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19話 (ユウには)衝撃的事実
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オン・ザ・空飛ぶ絨毯。
フィーの話を横になりながらユウは聞いていた。
血涙石は確かに危険だが、最終段階に入る前ーー生気を一気に奪い取れるまでに衰弱するまでーーに当人から離すだけで良い。
後は生命力に任せれば呪力は消える。別に騒ぎ立てるほどの事ではなかったとあっけらかんと言った。もちろん病弱や持病持ちと関係して個人差はあるので一概にそうとは言えないが回復する。
しかし、そんなアッサリした呪いなのに城中上から下までの大騒ぎになったのは、ナイジェルに広がっていた黒い模様のせいだ。血涙石の呪力にその効果がないのである。
そうなると当然、あの模様自体は血涙石の存在を隠すためのカモフラージュだろうとーー。
《事前に推理しておったのじゃ。暇なのでな!》
「ひま」
《えぇ。私達はあそこに立ってるだけだから、ずっと暇なのよぉ》
《だから噂話とか聞いてるの楽しいんだよなぁ~!》
付喪神達にとって人間達の起こす事件は娯楽である。推理小説のような一幕である。その長い年月に現存する彼等の暇を潰すだけのエンタメなのである。
フィーは王城敷地内のどこでも見渡せるため、サラが遠征中の第一騎士団の宿舎に入って行ったのも知ってるし、どんな方法で仕込んだのかも知っていた。
《あぁでも、数十年前に建設された王城付属教会の中はサッパリじゃな。入れもしなかったしのう。あの中はどうなってるんじゃろうなぁ!》
だがそれでも、ナイジェルの部屋に透明化の魔法で夜中に侵入したサラがすり替えて行ったのも知っている。
ちなみに、すでにガブリエルには通達済みである。
《偽者ですよね? なにゆえ? なにゆえ話したの?》
《そりゃあ、ガブリエルの偽者がどんな動きをするかを観察するためじゃ☆》
《おい、噴き出す所だったろ》
ユウは顔を覆った。犯人が可哀想。
フィーは特に事件が起これば犯人がこんな事件を起こしたと城中の付喪神達に出題し、数日後に犯人と犯行トリックをご披露するのが楽しみである。そして彼等も話を聞いて楽しむのである。
何なら一時期、アンポンタンな王様が冤罪を立て続けに起こした事件が何件目で冤罪だと発覚するか賭けて遊んでいた。ちなみに十七件目で発覚した。
勝者は宝物庫にいた腕輪だった。
控えめに言って酷い。
《スゲーそっち楽しそうだな》
《楽しいぞ!》
そしてマサシゲのご希望でずっと念話で会話している。ユウは時々あまりの衝撃発言に口から出るが、出来るだけ念話を使っている。
《あの、カモフラの話はお伺いしても?》
魔法と違い、呪いに模様を付け足すのは比較的簡単だ。
奴隷制度が盛んだった頃、奴隷である事を一目瞭然にするために隷属の呪いに隷属紋は後付けで製作されていた。各国ごとに隷属紋に違いがあったほどだ。
だが、悪どい人間は利用価値があれば犯罪に手を付けるもの。他国の隷属紋を使用して更に他の国で騒動を引き起こすなど、奴隷を使った犯罪が横行して世界大戦を引き起こしたため、今使用されている模様に統一したそうだ。そして今は隷属の呪いにも自動的に隷属紋が記されるようになっている。
廃れているため書物にその事実がちっぽけにしか記されていないが、効果のない模様を浮かばせるぐらいなら今の呪術師でも簡単に呪いとして組み込めるし、サラにもそれなりの知識があれば呪物を利用して模様が描かれるように細工できるものなのだ。
《魔法は魔法陣を介したりしないと使えない人間が多いけど、呪いは毛髪や血液を使えば誰でも使えるからねぇ~♪ そもそも、人間にはみんな魔力があるから別に貴族だ王族だなんだで差なんてないのよね》
使わないでほしい王侯貴族がそうやって喧伝してるだけで、実際そうだと信じ込んでいる貴族は多い。既にその事実すら、もう誰も知らないかもしれない。
だから魔力の強い子供が生まれてくると、貴族の落とし種だと平民達がその母子を蔑む傾向にある。
《そんな風習は失くしてもらいたいんだがの。第一アレクサンダーなぞ名もなき村の平凡な村人じゃぞ? アリアロッド様は聖女じゃが、元は一介のシスターじゃぞ》
《オウカ様は王子だったけどな》
「へ?」
《あぁ、冤罪で追放されたって話じゃな? いやぁ~~! あの後、婚約者だったヒマリ様を国から取り戻した話じゃろう?! 妾にもその時体があればなぁ~~!》
「あ……」
ユウは起き上がる。嫌な気配が肌を撫でてきたからだ。這いながら進行方向へと這って行く。
紫のオーラの塊みたいなものが見える。ヒリついてくる肌からも、重篤な被害者達がたくさん集まっているからだろう。
「……」
《そうだ。フィー様はすり替えられている物が分かるんですよね? それなら……》
フィーの話を横になりながらユウは聞いていた。
血涙石は確かに危険だが、最終段階に入る前ーー生気を一気に奪い取れるまでに衰弱するまでーーに当人から離すだけで良い。
後は生命力に任せれば呪力は消える。別に騒ぎ立てるほどの事ではなかったとあっけらかんと言った。もちろん病弱や持病持ちと関係して個人差はあるので一概にそうとは言えないが回復する。
しかし、そんなアッサリした呪いなのに城中上から下までの大騒ぎになったのは、ナイジェルに広がっていた黒い模様のせいだ。血涙石の呪力にその効果がないのである。
そうなると当然、あの模様自体は血涙石の存在を隠すためのカモフラージュだろうとーー。
《事前に推理しておったのじゃ。暇なのでな!》
「ひま」
《えぇ。私達はあそこに立ってるだけだから、ずっと暇なのよぉ》
《だから噂話とか聞いてるの楽しいんだよなぁ~!》
付喪神達にとって人間達の起こす事件は娯楽である。推理小説のような一幕である。その長い年月に現存する彼等の暇を潰すだけのエンタメなのである。
フィーは王城敷地内のどこでも見渡せるため、サラが遠征中の第一騎士団の宿舎に入って行ったのも知ってるし、どんな方法で仕込んだのかも知っていた。
《あぁでも、数十年前に建設された王城付属教会の中はサッパリじゃな。入れもしなかったしのう。あの中はどうなってるんじゃろうなぁ!》
だがそれでも、ナイジェルの部屋に透明化の魔法で夜中に侵入したサラがすり替えて行ったのも知っている。
ちなみに、すでにガブリエルには通達済みである。
《偽者ですよね? なにゆえ? なにゆえ話したの?》
《そりゃあ、ガブリエルの偽者がどんな動きをするかを観察するためじゃ☆》
《おい、噴き出す所だったろ》
ユウは顔を覆った。犯人が可哀想。
フィーは特に事件が起これば犯人がこんな事件を起こしたと城中の付喪神達に出題し、数日後に犯人と犯行トリックをご披露するのが楽しみである。そして彼等も話を聞いて楽しむのである。
何なら一時期、アンポンタンな王様が冤罪を立て続けに起こした事件が何件目で冤罪だと発覚するか賭けて遊んでいた。ちなみに十七件目で発覚した。
勝者は宝物庫にいた腕輪だった。
控えめに言って酷い。
《スゲーそっち楽しそうだな》
《楽しいぞ!》
そしてマサシゲのご希望でずっと念話で会話している。ユウは時々あまりの衝撃発言に口から出るが、出来るだけ念話を使っている。
《あの、カモフラの話はお伺いしても?》
魔法と違い、呪いに模様を付け足すのは比較的簡単だ。
奴隷制度が盛んだった頃、奴隷である事を一目瞭然にするために隷属の呪いに隷属紋は後付けで製作されていた。各国ごとに隷属紋に違いがあったほどだ。
だが、悪どい人間は利用価値があれば犯罪に手を付けるもの。他国の隷属紋を使用して更に他の国で騒動を引き起こすなど、奴隷を使った犯罪が横行して世界大戦を引き起こしたため、今使用されている模様に統一したそうだ。そして今は隷属の呪いにも自動的に隷属紋が記されるようになっている。
廃れているため書物にその事実がちっぽけにしか記されていないが、効果のない模様を浮かばせるぐらいなら今の呪術師でも簡単に呪いとして組み込めるし、サラにもそれなりの知識があれば呪物を利用して模様が描かれるように細工できるものなのだ。
《魔法は魔法陣を介したりしないと使えない人間が多いけど、呪いは毛髪や血液を使えば誰でも使えるからねぇ~♪ そもそも、人間にはみんな魔力があるから別に貴族だ王族だなんだで差なんてないのよね》
使わないでほしい王侯貴族がそうやって喧伝してるだけで、実際そうだと信じ込んでいる貴族は多い。既にその事実すら、もう誰も知らないかもしれない。
だから魔力の強い子供が生まれてくると、貴族の落とし種だと平民達がその母子を蔑む傾向にある。
《そんな風習は失くしてもらいたいんだがの。第一アレクサンダーなぞ名もなき村の平凡な村人じゃぞ? アリアロッド様は聖女じゃが、元は一介のシスターじゃぞ》
《オウカ様は王子だったけどな》
「へ?」
《あぁ、冤罪で追放されたって話じゃな? いやぁ~~! あの後、婚約者だったヒマリ様を国から取り戻した話じゃろう?! 妾にもその時体があればなぁ~~!》
「あ……」
ユウは起き上がる。嫌な気配が肌を撫でてきたからだ。這いながら進行方向へと這って行く。
紫のオーラの塊みたいなものが見える。ヒリついてくる肌からも、重篤な被害者達がたくさん集まっているからだろう。
「……」
《そうだ。フィー様はすり替えられている物が分かるんですよね? それなら……》
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