盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

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40話 地龍伝説

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 かつて、この地には大地を守護する地龍がいた。
 地龍は魔の力を浄化する土の力を持ち、豊穣と富を象徴するドラゴンだった。
 地龍の息吹は大地に生命を与え、その血液は大地を潤し、さまざまな宝石となり地中や山の中で凝結する。元々、この国は宝石がよく採れる国だった。

 しかし、魔族の侵攻により瘴気に汚染されてしまった大地と共に、地龍の体は穢され、身をむしばまれていった。大地の浄化が追い付かず、作物は枯れ、土地は痩せていった。そして大地の苦しみが赤い花となって咲き、さらに穢していった。

 このままではこの地の人々が死んでしまう。
 地龍はロウェスタリア四代目国王に、自分の首を切り落とし、その血を大地に注いでほしいと頼んだ。地龍の体には大地を浄化する力があったのだ。

 今までずっと助けてくれた地龍にそんなことはできない。拒否した国王だったが、生命が溢れる豊穣の大地に戻れば、地龍は何度でも生まれ変わることができるという。
 国王は地龍の再来を信じ、地龍の首を落とした。黄金色をした地龍の血液は大地に染み込むと、瞬く間に瘴気を浄化していった。

「そして地龍の死を悼み、国王は神殿を建造した。地龍が蘇ることを祈って……」
「……それで、地龍は蘇ったんですか?」
「まだ蘇ってはいないわね。もしかしたら、もっと時間がかかるのかも」

 予想以上に神話っぽい話だった。その地龍神殿がある場所を教えてもらえた。丁度、エマが受注した薬草依頼『アースティアー』が生えている辺りだという。別名『地龍の涙』と呼ばれるその薬草は、この神殿の近くにしか生えていない。この、アースティアー草に実っている実を採取するのが今回の薬草採取の依頼だ。

 アースティア―草の成長は一般的な薬草類と同じぐらいだが、実の方だけであれば、数日もすれば再び実るのだという。

「ありがとうございます! じゃあ、行ってきまーす!」
「あぁそうだった、地龍伝説の話で忘れてたわ。その神殿の近くで、黒いローブを纏った人達を見掛けたら、すぐに離れて、冒険者ギルドに報告してくれる?」
「黒いローブを纏った人達?」
「えぇ。もしかしたら、悪い人達かもしれないの。だから、すぐに逃げてきてね。そうだったら、依頼の完了日数を伸ばすから、絶対に無理しちゃダメよ?」
「分かりました。見掛けたら、すぐ報告しに戻ります!」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」

 今度こそ、エマは大きく手を振って冒険者ギルドを後にした。
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