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6 清掃員のオバサンと一緒
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……ちょっと待って。
「何で階層を降りてるんですか?」
「私の仮住まいがこの先のセーフティーエリアにあるからだ」
俺の目は点。
いや、待って。仮拠点がセーフティーエリアにあるって、どういうこと? 次のセーフティーエリア、四十階層の前の三十九層ですよ? この清掃員さん、マジで何者なの? どこの実況者もまだ未踏破のセーフティーエリアに仮拠点構えてるって?
意味が分からない俺でも、途中で遭遇したワイルドボアを素手で仕留めた清掃員さんにそれ以上のツッコミはしなかった。俺みたいな下等生物がこの清掃員さんに物申す事自体がおこがましいと、視覚から脳味噌をぶん殴られるように叩き込まれたからだ。
久留米より強い。清掃員さんからすれば、俺達のやってる攻略なんてお遊びみたいなものに感じるだろうな。
「佐藤桐也」
「ひゃい」
「はい、だ。しっかり返事をしろ」
「すみません、ビックリして……」
清掃員さんは息の根が止まっていることを確認して、くるりと振り返る。
「このモンスターにスキルを使ってみろ」
「え?」
「このモンスターにスキルを使ってみろ」
「いや、どうやって?!」
「貴様のスキルの基本的な使い方があるだろう。使ってみろ」
「はい」
ていうか、スキルを使えって……――動物の死骸に、花を咲かせろってことか?
それは、
「ボサッとするな」
「分かりました」
任意の場所に、意識を向けるだけ。
ぱっと現れるのではない。まず緑色の茎が伸びて、赤く、血を吸ったような花が咲く……。
弔い花のように、ワイルドボア横腹に生えた彼岸花。
――気持ち悪いのよ、お前のスキルは!
こんな様を見ていると久留米の言葉が久留米の声で反響する。彼女の言う通りだ。死体から花が生える花なんて……気持ちが悪い。
「ぼさっとするな。次、血液を吸い上げるんだ」
「え……できんの?」
「できるかどうかは試してから判断することだ。こういったスキルは、一度試してみないと分からない。スキルの使い方は試行錯誤が基本、トライアンドエラーだ。人の迷惑にならないところでなら、いくら試してみても問題なかろう」
そうですね、とは返答したものの、そう言われてもどうやるかは分からない……。
「植物の構造は?」
「え?」
「植物は、どうやって水を得る?」
「それは、根から土にある水分を……」
あぁそうか、と俺は改めてワイルドボアの上で咲いている彼岸花に意識を向ける。必要なのは、球根から伸びている根から吸い上げていくイメージ……。
「……!」
「分かるんだな。血液を吸い上げているのが」
「は、はい……」
遠くからでも、あの彼岸花が水を吸い上げるように獣臭い血液を吸い上げているのが分かる。血液を吸って元気になったように、花はさらに大きく花を開き、花の中心部から伸びる真っ赤なしべを伸ばす。反り返った六つの赤い花が輪を描いて咲く彼岸花。それが、死体の上で寂しげにただ佇んでいた。
「何で階層を降りてるんですか?」
「私の仮住まいがこの先のセーフティーエリアにあるからだ」
俺の目は点。
いや、待って。仮拠点がセーフティーエリアにあるって、どういうこと? 次のセーフティーエリア、四十階層の前の三十九層ですよ? この清掃員さん、マジで何者なの? どこの実況者もまだ未踏破のセーフティーエリアに仮拠点構えてるって?
意味が分からない俺でも、途中で遭遇したワイルドボアを素手で仕留めた清掃員さんにそれ以上のツッコミはしなかった。俺みたいな下等生物がこの清掃員さんに物申す事自体がおこがましいと、視覚から脳味噌をぶん殴られるように叩き込まれたからだ。
久留米より強い。清掃員さんからすれば、俺達のやってる攻略なんてお遊びみたいなものに感じるだろうな。
「佐藤桐也」
「ひゃい」
「はい、だ。しっかり返事をしろ」
「すみません、ビックリして……」
清掃員さんは息の根が止まっていることを確認して、くるりと振り返る。
「このモンスターにスキルを使ってみろ」
「え?」
「このモンスターにスキルを使ってみろ」
「いや、どうやって?!」
「貴様のスキルの基本的な使い方があるだろう。使ってみろ」
「はい」
ていうか、スキルを使えって……――動物の死骸に、花を咲かせろってことか?
それは、
「ボサッとするな」
「分かりました」
任意の場所に、意識を向けるだけ。
ぱっと現れるのではない。まず緑色の茎が伸びて、赤く、血を吸ったような花が咲く……。
弔い花のように、ワイルドボア横腹に生えた彼岸花。
――気持ち悪いのよ、お前のスキルは!
こんな様を見ていると久留米の言葉が久留米の声で反響する。彼女の言う通りだ。死体から花が生える花なんて……気持ちが悪い。
「ぼさっとするな。次、血液を吸い上げるんだ」
「え……できんの?」
「できるかどうかは試してから判断することだ。こういったスキルは、一度試してみないと分からない。スキルの使い方は試行錯誤が基本、トライアンドエラーだ。人の迷惑にならないところでなら、いくら試してみても問題なかろう」
そうですね、とは返答したものの、そう言われてもどうやるかは分からない……。
「植物の構造は?」
「え?」
「植物は、どうやって水を得る?」
「それは、根から土にある水分を……」
あぁそうか、と俺は改めてワイルドボアの上で咲いている彼岸花に意識を向ける。必要なのは、球根から伸びている根から吸い上げていくイメージ……。
「……!」
「分かるんだな。血液を吸い上げているのが」
「は、はい……」
遠くからでも、あの彼岸花が水を吸い上げるように獣臭い血液を吸い上げているのが分かる。血液を吸って元気になったように、花はさらに大きく花を開き、花の中心部から伸びる真っ赤なしべを伸ばす。反り返った六つの赤い花が輪を描いて咲く彼岸花。それが、死体の上で寂しげにただ佇んでいた。
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