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番外編 側妃セラフィーナ①
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オリヴェル・ケストナーは王立学園卒業後、実家には戻らなかった。
王立学園時代に築いた人脈を利用して海外に移住したのである。
彼がそうしたのは実家に戻ると自分よりも優れた兄と比較されるのを嫌ったからであった。
海外留学というのは只の方便である。
侯爵家の次男坊と云えば家格は高くても領地を継ぐことは出来ない。
親が持つ別の爵位を貰う以外は自分で自分の財を築く必要がある。
かといって官吏や騎士になる事がお決まりのコースだが興味を持てない。
何か他の生きる道を探すしかなかった。
オリヴェルが学生時代に知り合った知己は隣の軍事大国の高官の子息だった。
帝国の属国とも揶揄される事のある王国から海外留学する場合の行き先はやはり帝国が多い。
だが、まだ当時は王国と軍事大国の仲は悪く無かったのでオリヴェルは行き先をそちらに決めた。
間借りした高官の子息の家は豪華だった。
その屋敷のあまりの大きさにオリヴェルは驚いた。
国民は皆つつましい身なりなのに高官の子息の身の回りは全て豪華な物で満たされている。
実質的な支配階級という事が見て取れた。
高官は留学から帰ってきた息子と息子の連れて来た友人の為に催しを開いてくれた。
その時がオリヴェルにとって重要な転機だった。
高官が家に招いた中に居た美貌の女性にオリヴェルは目を止める。
その踊り子の名はセラフィーナと云った。
オリヴェルはセラフィーナと恋に落ちた。
最愛の夫を不慮の事故で亡くしたセラフィーナの心を埋めたのがオリヴェルだった。
6歳年上のセラフィーナには幼い娘がいたがその娘もオリヴェルにとてもよく懐いた。
オリヴェルはセラフィーナとその娘を心から愛していた。
しかし、そんな幸せな日々も突然終わる事になった。
オリヴェルの祖国の王、ヴィルヘルムがこの国にやって来たのだった。
ヴィルヘルムは歓待の為にこの国の貴賓館に呼ばれたセラフィーナに目を付けた。
そしてそのまま自分の国に連れて帰る事を望んだ。
軍事大国の国民は国家に奉仕する存在であった。
人の為に国があるのではなく国の為に人が存在する。
一般人の意志や現在の境遇などは関係ない。
セラフィーナは両国の友好のあかしとしてヴィルヘルムへ土産として贈られた。
オリヴェルとエヴァリーナがその事を知ったのは数日たっての事だ。
何時までも帰ってこないセラフィーナを案じたオリヴェルはすぐに動いた。
家主である高官を通じて事情を調べてもらったのだ。
しかし全ての事を知ったのは既にセラフィーナは王国に連れ去られていた後だった。
「そんな……セラフィーナ、もう会えないのか?」
「お母様……」
王立学園時代に築いた人脈を利用して海外に移住したのである。
彼がそうしたのは実家に戻ると自分よりも優れた兄と比較されるのを嫌ったからであった。
海外留学というのは只の方便である。
侯爵家の次男坊と云えば家格は高くても領地を継ぐことは出来ない。
親が持つ別の爵位を貰う以外は自分で自分の財を築く必要がある。
かといって官吏や騎士になる事がお決まりのコースだが興味を持てない。
何か他の生きる道を探すしかなかった。
オリヴェルが学生時代に知り合った知己は隣の軍事大国の高官の子息だった。
帝国の属国とも揶揄される事のある王国から海外留学する場合の行き先はやはり帝国が多い。
だが、まだ当時は王国と軍事大国の仲は悪く無かったのでオリヴェルは行き先をそちらに決めた。
間借りした高官の子息の家は豪華だった。
その屋敷のあまりの大きさにオリヴェルは驚いた。
国民は皆つつましい身なりなのに高官の子息の身の回りは全て豪華な物で満たされている。
実質的な支配階級という事が見て取れた。
高官は留学から帰ってきた息子と息子の連れて来た友人の為に催しを開いてくれた。
その時がオリヴェルにとって重要な転機だった。
高官が家に招いた中に居た美貌の女性にオリヴェルは目を止める。
その踊り子の名はセラフィーナと云った。
オリヴェルはセラフィーナと恋に落ちた。
最愛の夫を不慮の事故で亡くしたセラフィーナの心を埋めたのがオリヴェルだった。
6歳年上のセラフィーナには幼い娘がいたがその娘もオリヴェルにとてもよく懐いた。
オリヴェルはセラフィーナとその娘を心から愛していた。
しかし、そんな幸せな日々も突然終わる事になった。
オリヴェルの祖国の王、ヴィルヘルムがこの国にやって来たのだった。
ヴィルヘルムは歓待の為にこの国の貴賓館に呼ばれたセラフィーナに目を付けた。
そしてそのまま自分の国に連れて帰る事を望んだ。
軍事大国の国民は国家に奉仕する存在であった。
人の為に国があるのではなく国の為に人が存在する。
一般人の意志や現在の境遇などは関係ない。
セラフィーナは両国の友好のあかしとしてヴィルヘルムへ土産として贈られた。
オリヴェルとエヴァリーナがその事を知ったのは数日たっての事だ。
何時までも帰ってこないセラフィーナを案じたオリヴェルはすぐに動いた。
家主である高官を通じて事情を調べてもらったのだ。
しかし全ての事を知ったのは既にセラフィーナは王国に連れ去られていた後だった。
「そんな……セラフィーナ、もう会えないのか?」
「お母様……」
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