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48話 食い違う証言
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百花繚乱が経営する宿屋で一夜を過ごした翌朝、エマは冒険者ギルドに向かった。
そもそもの話、エマは『ファフニール』というのがどんなカルト集団なのか知らない。悪い人達という認識しかないのだ。その確認にと思ったが、受け付けに、見覚えのある姿が立っていた。
(ヴォルグさんだ)
冒険者が2人。そして、副ギルドマスターのダスティンだ。暇そうに首を回したヴォルグに手を振りながら挨拶された。
*
「えっ? イビルティアー
が見つからない?」
「そうなんだよ」と言うのはトレバーという、昨日のうちにイビルティアーを探しに行った冒険者。どこを見渡しても赤い実は見つからないという。
「エマちゃん、ちょっと記憶探らせてもらって良いか?」
「は、はい」
そんなスキルがあるのかと内心驚きつつも、ヴォルグの大きな手に頭を包まれて自然と目を閉じる。朝になって冒険者ギルドから来る前の記憶が、逆再生のように巻き戻っていく。そして、赤い霧の中に飛び込み、手につまんだ赤い実が収束。そして、その指が草に実を戻す。そして、スキルで鑑定画面を開いた。
「ありがとう。エマちゃんは、確かにイビルティアーを見てるな」
「はぁ?! 俺たちが仕事してねぇみたいに言うんじゃねぇよ! くまなく探したっつーの!」とトレバー。
「こっちは鑑定だって使ってますよ!」と腰に手を当てて言い張るコリンナ。
嘘を吐いているようには見えない。
だけれどヴォルグは、楽しそうに笑う。
「分かってる。君達が真剣に、真面目に探してくれたからこそだ。本当にありがとう、お陰で確信できた……――君たちも、エマちゃんも、どっちも正しいんだ。そのイビルティアーは、見える奴と見えない奴がいる」
「えっ?」
コリンナと一緒になってエマはきょとんとするが、トレバーは半信半疑で「見える奴と、見えない奴ぅ?」とヴォルグに睨み付ける。
「君達、属性共鳴って知ってるか? ドラゴンみたいな上位種が、自分と同種の存在を発見するために、属性を共鳴させる奴だ」
「「あっ!」」
すると、今まで黙っていたダスティンとコリンナが目を丸くする。しかしトレバーとエマは首を傾げるばかりだ。
「土属性の冒険者を手配します」
「もう一つ頼まれてくれ。アースティアーの採取の依頼人と、直近1年の依頼数が知りたい。判明したら、トルネコホテルに依頼人を連れてきてくれ」
「分かりました」
ダスティンはカウンターから奥へ、そしてヴォルグは2人に再度同行を申し入れると、最後、エマへ振り返って膝を折る。
「エマちゃん、これから実況見分に付き合ってくれないか?」
*
エマはヴォルグと共にスキル特務部隊が拠点としているホテルへ向かう途中、ヴォルグから話を聞いた。
属性共鳴……ドラゴンのような上位種が、自分と同種を発見するために属性を共鳴させるというのが通説の、同属性にのみ分かるシンパシーのようなものだ。近年は、他にも同じ属性の食べ物を探したり、同属性同士の連絡手段に使ったりするものでもあると考察があって、実際の所は定かではない。
「エマちゃん、地龍伝説って知ってるか?」
「あの、瘴気の浄化が追い付かなくて、最後は自分の命と引き換えに大地を浄化したっていう……」
「あぁ、それだ。その中に『赤い花が咲く』ってある。土地はやせ細って作物は枯れていくのに、何故か赤い花が咲くんだ」
「……もしかして、イビルティアー?」
ヴォルグは、可能性がある、呟いた。
「なぁ、エマちゃん。すっげぇ面倒事なんだけど、引き受けてほしいことがあるんだ。もちろん、拒否権もある。まずは、どれだけヤバイか話を聞いてほしい」
なんでそんなヤバイのを引き受けてくれって依頼するんだろう。
でもヴォルグの仮定の話は、どれもエマにとって納得のいく話だった。何より交換条件で出された報酬は、とても魅力的だった。
「分かりました、受けます」
そもそもの話、エマは『ファフニール』というのがどんなカルト集団なのか知らない。悪い人達という認識しかないのだ。その確認にと思ったが、受け付けに、見覚えのある姿が立っていた。
(ヴォルグさんだ)
冒険者が2人。そして、副ギルドマスターのダスティンだ。暇そうに首を回したヴォルグに手を振りながら挨拶された。
*
「えっ? イビルティアー
が見つからない?」
「そうなんだよ」と言うのはトレバーという、昨日のうちにイビルティアーを探しに行った冒険者。どこを見渡しても赤い実は見つからないという。
「エマちゃん、ちょっと記憶探らせてもらって良いか?」
「は、はい」
そんなスキルがあるのかと内心驚きつつも、ヴォルグの大きな手に頭を包まれて自然と目を閉じる。朝になって冒険者ギルドから来る前の記憶が、逆再生のように巻き戻っていく。そして、赤い霧の中に飛び込み、手につまんだ赤い実が収束。そして、その指が草に実を戻す。そして、スキルで鑑定画面を開いた。
「ありがとう。エマちゃんは、確かにイビルティアーを見てるな」
「はぁ?! 俺たちが仕事してねぇみたいに言うんじゃねぇよ! くまなく探したっつーの!」とトレバー。
「こっちは鑑定だって使ってますよ!」と腰に手を当てて言い張るコリンナ。
嘘を吐いているようには見えない。
だけれどヴォルグは、楽しそうに笑う。
「分かってる。君達が真剣に、真面目に探してくれたからこそだ。本当にありがとう、お陰で確信できた……――君たちも、エマちゃんも、どっちも正しいんだ。そのイビルティアーは、見える奴と見えない奴がいる」
「えっ?」
コリンナと一緒になってエマはきょとんとするが、トレバーは半信半疑で「見える奴と、見えない奴ぅ?」とヴォルグに睨み付ける。
「君達、属性共鳴って知ってるか? ドラゴンみたいな上位種が、自分と同種の存在を発見するために、属性を共鳴させる奴だ」
「「あっ!」」
すると、今まで黙っていたダスティンとコリンナが目を丸くする。しかしトレバーとエマは首を傾げるばかりだ。
「土属性の冒険者を手配します」
「もう一つ頼まれてくれ。アースティアーの採取の依頼人と、直近1年の依頼数が知りたい。判明したら、トルネコホテルに依頼人を連れてきてくれ」
「分かりました」
ダスティンはカウンターから奥へ、そしてヴォルグは2人に再度同行を申し入れると、最後、エマへ振り返って膝を折る。
「エマちゃん、これから実況見分に付き合ってくれないか?」
*
エマはヴォルグと共にスキル特務部隊が拠点としているホテルへ向かう途中、ヴォルグから話を聞いた。
属性共鳴……ドラゴンのような上位種が、自分と同種を発見するために属性を共鳴させるというのが通説の、同属性にのみ分かるシンパシーのようなものだ。近年は、他にも同じ属性の食べ物を探したり、同属性同士の連絡手段に使ったりするものでもあると考察があって、実際の所は定かではない。
「エマちゃん、地龍伝説って知ってるか?」
「あの、瘴気の浄化が追い付かなくて、最後は自分の命と引き換えに大地を浄化したっていう……」
「あぁ、それだ。その中に『赤い花が咲く』ってある。土地はやせ細って作物は枯れていくのに、何故か赤い花が咲くんだ」
「……もしかして、イビルティアー?」
ヴォルグは、可能性がある、呟いた。
「なぁ、エマちゃん。すっげぇ面倒事なんだけど、引き受けてほしいことがあるんだ。もちろん、拒否権もある。まずは、どれだけヤバイか話を聞いてほしい」
なんでそんなヤバイのを引き受けてくれって依頼するんだろう。
でもヴォルグの仮定の話は、どれもエマにとって納得のいく話だった。何より交換条件で出された報酬は、とても魅力的だった。
「分かりました、受けます」
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