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幕間・③ 「 」の胸中
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この日、アジュールで爆音を聞いて外に出ていた人々、窓から神塔を眺めていた人々は奇跡を目撃する。
神塔が、白い光に包まれたのだ。空を貫かんばかりに伸びていた塔がまるで、地上に光を地上に注いでいるよう。
それが数分という短い時間で生まれ変わる。
天を貫かんばかりだった塔は縮む。太さを増して。
それはユウが見てきた人工物の中でも大きい。スカイタワーを悠に越えていた。だが、その気になれば上に降り立つ事は出来るであろうぐらいに低くなった。
それは雲を纏うようにして佇んでいる。スカイグレーの煉瓦を積まれ、蔓植物が壁を伝って素朴な神塔を彩っていた。
暁は言う。
「風森の神塔改めーー『ダンジョン・風祈の塔』でございます」
◇◇◇
喉が、一気に干上がる。カラカラになって、唾も飲み込むのがやっとだった。
神塔から何度か溢れた上位種族の魔物達が、一瞬でものすごい熱量の魔法に焼き尽くされるのを見た。
(一気に展開されたあの魔法は何……?)
彼の知識に、魔物を一瞬で消し飛ばすような魔法はない。
自分があまりに何も出来ない愚図だから、詳しい先生をつけてくれなかったのか? いや、先生達でもあんな魔法を知っている人なんていない!
それに何より、彼は見てしまった。
神塔が、あの黒い小動物の言う通り機能が変わった所を、見た目から激変したのを。
まさに神の所業ーー真っ白になって、空っぽの頭でも、それが出来るのは神だけだと眼前の景色こそが現実であり事実だと彼の思考力に刷り込まれる。
(こんなの、無理だ)
彼は血の気が引いていく体から脚力が抜け落ちる。
こんな奴等を相手になんて出来る訳がない。
彼は、分かってしまった。
この国を敵に回したら、ラルフフローの方が滅ぼされてしまう……ーー。
(ど、どうしよう……! はっ……はやく、早く、父上に伝えないと……!)
◇◇◇
(……勝算が、ない)
彼は光景を眺めて目を細める。
側にターゲットがいても、あのアレクサンダーと瓜二つの顔をしたエクスカリバーの使い手と同じツクモガミの男がいる。
今の状況で手を出す気はなかったが、ますます可能性が下がった。刺し違えても倒せる相手ではない。
(どうして)
どうして、こんな状況になってでもこの国の王族は盛り返してくるのか。
どれだけ最低な奴か、見てもいないのか。
(これが、神に守られる国……)
そんな昔話を幾度と聞いてきた。
この国には神様が愛した女性がいたから、何かがあると神様が守ってくれるなんて、夢物語だ。
だったら、どうして……ーー今更なんだ。
それが、もっと、もっとずっと早くだったら……!
怒りで握り拳が震える。
そうすれば、どれだけの人が死なずに済んだか。あんな形で犠牲にだってならなかった。
今更、救済の手が差し伸べられた所で、その手を取れるほど自分達の中に燃え上がった憎悪が収まる事はない……ーー!!
もうこの道を戻るつもりはない。
ただ、
変わり果てた神塔を見下ろして、ちょっと楽しそうにしている少年に視線を注ぐ。
こんなタイミングで現れた神子。
彼もまた、この国の王族を助けるために現れたのだ、そうに決まっている……!
ーー握り拳が、ゆるりと解けた。
神塔が、白い光に包まれたのだ。空を貫かんばかりに伸びていた塔がまるで、地上に光を地上に注いでいるよう。
それが数分という短い時間で生まれ変わる。
天を貫かんばかりだった塔は縮む。太さを増して。
それはユウが見てきた人工物の中でも大きい。スカイタワーを悠に越えていた。だが、その気になれば上に降り立つ事は出来るであろうぐらいに低くなった。
それは雲を纏うようにして佇んでいる。スカイグレーの煉瓦を積まれ、蔓植物が壁を伝って素朴な神塔を彩っていた。
暁は言う。
「風森の神塔改めーー『ダンジョン・風祈の塔』でございます」
◇◇◇
喉が、一気に干上がる。カラカラになって、唾も飲み込むのがやっとだった。
神塔から何度か溢れた上位種族の魔物達が、一瞬でものすごい熱量の魔法に焼き尽くされるのを見た。
(一気に展開されたあの魔法は何……?)
彼の知識に、魔物を一瞬で消し飛ばすような魔法はない。
自分があまりに何も出来ない愚図だから、詳しい先生をつけてくれなかったのか? いや、先生達でもあんな魔法を知っている人なんていない!
それに何より、彼は見てしまった。
神塔が、あの黒い小動物の言う通り機能が変わった所を、見た目から激変したのを。
まさに神の所業ーー真っ白になって、空っぽの頭でも、それが出来るのは神だけだと眼前の景色こそが現実であり事実だと彼の思考力に刷り込まれる。
(こんなの、無理だ)
彼は血の気が引いていく体から脚力が抜け落ちる。
こんな奴等を相手になんて出来る訳がない。
彼は、分かってしまった。
この国を敵に回したら、ラルフフローの方が滅ぼされてしまう……ーー。
(ど、どうしよう……! はっ……はやく、早く、父上に伝えないと……!)
◇◇◇
(……勝算が、ない)
彼は光景を眺めて目を細める。
側にターゲットがいても、あのアレクサンダーと瓜二つの顔をしたエクスカリバーの使い手と同じツクモガミの男がいる。
今の状況で手を出す気はなかったが、ますます可能性が下がった。刺し違えても倒せる相手ではない。
(どうして)
どうして、こんな状況になってでもこの国の王族は盛り返してくるのか。
どれだけ最低な奴か、見てもいないのか。
(これが、神に守られる国……)
そんな昔話を幾度と聞いてきた。
この国には神様が愛した女性がいたから、何かがあると神様が守ってくれるなんて、夢物語だ。
だったら、どうして……ーー今更なんだ。
それが、もっと、もっとずっと早くだったら……!
怒りで握り拳が震える。
そうすれば、どれだけの人が死なずに済んだか。あんな形で犠牲にだってならなかった。
今更、救済の手が差し伸べられた所で、その手を取れるほど自分達の中に燃え上がった憎悪が収まる事はない……ーー!!
もうこの道を戻るつもりはない。
ただ、
変わり果てた神塔を見下ろして、ちょっと楽しそうにしている少年に視線を注ぐ。
こんなタイミングで現れた神子。
彼もまた、この国の王族を助けるために現れたのだ、そうに決まっている……!
ーー握り拳が、ゆるりと解けた。
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