貴方自身が招いた結果です

富士山のぼり

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「貴方自身が招いた結果です」

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 エヴァリーナが王立学院に入学する時、アウグストは生徒会長だった。
爽やかな生徒会長も一皮むけば無類の女好きだ。
上等の女ならば必ず彼の目に留まるはずだし、その通りになった。
そしてエヴァリーナを認識してからアウグストは表向き放蕩をやめた。
全ては誇り高き完璧な令嬢、エヴァリーナを手に入れる為に。
だが実際その選択はどうだったのだ。


(俺はこの親子の茶番に付き合わされた道化だったのか?)


 今、国王たる自分は王宮の寝室で血を流して這いつくばっている。
考えたくない事だが自分は確実に近づいている。
父親を追いやった世界へ。

 父の女癖の悪さは無論知っていた。同類だからだ。
立場と力を使って臣下の嫁を奪った噂ももちろん聞いた事がある。
話を聞くところだとオリヴェルもこの親子もその一人だったのだろうか?
しかし、無論父親の全ての行状と内容を事細かく知っている訳でもない。


「……陛下は父上殿と下種な所がよく似ておられる。
この子は貴方に似ずにすむので安心ですが」


 そう云ってオリヴェルはエヴァリーナの腹に視線を落とす。
その事はアウグストにとっての残酷な真実を示していた。

 どういう事だ。何を言っている。まさか……。
痛みに朦朧とするアウグストにエヴァリーナがとどめを刺す。


「このお腹の子はは陛下と私の子です。
いずれ王座に就くのに不足はないでしょう」


 そんな馬鹿な!


 あの初夜の時の事は良く覚えている。
エヴァリーナの恥じらう顔も。その輝く様な裸体も。その乳房に触れた感触さえも。
しかし、その後が続かない。よくよく考えれば重要な所はあやふやだ。
あれはまさか妄想だったとでもいうのか?

 あの時一瞬眠気を感じた事をアウグストは思い出した。
ようやく結ばれた筈のあの日、気が付けば夜は明けていた。
寝台から身を起こしたアウグストの隣にはエヴァリーナの姿は無かった。

 その後、新妻を抱こうにも中々機会が無かったのだ。
エヴァリーナが体調を崩しただのなんだのと理由を付けられて。
そして程なくして妊娠が発覚した。


「ご安心ください。成人するまで私がエヴァとこの子を支えましょう」
恨むのなら親をお恨みするのですな」

「……なぜ俺を……俺のせいではないだろう……」


 エヴァリーナはオリヴェルに向ける眼差しと正反対の冷たい瞳でアウグストを眺めていた。
そして凍る様な冷たさでアウグストの問いに答える。


「貴方に弄ばれて命を絶った伯爵令嬢の事はお忘れですか。
彼女は私の大切な友人だったのです」


 オリヴェルの親しい友人である伯爵家の二女とエヴァリーナは交流が深かった。
2歳上の彼女は異国から来たエヴァリーナに色々と良くしてくれた。
そんな彼女が亡くなった事を聞いたのは王立学園に入学する半年前の事であった。
学生時代にエヴァリーナがしていたシンプルな髪留めは彼女の遺品なのだ。

 しかし、エヴァリーナの云う事を最早アウグストは理解できなかった。
思考がまともに回らなくなってきていたので無理も無かった。
痛みももう感じない。ただ、ひたすら眠くなってきて瞼が重い。


「これは貴方自身が招いた結果です」


 エヴァリーナの一言を遠くに聞きながらアウグストの意識は暗闇に沈んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※番外編に続きます






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