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16 清掃員のオバサンと行く、ダンジョン

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「明日、君を連れて行きたい場所があるから今日はもう寝なさい。あんな事があった後では余計に疲れただろう」

 ベッドを使っていいと言われた。正直、女性が寝ているベッドに寝るのは躊躇われるのだが、清潔に保つ魔法で除菌率百パーセントだから心配ないと言われた。ちょっとそういうことじゃなかったんだけど、明日の朝ご飯も作るのを頼まれて、俺は二つ返事で了承した。

 清掃員さんが仕事に戻った後、俺はまた清掃員さんの華麗な戦闘が見られる動画に熱を上げて鑑賞した。

 ◇

 翌朝、情けないことにベッドで目を覚ました。パソコン前で寝落ちしたらしい。清掃員さんにベッドに押し込まれた。もちろん、清掃員さんはソファーで寝たそうだ。

 俺のスキルで咲かせた曼珠沙華は、翌日と花瓶の中で誇らしげに咲いてた。朝食も、食卓テーブルにあるだけで華やかだ。

 過去にスキルで咲かせた花は、限度を超えると以前咲かせていた花が消えてしまうそうだ。ただ、実際のところ何日スキルが持つかは分かっていない。

 植物の種類によってまちまちなのか、それとも一定なのか……植物系スキルは、希少だからあまり情報が少ないんだって。俺も自分のスキルが希少なんて初めて知った。

 清掃員さんに守ってもらいながら、スキルで足止めの練習を実践。進むこと五十四階層の階段。五十五階層へ降りた時、視界に光が差し込んだ。

 優しい風が吹き抜ける。それに撫でられてた草木が揺れた。ダンジョンの中とは思えない、自然の中のひんやりと澄み渡った空気……。

 今まで岩肌ばかりで殺風景だったダンジョンとは、別世界に迷い込んでしまった気分だ。

 当たりを見回す。
 清掃員さんは、いない。

 ……本当に、迷い込んだみたいだ。

 どうしよう。
 そう呟いた時、くすくすと小さい女の子の笑い声が聞こえてきた。
 辺を見回すけど、子供の姿はない。

「こっちよ」

 耳元で、確かに女児の声が聞こえて振り返った。
 でも、誰もいない。

 だけれど、そこからだった。

「こっちよ」「こっちだってば」「いいや、こっちこっち!」

 少年少女の声が、俺を楽しげに呼んでいる。
 間違いない……ここには、何かいる。しかも俺は遊ばれてる。

 クスクス、くすくすとあちこちで笑い声が聞こえるけれど、悪意は感じられない。寧ろ、無邪気な悪戯心と好奇心が向けられている。

 こんな温かい陽だまりの中、姿なきたくさんの子供たちの楽しげな声に……――俺は不気味どころか、不思議なほどに安堵感を覚えた。
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