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課長の不倫は部長に告げろ
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先日の殿下との遭遇以降、家での私の食事内容が変化した。
あの時の殿下との会話が父達に多大な影響を与えた事は言うまでもない。
どういう形で伝わったかは分からないけど。
家の恥を晒したくない父と義母は私に対して食事を与えない訳にはいかない。
家族背景を説明して殺されるかもと言っておいたから毒殺の心配も今は無いだろう。
なぜなら私の身に何かあったら真っ先に父か義母か妹が疑われるからだ。
例え殿下が私の話を全て信じていようがいまいが直接王族に釘を刺せたのは大きい。
尤も本当にそのような事態が起きた場合、侯爵家内出来事だからと真相追及せずに
終わってしまうかもしれないけれど。
「お嬢様、お食事をお持ちしました。」
「残飯じゃないし、パンがカビてないわ!
嬉しい! ついにまともな人間の食事に昇格したわね。」
「お嬢様……。」
何か言いたげな侍女を無視する。
自分は命令されて仕方なくやったとでも言いたいのだろうか。
私からすればいくら雇用がかかっていたとしても虐待を黙って見ていれば同罪だ。
哀れだと思ってたなら隠して食事を持ってこいってんだ。
大体、この前の私を嘲る様な目は忘れていない。
「お食事後、旦那様と奥様が本館にお出でになる様におっしゃっておりました。」
「ふぅん、何の用かしら? 10年間食事を別にして来たのだから今更ね。
私は行かないと伝えなさい。」
なぜ私を呼び出すかは前回と同じで察しが付く。
学園で殿下に余計な事を言うなとでも釘をさしておくつもりだろう。
殿下に我が家の状況が伝わったからには私が悪い目立ち方をするのはまずいからね。
しかしそんな事は言われるまでもない。
今の行動は私自身の今後の評判にも長く拘る事だからだ。
待遇で差別されなければこれ以上貴族として誹りを受ける真似をするつもりもない。
そんな私の内心を知らない侍女はいらだった風に私に強く言う。
「お嬢様を連れて来る様に言われているんです!」
「それは貴方の都合で、私の知った事じゃないわね。」
普通なら当主が躾のなっていない娘を折檻しようが外に放り出そうが勝手だ。
私を罰したければすればいい。
だがそれは殿下の耳に入っていない場合だ。
本来、各貴族のお家事情など国単位の事にしか絡まない王族がわざわざ口出しする様な事ではない。
しかし、私は学園の生徒という立場で学生の殿下に事情を話すことが出来た。
殿下はいうまでもなく王族であり、しかも王太子であり次期国王でもある。
ただの告げ口とは訳が違う。
「長年の貧しい食事がたたって体調を崩して行けないとでも伝えなさい。
そうすれば角が立たないでしょう。」
「……。」
「私はこの家に味方はいないと分かってるから。
貴方も身の振り方を考えておく事ね。今更どうしようもないかもしれないけど。
この家の全員に殺される所だったと殿下にも伝えてあるから。」
その言葉に侍女は顔色を抱えた。
普段あまり意識しなかったのだろうが貴族と平民の立場は想像以上に違う。
不敬罪で罰せられる事も珍しくはないのだが今までその感覚がマヒしていたらしい。
使用人からしたら今の私の変貌は別人の様に思えるだろう。
確かに文字通り中身は完全に別人だけどね。
やはり殿下に話した事は良かったと思う。
貴族は自領でこそ王様ではあるが、国単位で言えば中間管理職と変わらない。
規模と財政と権勢に差異はあるものの逆に言えば全員が国の家臣でもある。
その家の事情に大っぴらに口出しは出来なくとも圧力を王族からかける事は出来る。
ましてや、今回は私の見かけが哀れにもやせ細っているから説得力もあるし。
課長の不倫は部長に告げろとはよく言ったものね。
虎の威を借る狐だが、こうでもしなければ状況を変える事は出来なかっただろう。
尤も、私は今更父や義母に気を使ってもらうつもりも必要も無いと思っている。
まともな食事が出来て平穏な生活ができればそれ以上の事は望まない。
なぜなら自立するあてが見つかり次第、こんな家は出ていくつもりだからだ。
元々平民なのだから貴族令嬢という身分など何の未練も無い。
いずれにしろこうして私の食事環境は殿下のおかげで大幅に改善されたのだった。
あの時の殿下との会話が父達に多大な影響を与えた事は言うまでもない。
どういう形で伝わったかは分からないけど。
家の恥を晒したくない父と義母は私に対して食事を与えない訳にはいかない。
家族背景を説明して殺されるかもと言っておいたから毒殺の心配も今は無いだろう。
なぜなら私の身に何かあったら真っ先に父か義母か妹が疑われるからだ。
例え殿下が私の話を全て信じていようがいまいが直接王族に釘を刺せたのは大きい。
尤も本当にそのような事態が起きた場合、侯爵家内出来事だからと真相追及せずに
終わってしまうかもしれないけれど。
「お嬢様、お食事をお持ちしました。」
「残飯じゃないし、パンがカビてないわ!
嬉しい! ついにまともな人間の食事に昇格したわね。」
「お嬢様……。」
何か言いたげな侍女を無視する。
自分は命令されて仕方なくやったとでも言いたいのだろうか。
私からすればいくら雇用がかかっていたとしても虐待を黙って見ていれば同罪だ。
哀れだと思ってたなら隠して食事を持ってこいってんだ。
大体、この前の私を嘲る様な目は忘れていない。
「お食事後、旦那様と奥様が本館にお出でになる様におっしゃっておりました。」
「ふぅん、何の用かしら? 10年間食事を別にして来たのだから今更ね。
私は行かないと伝えなさい。」
なぜ私を呼び出すかは前回と同じで察しが付く。
学園で殿下に余計な事を言うなとでも釘をさしておくつもりだろう。
殿下に我が家の状況が伝わったからには私が悪い目立ち方をするのはまずいからね。
しかしそんな事は言われるまでもない。
今の行動は私自身の今後の評判にも長く拘る事だからだ。
待遇で差別されなければこれ以上貴族として誹りを受ける真似をするつもりもない。
そんな私の内心を知らない侍女はいらだった風に私に強く言う。
「お嬢様を連れて来る様に言われているんです!」
「それは貴方の都合で、私の知った事じゃないわね。」
普通なら当主が躾のなっていない娘を折檻しようが外に放り出そうが勝手だ。
私を罰したければすればいい。
だがそれは殿下の耳に入っていない場合だ。
本来、各貴族のお家事情など国単位の事にしか絡まない王族がわざわざ口出しする様な事ではない。
しかし、私は学園の生徒という立場で学生の殿下に事情を話すことが出来た。
殿下はいうまでもなく王族であり、しかも王太子であり次期国王でもある。
ただの告げ口とは訳が違う。
「長年の貧しい食事がたたって体調を崩して行けないとでも伝えなさい。
そうすれば角が立たないでしょう。」
「……。」
「私はこの家に味方はいないと分かってるから。
貴方も身の振り方を考えておく事ね。今更どうしようもないかもしれないけど。
この家の全員に殺される所だったと殿下にも伝えてあるから。」
その言葉に侍女は顔色を抱えた。
普段あまり意識しなかったのだろうが貴族と平民の立場は想像以上に違う。
不敬罪で罰せられる事も珍しくはないのだが今までその感覚がマヒしていたらしい。
使用人からしたら今の私の変貌は別人の様に思えるだろう。
確かに文字通り中身は完全に別人だけどね。
やはり殿下に話した事は良かったと思う。
貴族は自領でこそ王様ではあるが、国単位で言えば中間管理職と変わらない。
規模と財政と権勢に差異はあるものの逆に言えば全員が国の家臣でもある。
その家の事情に大っぴらに口出しは出来なくとも圧力を王族からかける事は出来る。
ましてや、今回は私の見かけが哀れにもやせ細っているから説得力もあるし。
課長の不倫は部長に告げろとはよく言ったものね。
虎の威を借る狐だが、こうでもしなければ状況を変える事は出来なかっただろう。
尤も、私は今更父や義母に気を使ってもらうつもりも必要も無いと思っている。
まともな食事が出来て平穏な生活ができればそれ以上の事は望まない。
なぜなら自立するあてが見つかり次第、こんな家は出ていくつもりだからだ。
元々平民なのだから貴族令嬢という身分など何の未練も無い。
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