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11話  護衛隊

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「で? これはどうい事かのう?」

 亜人や人間が入っているマジックバッグの表示画面を見せたまま、フィーはニコリと微笑んでいた。ただし、それが誰から見ても貼り付けているだけということは明らかだった。ついでに今、マサシゲに念話でこの事実を伝えている最中である。

 それはそのとゴニョゴニョして視線をそろーっと横に逸らす御者・ブレンディ。

「これは、どういう事、かのう?」

 圧を強めで言うと土下座した御者・ブレンディは「ハヒーッ!!」ひれ伏したが、フィーは頭をわし掴んだ。青筋が長手袋とパフスリーブの隙間から浮かんだ。

 フェオルディーノ聖王国では奴隷もそれに関連する売買も禁止である。当然、奴隷の運搬も見つかれば即刻逮捕ものである。
 しかし王都やその他関所では、荷馬車の中身は調べてもマジックバッグの中まではいちいち調べていない。マジックバッグの容量限界まで突っ込んでいる者もいるから検閲に時間が掛かると、マジックバッグの申告さえされれば通過させる。

《何年も前からやられてる可能性があるな》
《あぁ。今まで王室どころか城にさえ情報が上がってきた事がない。全く、やってくれるわ》

 フィーは青い瞳を細めてブレンディを冷ややかに見下ろす。

「答えないようなら貴様を殺してから調べる。貴様の身内も捜査対象として家に騎士を向かわせるぞ」
「す! すみませんでしたぁああーー! これには海より深い訳がぁああーー!!」
「吐けと言っておる」
「はい! 吐きます! 吐きますぅううーー!!」

 フィーの変貌具合を少し離れた所で見ていたエレノアとライラがカタカタ震えていた。

 ◇◇◇

 ペガサスが急に止まった。
 ユウが見下ろすと、たくさんのウィンドウルフに囲まれている五つの人影が見えた。皆が背を預けている。倒れている人もいるから、合わせて六人だ。

《緊急連絡、緊急連絡です。緑の狼達に襲われている集団あり。荷馬車の護衛に当たっていたと思われます。編成は六人。全員負傷している模様。繰り返しますーー》

 念話で連絡を終えて、ユウは飛び降りようと跨がっている足を持ち上げようとしたらペガサスが降下を始めた。

《クロード、神子様、気を付けろ。ウィンドウルフ共、多分指揮を出してる上異種がいる》
《畏まりました》
《りょー》
《神子様、もう少し真面目にですねーー》

 あっはっはっはっ! と、ハッテルミーが念話で爆笑している。

《ウィンドウルフの弱点は?》
《風属性のモンスターは火属性に弱いわよ》
《霧になって消えてるから、神塔から出てきた魔物だ。光属性も効く》
《分かりました、ありがとうございます!》

「ペガサスさん、行きましょう」とユウが声を掛けると、天馬は嘶いて降下を始めた。

 ◇◇◇

 サイラスは唇を噛んだ。
 ブレンディと荷馬車を逃がす事に成功したが、護衛隊は大量のウィンドウルフに囲まれて苦戦を強いられていた。

 回復と魔法攻撃を兼任していたダスティンは最後まで回復に集中して魔力切れで倒れている。誰よりも自分達に協力してくれて、一番無理をさせた彼を死なせるわけにはいかないと囲んで戦ってきた、が。

「もう無理だ、サイラス!!」
「くっ……!」

 事実を告げる仲間にサイラスは歯噛みする。
 かくなる上は、仲間だけでも逃がす。がちりと剣を握り締めたその時、ダスティンの小さな呻き声が聞こえた。彼の擦れた声で呟く。

「……にげ……ろ」
「そんな事が出来るか! 諦めるな!!」

 頭上から、嘶きが聞こえた。
 すぐに水の弾がドォウッ! とウィンドウルフを数匹纏めて吹き飛ばした。その攻撃は土を抉っている。それが、一つ、二つ、三つ、サイラス達に飛び掛っていたウィンドウルフの体を吹き飛ばして、霧にしていく。

「ペガサスだ! ブレンディさんのペガサスだ!!」

 一人が声を上げた隙を狙うように飛び掛ったウィンドウルフ。しかし、ペガサスの水弾で穴を開けられて霧消した。

 ◇◇◇

 ペガサスがウィンドウルフ達に水弾を放っている隙に、ユウは掌を上向ける。
 白い光がぽうっと点る。それからダイヤ模様が十六方向に生える。RPGゲームで光属性の魔法使いキャラがある魔法を使う時、手元に現れるエフェクト(?)だ。

 ユウは再び砲弾のような水弾を放つペガサスから飛び降り、チャレンジ。一人が倒れ、五人体制で守り合っている彼らの元に降り立つ。

「えっ?!」「子供!?」
「あっ。すみません、失礼します」

 あのエフェクトを真上へと浮上させる。そうすれば、ダイヤが高速回転を始め、光が強く輝く太陽のように輝いた。ゲームでは外側から見るしか出来なかったが、実際はこんな感じなんだなぁと感心しながら、声を張り上げる。

「セイクリッド・ランサー!」

 ユウの一声の後、浮かび上がった白い玉から、白い閃光がレーザービームのようにズドドドドドドドドドド! と降り注いだ。白光のシャワーがウィンドウルフ達を貫いて霧に変え、紫色が白く染まってから消えていく。頭、胴体、もろもろを容赦なくぶち抜いていく。

 セイクリッド・ランサー。
 この攻撃は二段攻撃になっていて、一段目の攻撃中だ。ランダムに照射されるレーザービームでコンボを稼ぎ、その後に効果範囲線内に無数の光の槍が降り注いで、ボス戦では千以上のコンボ数を叩き出す。SP消費は激しいが一回の攻撃でコンボ数が稼げるお気に入りの魔法攻撃である。

 が、紅一点の女性・ジェシーは顔を真っ青にした。

「ヘンリーぃい! 逃げてぇえええーー!!」
「ヘンリー?」
「私の相棒ですぅーー!!」

「あそこの! 白い犬です!」と叫んで指を差していると、危機を感じ取った白い小型犬は脱兎の如く林の奥へと逃げた。

「あの子怪我してるのに!」
「それは、すみません」
「な、なんだこの光属性魔法は……!」
「神の光だ……」
「!」

 ちょっと張り切り過ぎてしまった。変な理由で神子だとバレてしまうかと思った。
 未だに熱を放ちながらビームが地面を抉りながらウィンドウルフを串刺しにしていると、今度は上空に光の槍が無数作り上げられる。

「あっ」
「何ですか?!」
「そういえばこの魔法、次弾に無数の光の槍が降り注ぐんですけど、広域殲滅型なんですよね。ヘンリー君、大丈夫でしょうか?」
「へんりぃいいいいい~~~~~~!!」
「お、落ち着けジェシー!」

 鎧も剣もボロボロの男性・サイラスが、ヘンリーなら大丈夫だと必死にジェシーを宥める。
 ユウはまたすみませんと謝罪した。
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