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2話 鑑定

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 祐希を見据えるなり神官は申し訳なさそうな表情を貼り付けて「お目覚めになられて良かった!」から、ニクソン・イーグルだと名乗ると、後から芝居がかった口調で語り始めた。

 十数分かけた話を要約すると魔神なる者が聖王国を滅ぼそうと度々攻め込んで民達は餓えて大変だから勇者に力を借りるべく召喚したという事だった。

 が、

『魔神は出現しておりません。ご安心を』と柱時計。

『飢饉になってるのか? それなら、贅肉になる分を分けてったらどうだ?』と悪気のない顔で一番辛辣なハッテルミー。

『酒に飲んだくれて笑い転げている兵士がお疲れというものなの? まぁ、騎士達はいつでも『お疲れ』ねぇ?』と皮肉たっぷりのデスク。

『ユウキ様、ニクソンの言っている事は全て虚偽じゃ! 信じるでないぞ!』お城様が極めつけである。

 さすがに嘘を宣っているそばから全否定されている事なぞ夢にも思っていないニクソンは『ステータス』という個人の能力を確認させてほしいとの事である。

 ニクソンの隣にやって来た金髪碧眼の青年はこの国の第一王子のクリス・フェオルディーノと名乗って頭を下げた。お城様と似た神と瞳の色に、豪奢な洋服は王族らしく気品がある。胸についている金色のバッジは王家の紋章だろう。
 が、その様子から国が困窮しているという事実はまるで感じられなかった。

 金ピカの鎧を纏う男が持っていた箱から取り出された水晶を取り出し、祐希へと差し出した。これがステータスを見るのに使う魔道具だ。

 どうか我々に力を貸して頂きたいとしおらしく頭を下げてくるクリスとブタゴリラ。

 お城様が、城からの脱走は手伝うからそれに手を乗せて今は不審がられないようクリス達の指示に従うように言ってくれた。

「ご心配なさらず! 体に悪いものではありませんので!」と黒狐の言葉に背を押され、ひんやりとした滑らかな肌触りの水晶に手を乗せて数秒後、水晶玉の内部が発光して眩い光が浮かび上がった。

 それは、光り輝く黄金色のスクリーンーー三十路を越えたオバサンにはやたら眩しい画面だった。

ーーーーーーーーーー

名前:********
種族:********
職業:顕現師
スキル:********

 ***表示できません***

ーーーーーーーーーー

『こ、黄金色のステータス画面?!』

 驚愕を露にするお城様に続き、柱時計達も続いて興奮をハッキリと見せた。

『これはこれは、初めて見ました。ユウキ様は神子様でいらしたのですね』
『これが噂に聞く神子様のステータス画面かぁ! ハハッ! まるで黄金みたいだなぁ!』
(巫女様?)
「ステータスがない、だと?」

 ニクソンは驚愕しを露に声を荒げた。
 確かに彼の言う通り、ステータス目が痛いぐらいに黄金色の輝きを放つ画面の中に白抜きの文字は伏字ばかりで何も記載されていない。

 クリス達がざわめいた。お城様達とは対照的な全く違った反応である。

「はぁ。まさか、家畜以下だったとは」
『あ"ぁん?! なんじゃとこのアッッッホンダラアアァーーッ!!』

 クリスは盛大に溜息を零すと、先程のまでの態度とは一変して嘲笑する。だが、それ以上の侮蔑と仰天を眼力に乗せたお城様がクリスをギロリと睨み付けた。美しい顔立ちが般若に変わっている。

「ふんっ。死にかけているから助けてやったというのに、ステータスに記載もないクズ以下の無能だったとは、全く、助けて大損だ」
『何を言っておるのじゃ、こぉおんの馬鹿モンがぁあ!! 貴様ァそんな事も知らん程のブァカじゃったのか!?』
「いえ、ユウキ様のステータス画面がまっさらなのはーー」
「言い訳なぞ見苦しいぞ、それでも男か。使えないゴミはゴミなんだよ。貴様のような使えない奴はこの城になど不要。とっとと出て行け」
(女なんだよなぁ)
『何じゃと、この王族の恥さらしがぁ!! 黄金色のステータス画面は神ご自身が己の御子と定めた聖人なんぞより上位存在じゃぞ!? 次期国王の癖にそんな事も知らんのか、このアッパラパーーァッ!!』
『全く、馬鹿が丸出しね。そのステータス計測魔道具、安物でしょう。神子様のステータスは親神しんみ直々のプロテクトで見られないようにされてる事も知らないの? この程度で陣頭指揮を執ろうなんて、返り討ちが目に見えるわねぇ?』
(すごく腹立つ事を言われてるのに、情報量が多くてクリスが馬鹿だって事しか分からない……)
「全くもってクリス王太子の言う通りでございます!」
『大司祭の貴様まで言うんかぁああっ!! 国を滅ぼしたいのか?! お前等がほしいのは国を運営する権力じゃろうがぁあああああ!!』
『仕方ないだろー。だってコイツ、神じゃなくて金に仕えてるからな!』

「だから、神子様も落ち込むなよ」とハッテルミーのフォローがバッチリ過ぎて何もかもがどうでも良くなった。ついでに神子様を巫女様に誤認したままどうでも良くなった。

 クリスは「後は任せた」と吐き捨て出口へ向かって歩き出した。
 お淑やかそうな尊顔に青筋をマスクメロンの如くビッキビキに浮かばせたお城様は咆哮のような怒声を上げた。もちろん彼女の話など聞こえていないクリスは部屋をぱたむと出て行った。

『こぉおんののおぉーー!! バッッッッカモンがぁああああああああ!!』
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