解できなかった。

 それから午後の講義も終わり、俺は家に帰ろうとすると、美和が呼び止めてきた。

「隆司! ちょっと待って!」

「どうした?」

「話があるんだけど……」

「悪い……。これから用事があるんだ……」

「アイカさんと会うのね……」

「違うよ……。ユナと遊びに行くんだよ」

 俺は否定したが彼女は信じていない様子だった。

「じゃあ、私も一緒に行ってもいい?」

「えっ!? いや、それは……」

 俺は返答に困る。

「やっぱり……。アイカさんと行くんでしょ……」

「いや、違う……」

「いいから行きましょう! ほら、早く!」

 美和は怒りの形相で俺を睨みつけながら、背中を押して無理矢理歩かせる。

「分かったから……。押すなって……」

 俺は抵抗できずに、彼女に付き従った。

 暫くすると、俺のアパートが見えてくる。

 俺は玄関の前に立ち、鍵を取り出すと扉を開いた。

 中に入ると、既にユナが待っていた。

 だが、アイカも部屋にいたのである。

「あれ!? アイカ!? なんでお前がいるの?」

 俺は驚いて尋ねた。

「あら? 私が居たら都合が悪いの?」

 アイカは微笑みを浮かべていたが、美和の姿を確認すると、途端に冷たい表情になる。

「黒崎さん……」

「アイカさん……」

 2人の間に険悪な雰囲気が流れる。

「なあ、どういうことだ?」

 俺はユナに事情を聞くことにした。

「実はね、今日パパと一緒に遊ぶ約束を話したらお姉ちゃんも付いてくると聞かなかったので連れてきたのよ……」

「そうか……」

 俺は苦笑いをするしかなかった。

「お邪魔します……」

 美和は部屋に入るなり、俺の隣に座る。

「おい! 近いって!」

 俺は彼女の肩を引き離そうとするが離れなかった。

「いいじゃない! 今日は、私に譲ってくれる?」

「嫌だよ! 今日はパパと遊ぶんだから!」

 ユナが割って入る。

「ちょっと、あなた達! 私の目の前で何をしているのかしら?」

 アイカは俺達のやり取りを見て苛立っていた。

 3人の様子を見ていた俺だったが、次第にイラつき始める。

「ああ! もう! うるさい! 静かにしろ!」

 俺は怒鳴りつけると、3人は驚いた顔で黙ってしまった。

「いいか! ここは俺の家なんだぞ! 誰が来ようと勝手だろうが!」

 俺は立ち上がり、大声を出す。

 その迫力に圧倒され、誰も反論できなくなってしまった。

「よし、決まったな……。じゃあ、早速出かけるか!」

 俺は満足げに笑みを浮かべると、外出の準備を始めた。

「ごめんなさい……」

 ユナが申し訳なさそうな声で謝ってくる。

「別に気にしてないよ。さあ、行こうぜ」

 俺は笑顔を見せた。

「うん……」

 ユナも笑顔を見せる。

「うん……」

 美和とアイカも返事をして立ち上がった。

 こうして4人で出掛けることになったのである。


 街に出ると、多くの人達が行き来していた。

 4人で並んで歩いていると、男は俺だけなので周りからの視線を感じる。

 俺は溜息をつくと、横目で他の3人を眺めた。

 アイカと美和は互いに不満そうな顔をしていたが、口喧嘩するほどではなかった。

 俺は安心すると、ユナに声をかける。

「何処に行きたい?」

「うーん……。そうだ! カラオケにしようよ!」

「いいぞ! よし、じゃあ行こうか!」

 俺達はカラオケ店に向かった。

 受付を済ませると、部屋に入って順番を待つ。

 待っている間、俺は飲み物を注文した。

 暫くすると、美和がマイクを手に取った。

「最初は私が歌うわね!」

 彼女は楽しそうな表情で曲を入力する。

 流れてきた曲はアイドルの曲だった。

 彼女が歌い上げる、その姿は輝いていた。

「上手いなぁ……」

 俺は感心しながら呟く。

「うん……」

 隣に座っていたユナは嬉しそうに笑顔を見せていた。

「じゃあ、次はパパの番だよ」

 ユナに促されて、俺は曲を入れる。

 俺は恥ずかしながらも、精一杯歌った。

「うん……。良い感じだよ……」

 ユナが笑顔で褒めてくれた。

「ありがとう……」

 俺は照れ臭くて、頬を掻く。

 それから順番に歌うことになった。アイカが歌っている最中、何かを思いついたようで美和に話しかける。

「ちょっと、黒崎さん! 私と勝負しない?」

 彼女は真剣な眼差しで問いかけてきた。

「えっ!? 何のこと?」

 美和は困惑した表情で聞き返す。

「歌よ! どちらの方が上手く歌えるか、勝負するのよ」

「えっ!? どうしてそんなことを……」

 美和は躊躇いながら答えたが、アイカは構わず話を続ける。

「私が勝ったら、隆司のことを諦めてくれるかしら?」

「そ、それは……」

 美和は言葉に詰まってしまった。

「じゃあ、決まりね! 私が勝ったら、隆司との交際を認めてもらうから!」

 アイカはニヤリと笑う。

「えっ!?」

 美和は驚きの声を上げた。

「どうせ、負けるのは怖いんでしょ? じゃあ、諦めることね……」

 アイカは挑発するように言う。

「ふん……。いいわ……。その代わり、私が勝ったらアイカさんも隆司のことは諦めてね!」

「分かったわ! 約束だから!」

 2人は睨み合うと、曲を入力した。

 曲が流れている間に1人は歌いながら、歌っていない方は不敵な笑みを浮かべて待っていた。

 そして、曲が終わるとお互いの点数が表示された。

 アイカ96点、美和96点である。

 2人とも高得点を叩き出し、接戦を繰り広げたのであった。

 2人は悔しそうにしている。

「この勝負は引き分けということで、今日はもう終わりにするぞ!」

 俺はそう告げると、料金を払って退室した。

「ねえ、パパ! 最後に記念写真を撮ろうよ!」

「ああ、そうだな! そうするか!」

 ユナ、アイカは笑顔を見せながら俺に寄り添ってきた。

「ちょっと! あなた達、近すぎよ!」

 美和は慌てる。

「黒崎さんこそ……! 離れなさいよ!」

 アイカは対抗して俺の腕にしがみついてきた。

 3人の間で火花が飛び散っている。

「ああ、もう! いい加減にしてくれないか!」

 俺は溜息をつくと、写真の撮影を自撮りすることにした。

 3人の美女が並び立つ様子は周りの男性達の注目を集めていた。

 撮影が終わり、俺達は帰宅することになった。

 3人に囲まれるようにして歩くと、すれ違う人達から好奇の目で見られる。

 3人に言い寄られているように見えるからだろう。

 アイカ、美和は俺に好意を寄せてくれているが、俺は2人と付き合おうとは思っていなかった。

 しかし、2人は俺のことを好きになってくれたのだ。正直なところ、俺は嬉しかった。

 だが、どちらかを選ぶなんてできない……。そんなことをしたら、もう片方を傷つけてしまうことになるからだ……。

 俺は悩んでいたが、答えが出ないまま自宅へと到着してしまったのである。

 アイカ、美和とはそれぞれ途中で別れていた。

 俺はユナと一緒にアパートに入ると、ソファーに座り込んだ。

「疲れたなぁ……」

 俺は溜息をつく。

「お姉ちゃんと、黒崎さん張り合っていたんだもんね……」

 ユナは苦笑いを浮かべている。

「あのさ、パパ……」

「ん? なんだ?」

「これからも、みんな仲良くしていけたらいいなと思うんだ……」

「そうだな……」

 俺は微笑むと、ユナの頭を撫でた。

 ユナは気持ちよさそうに目を細めていたが、突然ハッとした顔を見せる。

 俺は不思議に思って彼女の顔を覗き込む。

 すると、ユナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 俺も気恥ずかしくなり、無言になった。

 暫く沈黙が続いた後、俺は口を開いた。

「よし! じゃあ、晩飯を作るか!」

 俺は立ち上がると、台所に向かう。

「うん!」

 ユナは元気よく返事をした。

 俺は、これからもこの様な生活が続いていければ良いと思っていたのだった。

 この日の星空はいつもより輝いて見えた。それはきっと、明日への希望に満ち溢れて輝いていたからかもしれない……。
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