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68話 返却
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「何か、ほしいアビリティがあったのか?」
「……はい。あったら良いなって思ったアビリティが、たくさんありました」
思い出せば、エマはずっと人からもらったものしか使ってない。こんなに便利だと、どうしても手放し難くなってしまう。
「大丈夫だ、エマ。ステータスに表記されるものは基本的に、努力を重ねれば習得可能なものばかりだ。特殊性の高いものは才が必要になるが、戦闘時に使っていた『縮地』や『二重詠唱』、恐らく『魔力感知』も覚えられるぞ」
「そうなの?!」
ガイアが穏やかな笑みで頷く。
「習得したいアビリティがあれば私が手ずから指導しよう。だから、今まで借りたものは、全て返却しなさい」
《やったね、エマちゃん!》
(うん!)
「待った」
そうアルフレッドは言う。
「スキルの『浄光』だけは返却しなくて良い。君が持っていてくれ」
「どうしてですか?」
「アリアのためにならないからだ。今、彼女の元に『浄光』が戻れば、彼女は修道院で逆に祀り上げられてしまう。それでは、修道院という場所を変えただけで、君にやったことを他の修道女達にやるだろう。『浄光』の返却はアリアを経過観察後、こちらで更生に至ったと判断した際に要請する。それだけは覚えておいてほしい」
「……分かりました」
エマはステータスを開く。
あんな生意気でも、妹だ。ちゃんと悪いことをしたと反省してくれれば、返してあげても良いや。
(だって、もう私は自由。幸せになって、良いんだもの)
エマはスキルに含まれている、ミザリーのスキル『清掃 Lv.MAX』から、順番に返却していく……。
*
『スキル【清掃】をアビリティとして覚えますか?』
*
「「……」」
(あっ。そういえば、ドルガーさんに返したアビリティ、覚えたんだった)
あの時は焦っていたから失念していた。
エマは一度清掃スキルの返却を中断して、と『二重詠唱』に変更する。
*
『アビリティ【二重詠唱】を覚えますか?』
*
エマはにっこにこでイエスボタンを狙って指先を伸ばすと、ガイアから手を掬い上げられた。
「待て待て待て! それだと私が教えられないだろう?!」
「えっ?」
「いやだ、手ずから教える! だから覚えないでくれ!」
「? 何で?」
エマは、何故かそう駄々を捏ねたガイアに問い返すが、何でもだ! とぎゅーぎゅー締める。
お前からも何か言ってくれと話を振られたアルフレッドは、硬直からはっと我に返ったように、エマのレベルを指差す。
「奪い取ったスキルが覚えられる、のか? 私は、君のレベルが697になっていることの方に驚いていた。何故だろうか?」
「それは、神獣従属の呪いを奪い取るために盗用レベルを80まで上げないといけなくて、その過程でガイアさんから経験値をもらいました」
その返答を聞いたアルフレッドが、珍獣を見るような目でエマを見下ろした。
(リースナー様、そんな顔をするんだ)
エマはそう他人事のように思った。
「……はい。あったら良いなって思ったアビリティが、たくさんありました」
思い出せば、エマはずっと人からもらったものしか使ってない。こんなに便利だと、どうしても手放し難くなってしまう。
「大丈夫だ、エマ。ステータスに表記されるものは基本的に、努力を重ねれば習得可能なものばかりだ。特殊性の高いものは才が必要になるが、戦闘時に使っていた『縮地』や『二重詠唱』、恐らく『魔力感知』も覚えられるぞ」
「そうなの?!」
ガイアが穏やかな笑みで頷く。
「習得したいアビリティがあれば私が手ずから指導しよう。だから、今まで借りたものは、全て返却しなさい」
《やったね、エマちゃん!》
(うん!)
「待った」
そうアルフレッドは言う。
「スキルの『浄光』だけは返却しなくて良い。君が持っていてくれ」
「どうしてですか?」
「アリアのためにならないからだ。今、彼女の元に『浄光』が戻れば、彼女は修道院で逆に祀り上げられてしまう。それでは、修道院という場所を変えただけで、君にやったことを他の修道女達にやるだろう。『浄光』の返却はアリアを経過観察後、こちらで更生に至ったと判断した際に要請する。それだけは覚えておいてほしい」
「……分かりました」
エマはステータスを開く。
あんな生意気でも、妹だ。ちゃんと悪いことをしたと反省してくれれば、返してあげても良いや。
(だって、もう私は自由。幸せになって、良いんだもの)
エマはスキルに含まれている、ミザリーのスキル『清掃 Lv.MAX』から、順番に返却していく……。
*
『スキル【清掃】をアビリティとして覚えますか?』
*
「「……」」
(あっ。そういえば、ドルガーさんに返したアビリティ、覚えたんだった)
あの時は焦っていたから失念していた。
エマは一度清掃スキルの返却を中断して、と『二重詠唱』に変更する。
*
『アビリティ【二重詠唱】を覚えますか?』
*
エマはにっこにこでイエスボタンを狙って指先を伸ばすと、ガイアから手を掬い上げられた。
「待て待て待て! それだと私が教えられないだろう?!」
「えっ?」
「いやだ、手ずから教える! だから覚えないでくれ!」
「? 何で?」
エマは、何故かそう駄々を捏ねたガイアに問い返すが、何でもだ! とぎゅーぎゅー締める。
お前からも何か言ってくれと話を振られたアルフレッドは、硬直からはっと我に返ったように、エマのレベルを指差す。
「奪い取ったスキルが覚えられる、のか? 私は、君のレベルが697になっていることの方に驚いていた。何故だろうか?」
「それは、神獣従属の呪いを奪い取るために盗用レベルを80まで上げないといけなくて、その過程でガイアさんから経験値をもらいました」
その返答を聞いたアルフレッドが、珍獣を見るような目でエマを見下ろした。
(リースナー様、そんな顔をするんだ)
エマはそう他人事のように思った。
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