盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

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59話 奪い取れ、全てを!

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 どんっ! と体に衝撃が走る。
 どんどん力が溢れてくる。エマの体は何処までも軽くなる。
 自分でも分かる。どんどん、魔力が溢れてくる。それを、ずっと垂れ流している。抑え方は分からない、いや、抑えていたら時間がない。

 伝説の地龍のレベルは999で上限らしい。人間は基本的に、99が最高と言われている。稀に100を超える人間が現れる。ガイアのレベルは基本的な人間達の10倍だ。どれだけ大量の経験値が眠っていることだろう。己を磨き、強さを求める人間からすれば、それはもう金銀財宝、宝の山と言っても過言ではない量だ。

 エマはステータスを開きながら、どんどん上がっていくレベルを目視する。
 たったの20だったレベルは今や80を超え、さらには99の上限まで到達する。
 しかし、『盗用』のレベルは64に上がっただけ。経験値を奪って、確かに『盗用』のレベル上げに必要な経験値も上がっているのだ。

 そこで、新たなウィンドウが現れる。

『突破条件を満たしています。上限突破しますか?』
「する!」

 ウィンドウをどんっ! と叩き付けて、ステータスが「100」に変わったのを見届けて再度、スキルを乱用する。再び、レベルが1秒を刻むごとに増えていく。150、160……190と増え、199で打ち止め。

 再び、突破しますか? と問い掛けられる。再びウィンドウにイエスで返す。ついに、前人未到のレベル200台へ突入する。

 膨れ上がるステータス、そしてレベル。それでもまだまだ要領はある。
 それに伴い、『盗用』のレベルも上がっていく。レベルが、ゆっくり、ゆっくり、66、67、68と上がっていく。

 レベルが300を突破し、更に400、500へと到達。そして、599に差し掛かると、上限突破しますか? と問い掛けるウィンドウも現れないままレベル600に突入した。

『盗用』のレベルが、75を超えた。
 76……77……78……

 ぶぉん、とエマの視界にウィンドウが現れる。

『これ以上はスキルを使用できません』
「えっ?! あともうちょっとなのに!!」

 エマのレベルも697で打ち止め。
 しかし、盗用スキルは78で止まってしまった。

 あともうちょっと!
 あともうちょっとでレベルが上がるのに……!

「そうだ、ガイアの体力!!」

 今は瀕死だ。だが今のエマには、マリアエルから奪ったヒールやエリアヒールがある。魔力は回復できないが、体力を全快させてから奪えば!

 エマは少し離れてエリアヒールにありったけの魔力を投入する。
 まだだ、まだいける! まだやれる!!

 神々しいほどの白い輝きが足元に広がり、湧き上がる。優しく吹き抜ける風が、エマの髪と服をゆらゆらと揺らす。白いオーブがわっと湧き上がって、上へと昇る。天使の羽根が舞うように、優しい魔法の光が辺りに漂う。

「慈愛に満ちし天光よ、果てなき旅路を進む我らに聖なる癒しと生命の祝福を――エリアヒール!!」

 優しい光が広がる。みるみるうちにエマに溜まっていた疲れも溶けるように消えていく。
 白い輝きが消えた時、エマは鑑定でガイアの体力を確認する。4桁だった体力が6桁点…30万まで回復した。まだだ、まだ足りない!!
 もう一度、エリアヒールをぶっぱなす。2回、3回と、一度に込められる魔力を込めるだけ込めて、何度も何度もぶっぱなす。

 ガイアの体力が、7桁、8桁と回復していく。そして最上限の99億9999万9999で止まる。

「魔力以外のステータスもらっていきます!!」

 再度胃袋に手を当てて、エマはステータスを奪い取る。
 がばり、がばりと彼の魔力以外のステータスが一気に減少していく。酷いデバフだ。それでも、『盗用』レベルが79に到達した!

「あと、もう少し!!」

 ガイアのステータスがぐんぐんと減っていく。

 *

  ・『盗用』Lv.80

 *

「きたっ!」

 エマは一度手を放して、再度胃袋に手を当てる。
 狙いを『神獣従属の呪い』に焦点を当てて。
 大きく息を吸って、


「よこせぇえええええええええええ!!」


 腹の底から、生まれてこの方、一度も出したことのない大音量で、エマは叫んだ。

 ガキン! と体の中で何かが嵌った気がした。
 途端に、体中が倦怠感に苛まれる。エマはぼてっと尻餅をつく。

 急いでエマは自分のステータスを確認する。大量のスキルとアビリティが羅列するステータス画面をズルズルと下へ下へとスクロールする。この時間がもどかしい。

 それでも、最後の最後に到達する。

「……! あった! あった!! 奪い取れた!!」

 アビリティの最後尾、確かに『神獣従属の呪い』の文字が入っている!

 それから変化は起きた。
 ガイアがのそりと動いている。その僅かな振動を感じる。

 そして頭上から、ぐぉおおおおおおおお! と咆哮が上がった。
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