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58話 ライネスト教会、突入
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壁の中に隠されている階段の入り口を開く。この前浄化したばかりなのに、溜まった血涙石の呪力が支配していた。ユウはそこに浄化の二文字を浮かべて一気に祓う。
階段を下り、イアンは足早に被害者達の閉じ込められている部屋へ駆け付けると、扉を剣で切り開いた。
そこからは極微かな呪力が漏れてくるだけ。エレノアの浄化能力がそれだけ高いのだ。
浄化と回復を終えて待っていたエレノアが部屋の端に寄って女子供と老人に囲まれている。一方、体力があり余ってるのか、男性陣がエレノアの持っていたマジックバッグで血涙石を素手で回収しているという何とも勇ましい光景に遭遇した。
ミコ兄ちゃんだ! とそんな元気な声がユウの元へと駆けてきた。やっぱり男子だと思われていた。
「ほら、助けに来てくれたよ!」
「遅くなってごめんね」
「そんなことないよ! ルーナお姉ちゃんが、ミコ兄ちゃんなら絶対に来てくれるって言ってたもん!」
(名前、ミコだと思われてるのか)
これからルーナが地上外へ送り出してくれるから騎士達の指示に従うようにと言い聞かせた。
説明が終わってからユウはルーナに改めて開始の合図を送る。老人と女性を優先して、順番に人々が消えていく。その途中でエレノアも離脱する。
人が少なくなってからは残り組で掃除機タイム。キングスカラー家の天才児が作った吸引機能付きのマジックバッグに大量の血涙石をどんどん吸い込んでいった。
《神子様、そちらに異端審問官のコルキアスが向かいました!》
コルキアスは強力な呪術を扱う冷酷無比な男らしいが、神官なのに呪術を使うとはこれいかに。それをみんなに伝えて、ユウは扉を『修復』する。
これはユウの神スキルの他にある一般用のスキルだ。瞬く間に扉が元に戻った。イアンは鍵を使わずに開ける手段として使用したため、元に戻れば鍵が掛かる状態に戻った。
ユウはその隙にマジックバッグから魔力封印の札を取り出す。ラセツから心配だからと捕縛用の札と一緒にメチャクチャ渡された。彼がそれで安心ならと貰っておいたが、やっぱり多すぎると思う。
道中もこの二種の札は使っていない。これもエヴァンズが逃げる直前まで使用禁止しているもので、それでもこれは全員が所持している切り札――必要以上の戦闘を避けるためだ。
扉を壊して何人か入って来たら目眩ましをして、隙を作ると宣言する。彼らには目を閉じてもらう。
彼らがバタバタとやって来て、ここだな! と若い男の声がする。何度かドン、ドンと扉が軋んだ。次に魔法が使用されて連続攻撃が続いた。それでも壊れない。
「いや、頑丈過ぎでは」
「そう、ですね」
呆れたようにレイナードも言う。
数分後、ついに壊してきた。先陣切って入ってきた黒いローブの男がコルキアスだと仰々しく名乗りながら入ってきた。手下達もわざわざ彼の自己紹介が終るまで突撃を待っているご様子。ユウは一声みんなに掛けると「閃光」の文字を放った。かっと眩い光が彼等の視界を奪い取る。
その光の中、誰かが走り出す音をユウは聞き取った。
おおよそ三秒設定だった光が消えたその瞬間、既にレイナードが相手へ距離を詰めており、聖騎士の一人に斬りかかっていた。次に手近な神官を袈裟切りし、驚いている男を蹴り飛ばして横転させた。背後から切りかかられても、レイナードは振り向き様に敵の剣を弾き飛ばしてしまう。
その後にヴィンセントも続く。補助する間もな二人の剣さばきに、コルキアスとその一味の制圧は瞬く間に完了した。
◇◇◇
彼らの焦りは如実に見え始める。
次々に魔法を使い、応戦するも騎士団と魔法師団との力の差は歴然だった。
次第に神官達は追い詰められている――そんな映像が浮かぶ立体的な画面がいくつも浮かんでいた。
ここの建物内は様々な魔法を使用し、観察できる仕組みになっている。今、誰がどこで何をしているかすら手に取るように。
その中で地下から戻ってきたヴィンセントと少年を見て更なる溜め息を漏らした。
「全く、情けない連中だ」
立ち上がり、裾を引き摺りながらエヴァンズは部屋の奥にある隠し通路の戸を開く。
あの少年の光属性の魔法はライネスト神の加護を受けている証だというのに、ライネスト神の教えに背くのか。
ましてや、あの教皇はどうしてフェオルディーノの人間を許したのか――あの男ではやはり能がなかったのだ。
そう、自分こそ相応しい。
「ガブリエルの死に様がみれないのは残念だ――」
その時、どんっと衝撃が走る。
エヴァンズは振り向き様、いつの間にか侵入していたその人物がエヴァンズの背を殴り付けた。
振り向けば、そこには忌々しいあの男。昔と変わらず瞳に憎悪を宿し、妄執の炎を燃やし続けていたガブリエル・キングストンがいる。それが今、目の前にいた。
今までホールから動けていなかったこの男が、何故。
思考が停止したエヴァンズに細身の剣が腹部を切り裂いた。吹き上がる鮮血を浴び、老獪な男は顔色一つ変えない。
杖を握り直し、魔法を使おうとするも全く力が沸いてこない。エヴァンズはギリリと歯を噛み付ける。
「貴様っ! 何をし――ぶうっ!」
ガブリエルから繰り出された拳は頬を殴り飛ばすとエヴァンズは転倒。ガブリエルは素早く動けないように後ろ手に腕を締め上げ、札を張り付けた。
「これで終わりだ、エヴァンズ」
階段を下り、イアンは足早に被害者達の閉じ込められている部屋へ駆け付けると、扉を剣で切り開いた。
そこからは極微かな呪力が漏れてくるだけ。エレノアの浄化能力がそれだけ高いのだ。
浄化と回復を終えて待っていたエレノアが部屋の端に寄って女子供と老人に囲まれている。一方、体力があり余ってるのか、男性陣がエレノアの持っていたマジックバッグで血涙石を素手で回収しているという何とも勇ましい光景に遭遇した。
ミコ兄ちゃんだ! とそんな元気な声がユウの元へと駆けてきた。やっぱり男子だと思われていた。
「ほら、助けに来てくれたよ!」
「遅くなってごめんね」
「そんなことないよ! ルーナお姉ちゃんが、ミコ兄ちゃんなら絶対に来てくれるって言ってたもん!」
(名前、ミコだと思われてるのか)
これからルーナが地上外へ送り出してくれるから騎士達の指示に従うようにと言い聞かせた。
説明が終わってからユウはルーナに改めて開始の合図を送る。老人と女性を優先して、順番に人々が消えていく。その途中でエレノアも離脱する。
人が少なくなってからは残り組で掃除機タイム。キングスカラー家の天才児が作った吸引機能付きのマジックバッグに大量の血涙石をどんどん吸い込んでいった。
《神子様、そちらに異端審問官のコルキアスが向かいました!》
コルキアスは強力な呪術を扱う冷酷無比な男らしいが、神官なのに呪術を使うとはこれいかに。それをみんなに伝えて、ユウは扉を『修復』する。
これはユウの神スキルの他にある一般用のスキルだ。瞬く間に扉が元に戻った。イアンは鍵を使わずに開ける手段として使用したため、元に戻れば鍵が掛かる状態に戻った。
ユウはその隙にマジックバッグから魔力封印の札を取り出す。ラセツから心配だからと捕縛用の札と一緒にメチャクチャ渡された。彼がそれで安心ならと貰っておいたが、やっぱり多すぎると思う。
道中もこの二種の札は使っていない。これもエヴァンズが逃げる直前まで使用禁止しているもので、それでもこれは全員が所持している切り札――必要以上の戦闘を避けるためだ。
扉を壊して何人か入って来たら目眩ましをして、隙を作ると宣言する。彼らには目を閉じてもらう。
彼らがバタバタとやって来て、ここだな! と若い男の声がする。何度かドン、ドンと扉が軋んだ。次に魔法が使用されて連続攻撃が続いた。それでも壊れない。
「いや、頑丈過ぎでは」
「そう、ですね」
呆れたようにレイナードも言う。
数分後、ついに壊してきた。先陣切って入ってきた黒いローブの男がコルキアスだと仰々しく名乗りながら入ってきた。手下達もわざわざ彼の自己紹介が終るまで突撃を待っているご様子。ユウは一声みんなに掛けると「閃光」の文字を放った。かっと眩い光が彼等の視界を奪い取る。
その光の中、誰かが走り出す音をユウは聞き取った。
おおよそ三秒設定だった光が消えたその瞬間、既にレイナードが相手へ距離を詰めており、聖騎士の一人に斬りかかっていた。次に手近な神官を袈裟切りし、驚いている男を蹴り飛ばして横転させた。背後から切りかかられても、レイナードは振り向き様に敵の剣を弾き飛ばしてしまう。
その後にヴィンセントも続く。補助する間もな二人の剣さばきに、コルキアスとその一味の制圧は瞬く間に完了した。
◇◇◇
彼らの焦りは如実に見え始める。
次々に魔法を使い、応戦するも騎士団と魔法師団との力の差は歴然だった。
次第に神官達は追い詰められている――そんな映像が浮かぶ立体的な画面がいくつも浮かんでいた。
ここの建物内は様々な魔法を使用し、観察できる仕組みになっている。今、誰がどこで何をしているかすら手に取るように。
その中で地下から戻ってきたヴィンセントと少年を見て更なる溜め息を漏らした。
「全く、情けない連中だ」
立ち上がり、裾を引き摺りながらエヴァンズは部屋の奥にある隠し通路の戸を開く。
あの少年の光属性の魔法はライネスト神の加護を受けている証だというのに、ライネスト神の教えに背くのか。
ましてや、あの教皇はどうしてフェオルディーノの人間を許したのか――あの男ではやはり能がなかったのだ。
そう、自分こそ相応しい。
「ガブリエルの死に様がみれないのは残念だ――」
その時、どんっと衝撃が走る。
エヴァンズは振り向き様、いつの間にか侵入していたその人物がエヴァンズの背を殴り付けた。
振り向けば、そこには忌々しいあの男。昔と変わらず瞳に憎悪を宿し、妄執の炎を燃やし続けていたガブリエル・キングストンがいる。それが今、目の前にいた。
今までホールから動けていなかったこの男が、何故。
思考が停止したエヴァンズに細身の剣が腹部を切り裂いた。吹き上がる鮮血を浴び、老獪な男は顔色一つ変えない。
杖を握り直し、魔法を使おうとするも全く力が沸いてこない。エヴァンズはギリリと歯を噛み付ける。
「貴様っ! 何をし――ぶうっ!」
ガブリエルから繰り出された拳は頬を殴り飛ばすとエヴァンズは転倒。ガブリエルは素早く動けないように後ろ手に腕を締め上げ、札を張り付けた。
「これで終わりだ、エヴァンズ」
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