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45話 改新『神塔システム』・上

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 何故こんな事になったのかユウはソファーの真ん中でカチコチしていた。ユウは右にヒュース、左にナイジェル。他のメンツは皆どっか行ったーーと怒りたいが、実際はラセツとエルメラのペアにマサシゲとアスクレピオスが同行し、先発隊としてドロップ品がちゃんと落ちているか確認と、スマホの動画でドロップした所も動画に収めてきてほしいと暁は送り出してしまった。

 残念ながらフィーにはハグは強制終了してもらって、今は戻ってきたロイ達と詳しい話を聞いている。

 応接間には重鎮が揃っていた。
 ガンブルグ竜王国の教育省長官ルーファス・ツェーリヒ。
 幻獣国家ユグドラシルにおいて次期宰相のライオンの獣人、レオニード・グレナガン。
 エルフの里・守人のレシティア。
 有翼人種のラファエル・ヤハウェー。

「アトランティス海王国現王、ラプソディアナ・アトランティスです。この度は娘と、その友人達を救ってくださり、真にありがとうございます」

 ラプソディアナが話し始めた時からヒュースが当たり障りのない返答を念話に詰め込んでくれた。すごく助かる。

「あれから、セレナーディア様はどうですか?」
「私は娘を連れて来てくれたハッテルミーさんの提案ですぐこちらへ来てしまったので様子はちゃんと見ていないのですが……今頃、絨毯に乗って飛んで来た事を皆に話してるでしょう。あの子は、陸を見に行くのが楽しそうでしたから」

 そして、拉致監禁被害者だったエヴァンハルト帝国第二王女、ノーラ・ジル・エヴァンハルト。さっき扉から入ってきたレジナルドである。
 そして、おどおどした十代後半の若い男性……ーー。

「ト、トリス・ラルフフロー……第七王子、です」

 ユウの写真画像には、彼の額にラセツと似た角が生えていた。ラルフフローが被害国であると印象付けるには大事な偽造だったのだろう。だが、集めてきた情報は寧ろラルフフローの悪行ばかり。トリスには監視の眼も必要という事だ。

「私はレイナードと申します。アジュールで自警団をやっている者です」

 この重鎮揃いの中でハキハキと返す。ワインレッドの髪の男性だ。ロイの友人だという。

 こっちに来る前、アジュールから応援要請が多いという話をしていたが、上質な素材を強盗する事件が多発していたそうだ。ここに配置している騎士達が取り合ってくれず、更には要請も届かず不信感を募らせた一般人達の有志で結成された団体だ。

《ユウ様、不正を働いていたカッヘルのネクタイピンが、『オードルとの裏取引に成功した』と言っていたのは覚えていらっしゃいますか?》
《は、はい》

 アジュールにある商業ギルドがある。そこがオードルという子爵がギルド長であり、その暴行事件の首謀者だったのだ。

 素材を安値で買い叩き、アジュール内の商売人達に通常よりも高値で売り付ける。それは通常の価格より何倍も高かった。その上、他の所から仕入れると権力を使って圧力を掛け、時には店を潰したそうだ。

 そんな中、その値段では売れないと当然の理由で断った狩人に、雇った人間で襲わせて窃盗を働いた。陳情にも上がっていた暴行事件というのがこの盗難事件の事を指していたがーー。

 肝心の騎士達は金で買収されていたのでこの事件調査はしていないし、事実確認も犯人探しもしなかった。治癒師の要請ならまだしも騎士の要請まで来るわけである。

 ただ、フェオルディーノは万年人材不足……というか経済的に余裕がなく、三つの騎士団を保有するのがやっとで、後は教会から聖騎士を借りたり、新しく出来たアジュールの騎士にはラルフフローから派遣してもらっている状態だった。

 つまり、鎧はこの国のものでもラルフフローの騎士達が不正を働いたのだ。当然、そんな奴らの所にトリスを預けられる訳がなかい。ちなみにもう既に全員仲良く牢屋へ行っている。

 さて、ようやく暁から話が始まった。
 夢のお告げで各国の要人や領主の一部にも連絡する予定だが、事前に情報を渡しておいても良いだろうという考えだ。

 ドロップ品や宝箱に関してはさっき言ったことをさらりと説明して、

「これから、スタンピードが迫っていない神塔から順次、階層移動がしやすいように簡略化します」

 今までは魔物を外に出さないための構造だったのを、これからは人が出入りしやすいよう、階層の構造を簡略化する。実は神塔の壁には魔物用に方向感覚を狂わせる機能も付いていたが、それが逆に人を外に出られなくしてしまっていた。もちろん、これも外す。

 つまり、フロアの迷路を撤去してしまうためちょっと放っておくとモンスターが外に出てきやすくなってしまう。

「そのため、皆さんには魔物をいただきます。竜王国と幻獣国家は定期的に入っていらっしゃいますからスタンピードが定期的に発生する事はなかったでしょう」
「その通りですね」とルーファス。
「あぁ」とレオニードは首を縦に降った。

 その二つの国はライネスト教のような世界創造の六柱神を祀っておらず、国独自の宗教もあって神塔に入る事に否定的ではない。弱肉強食が濃厚に根付いている両国は、寧ろレベルを上げるために、腕を磨くために入るという目的で人がよく出入りしていた。
 結果的に両国はモンスターの間引きをしていた事になる。

 問題はそれ以外の国――世界創造六柱神をそれぞれ信仰している国だ。

「これから我々は夢のお告げを利用して方々ほうぼうに呼び掛けます。それで宗教家が騒がしくなるのは間違いないでしょう。ただ、ライネスト教は大丈夫です。これから黙らせますので」
「「「「「「「……」」」」」」」
「此度のお告げでは、宝物があるとは発言しませんが私達は誰でも入って良い場所である事を名言します。これはどんな立場であろうとも、もちろん奴隷という枠組みに嵌められている方々にも平等に、全ての人々にです。ですが、利益が見込めると判明した時、各々の対応が重大な問題が起きます」
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