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54話 エルメラの姉御
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ダレットは、これから各地にいる同胞達を説得しに向かうと約束してくれた。
ラルフフローにも、ライネスト教会の好きにもさせる訳にはいかない。
ユウはスマートフォンと顧客名簿、それと今まで持っていたマジックバッグも渡す。これは人が入れられる違法改造されたマジックバッグであることを諸々まるっと全部伝える。
反乱軍の一部をアジュールに残し、準備を整え次第立つという。
レイナードも説得班について行こうとしたが、それも止められた。
「お前は神子様について行って、事の顛末を見届けてくれ」
「! それは……」
「俺達は急がねばならない。ここに残る仲間達に食糧確保の優先させて、町の人々に行き渡るように手配を。それに、身体強化と加速魔法を教えるのも頼む。俺は使えないからな」
肩を叩いたダレットが建物内に戻り、再びみんなに呼び掛けていく。
今回、レイナードを含む数人が証拠品について話すためにユウについてくることになった。本拠地を出てからしばらくすると、「ユウ様!」と暁が姿を表した。無事に神塔見学は終了したという報告だった。
さらにヒュースとオークまで現れた。ユウが本拠地に乗り込んでから一部始終を聞いていたらしい。
「神子様、サイコメトリーが完成しました」
「早いですね! ありがとうございます!」
「お礼ならばメルヴィン様に。ただ、彼は今、所用があって既に王都へ戻られております」
「そう言えばヒュース、リナリーの救助ならエレノアでもできますよ」
「そうなのですか?」
ならば、エレノアに頼もうかとちょっと嬉しそうなヒュースにレイナードは問い掛ける。
「リナリー様の病、治るんですか?」
「いえ、ラルフフローからの刺客に奇襲され、セオドア殿下がリナリー王妃を守るために掛けた守護の魔法が誰にも解くことができないんです」
突然エクスからそんなことを暴露されてぎょっとしたレイナード達がワタワタする。それについては後でエクスにも注意しておこう。
◇◇◇
日が沈む頃に帰ると、パタパタとやって来たフィーがどうして念話を切ったのかとちょっと怒られたが、無事で良かったと頭を撫でられた。
例の搬送ルート指示書はレイナードがすると言えばフィーは安心したように目を細めた。
「神子様、少し頼みたいことがあるんじゃが……」
ご飯を食べながらと食堂に移動するなり念話から各国の要人達がどうしても神子と話をしたいという。一番は、ユウが何の神の神子であるのかだ。
神子はたった一人でも劣勢な戦況をひっくり返す存在だ。神から自身の子供であると認められている存在だ。世界各地にいる神子は、ユウを含めて三人だけ。あのメンバーの中では皇国だけだ。
フェオルディーノ側は現状打破のためにユウがフェオルディーノの正式な神子だと答えた。
彼らの不満を取り除くための苦肉の策だったが、彼らも付喪神や幽霊を具現化するなんて能力を今まで見たことがないと少々警戒や興味がそれぞれにある。
だが一番は、マサシゲ達が神塔のスタンピードをほとんど押さえ込んだことだ。
正式な神子ならば、それだけの力があるのに何故今までラルフフローや教会に従っていたのか――つまり、国の神子ではない。だが今、訳あって助力しているだけなら各国引き抜こうという魂胆だ。
《それはつまり、僕に恩を売る形でラルフフロー王を潰すの手伝ってもらえるってことですね?》
「「ぶっふっ!!」」
次の瞬間、付喪神組からぎょっと視線を頂いた。さらに暁の要望でレイナード含む反乱軍ともう一人にも聞こえるようにしてあった。その二人がたった今噴き出したのだ。
潰すは言い過ぎかもしれない。だが、弱体化させるまではしておきたい。
マサシゲやエルメラまで集まってきたが、中身はどこまでもクズな異世界人である。
フェオルディーノにないならラルフフローをダシに使えば良い。
ラルフフローは他国に喧嘩売りまくった事実がある。彼らも黙っていないだろう。
ユウの向かいで、フィーがにこりと穏やかに、聖女然とした笑みを浮かべた。
《腕の見せ所じゃな》
《いや待てフィー、正気に戻れ。絶対に後で問題が出てくる案件だ》
《確かに、何も下準備しなければ危ないわねぇ》
同意を匂わせるエルメラに続いて、オークが楽しそうですねとワクワクなご様子だ。
《あ、あの! この話って俺達が聞いてて良いんですか?!》
《そんなの今更じゃ》
今はとにかく人手が足りない。ならば反乱軍ライネスト教会地下の人々救出を手伝ってもらえば劇薬にもなるは
ずだ。そこにイアン達被害者組も混ぜてもらって、彼らの報復戦になれば良い。
《そういえば、ここからライネスト教会本部に飛んで行ったら何時間くらいでしょうか。教皇にホープネスの件は無関係だって署名ももらいに行かないと……地下の人達も心配です。お母さんと一緒に地下に入れられていた子、大丈夫でしょうか……》
「えっ?! それ、大丈夫なのか?!」
レイナードが驚いて声を上げたのを見て、ユウは眉尻を下げる。
「本当は、ここで食べてる時間も惜しいんですよねぇ……」
「あら、それなら転移魔法で飛ぶ?」
「「「「「「ぶっ!!」」」」」」
軽い調子でエルメラが笑い掛ける。
「使えるんですか?! それならそうと教えて下さいよ!」
「あら、ユウ様が真っ先に飛び出して行ったんじゃなぁーい?」
「そうでしたね!! 頼んでもよろしいでしょうか?!」
ラルフフローにも、ライネスト教会の好きにもさせる訳にはいかない。
ユウはスマートフォンと顧客名簿、それと今まで持っていたマジックバッグも渡す。これは人が入れられる違法改造されたマジックバッグであることを諸々まるっと全部伝える。
反乱軍の一部をアジュールに残し、準備を整え次第立つという。
レイナードも説得班について行こうとしたが、それも止められた。
「お前は神子様について行って、事の顛末を見届けてくれ」
「! それは……」
「俺達は急がねばならない。ここに残る仲間達に食糧確保の優先させて、町の人々に行き渡るように手配を。それに、身体強化と加速魔法を教えるのも頼む。俺は使えないからな」
肩を叩いたダレットが建物内に戻り、再びみんなに呼び掛けていく。
今回、レイナードを含む数人が証拠品について話すためにユウについてくることになった。本拠地を出てからしばらくすると、「ユウ様!」と暁が姿を表した。無事に神塔見学は終了したという報告だった。
さらにヒュースとオークまで現れた。ユウが本拠地に乗り込んでから一部始終を聞いていたらしい。
「神子様、サイコメトリーが完成しました」
「早いですね! ありがとうございます!」
「お礼ならばメルヴィン様に。ただ、彼は今、所用があって既に王都へ戻られております」
「そう言えばヒュース、リナリーの救助ならエレノアでもできますよ」
「そうなのですか?」
ならば、エレノアに頼もうかとちょっと嬉しそうなヒュースにレイナードは問い掛ける。
「リナリー様の病、治るんですか?」
「いえ、ラルフフローからの刺客に奇襲され、セオドア殿下がリナリー王妃を守るために掛けた守護の魔法が誰にも解くことができないんです」
突然エクスからそんなことを暴露されてぎょっとしたレイナード達がワタワタする。それについては後でエクスにも注意しておこう。
◇◇◇
日が沈む頃に帰ると、パタパタとやって来たフィーがどうして念話を切ったのかとちょっと怒られたが、無事で良かったと頭を撫でられた。
例の搬送ルート指示書はレイナードがすると言えばフィーは安心したように目を細めた。
「神子様、少し頼みたいことがあるんじゃが……」
ご飯を食べながらと食堂に移動するなり念話から各国の要人達がどうしても神子と話をしたいという。一番は、ユウが何の神の神子であるのかだ。
神子はたった一人でも劣勢な戦況をひっくり返す存在だ。神から自身の子供であると認められている存在だ。世界各地にいる神子は、ユウを含めて三人だけ。あのメンバーの中では皇国だけだ。
フェオルディーノ側は現状打破のためにユウがフェオルディーノの正式な神子だと答えた。
彼らの不満を取り除くための苦肉の策だったが、彼らも付喪神や幽霊を具現化するなんて能力を今まで見たことがないと少々警戒や興味がそれぞれにある。
だが一番は、マサシゲ達が神塔のスタンピードをほとんど押さえ込んだことだ。
正式な神子ならば、それだけの力があるのに何故今までラルフフローや教会に従っていたのか――つまり、国の神子ではない。だが今、訳あって助力しているだけなら各国引き抜こうという魂胆だ。
《それはつまり、僕に恩を売る形でラルフフロー王を潰すの手伝ってもらえるってことですね?》
「「ぶっふっ!!」」
次の瞬間、付喪神組からぎょっと視線を頂いた。さらに暁の要望でレイナード含む反乱軍ともう一人にも聞こえるようにしてあった。その二人がたった今噴き出したのだ。
潰すは言い過ぎかもしれない。だが、弱体化させるまではしておきたい。
マサシゲやエルメラまで集まってきたが、中身はどこまでもクズな異世界人である。
フェオルディーノにないならラルフフローをダシに使えば良い。
ラルフフローは他国に喧嘩売りまくった事実がある。彼らも黙っていないだろう。
ユウの向かいで、フィーがにこりと穏やかに、聖女然とした笑みを浮かべた。
《腕の見せ所じゃな》
《いや待てフィー、正気に戻れ。絶対に後で問題が出てくる案件だ》
《確かに、何も下準備しなければ危ないわねぇ》
同意を匂わせるエルメラに続いて、オークが楽しそうですねとワクワクなご様子だ。
《あ、あの! この話って俺達が聞いてて良いんですか?!》
《そんなの今更じゃ》
今はとにかく人手が足りない。ならば反乱軍ライネスト教会地下の人々救出を手伝ってもらえば劇薬にもなるは
ずだ。そこにイアン達被害者組も混ぜてもらって、彼らの報復戦になれば良い。
《そういえば、ここからライネスト教会本部に飛んで行ったら何時間くらいでしょうか。教皇にホープネスの件は無関係だって署名ももらいに行かないと……地下の人達も心配です。お母さんと一緒に地下に入れられていた子、大丈夫でしょうか……》
「えっ?! それ、大丈夫なのか?!」
レイナードが驚いて声を上げたのを見て、ユウは眉尻を下げる。
「本当は、ここで食べてる時間も惜しいんですよねぇ……」
「あら、それなら転移魔法で飛ぶ?」
「「「「「「ぶっ!!」」」」」」
軽い調子でエルメラが笑い掛ける。
「使えるんですか?! それならそうと教えて下さいよ!」
「あら、ユウ様が真っ先に飛び出して行ったんじゃなぁーい?」
「そうでしたね!! 頼んでもよろしいでしょうか?!」
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