盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

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38話 いざ、冒険者登録!

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 自分のスキルと正体がバレたとは露ほども思い至らないエマは、3日の時間をかけてメイアに到着した。
 その道中、わざとモンスターの出るエリアに入り込み、レベル上げもした。お陰で、使えなかった隠蔽魔法が使えるようになった。

 メイアは魚介類の取り扱いや、パールなどの海で採れる宝飾品が並び、露天も海産物を焼いたものが売り出されていた。こちらも、ルルベールと同じく賑やかだ。
 この世界の冷蔵システムはどうなっているのだろうか。こんな内陸部に新鮮っぽい海産物が並べられている露天があるのは、何か不思議だ。

 野菜と共に切られた魚が刺さっている串焼きがあったので、それを食べながらトニカに書き込んでもらった冒険者ギルドへ向かう。

 騎士を見かけて、エマは反射的に近くの建物の影にさっと身を隠してしまう。

 そういえば、トニカからは治安が悪いと聞いていた。何でも、冒険者や一般人が突然暴れたり、冒険者が失踪しているだとか。
 失踪するのは魔法師が多いらしい。中には、Sランカーの冒険者もいなくなったとか。

「はぁ……」
「先輩、大丈夫ですか? もう少し休まれては? この前の休み、潰れたんでしたよね? 町全体で突然色んな人が暴れ出したって」

 王都の冒険者ギルドで起きた事件と、ちょっと似てる気がする。
 しかし、先輩騎士の方が明るい口調で朗報だと相棒にそっと耳打ちしている。
 エマは『エアリッスン』を使ってみた。すると、先輩騎士の声が、エマの耳元で囁くように聞こえてきた。

《『邪龍の使徒』……初めて聞きました。何ですか、その呪い?》
《上位鑑定士じゃないと見抜けない潜在型の洗脳呪術だそうだ。捕まえた冒険者もその呪いを掛けられていたのが判明して、今、鑑定士を連れた支援部隊がこっち向かってる。後は『ファフニール』の連中の居場所が分かれば、俺達もお役御免だな》

 鑑定士じゃないと見抜けない呪術をエマのスキルは引き抜いてしまったのか。つくづくスキルの優秀さが際立つなと思う。

 エマは騎士達がその場から去ったのを見て、エマも町の散策を再開する。その途中で、ドラゴンの看板を発見した。

 この地には、地龍伝説がある。その地龍伝説を町のマスコットとして使っているのだろう。やっていることは、舞の国と同じだ。なんだか、舞の国と似ている部分があると嬉しく思う。

 詳しい話を聞けないだろうか。地龍が抱えている金銀財宝がある、という話は聞いているが、どんなことをした地龍なのかは詳しく分からない。

 到着した冒険者ギルドで、エマは早速登録へ向かった。受け持ってくれるのは、優しそうな顔立ちに眼鏡をかけている受付嬢、ソフィアだ。

「それじゃあ僕、指を出してくれるかな? 血を少しもらいたいの」
「血?」
「そう。ギルドカードの登録は、血中魔素から個人の情報を直接登録できるの」

 それやったら、エマのフルネームがバレてしまう!

(そうだ、昨日の覚えた隠蔽魔法……名前と性別を誤魔化そう!)

 どんな風に変わるのかカードを見てみたいというエマに、ソフィアはもちろんですよ、とカードを渡してくれた。これで、最初の名前を見られずに済む。

 ナイフと、回復ポーションが渡される。指を切って、カードを血液に垂らしてすぐカードを持ち上げる。
 しばらくすると、カードの中心から波紋を広げるように、ふわっと文字が浮き上がった。名前、性別、年齢……クラスは空いているが、ギルドランクは最低ランクのGからだ。
 おぉ! と感動の声を上げたのも束の間、すぐにカードの名前と性別を無詠唱で書き換える。名前は、カリヅ。舞の苗字しか思い付かなかった。

 ソフィアに見せてくれる? と差し出された手に、冒険者カードを渡す。すごくドキドキする。
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