盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

文字の大きさ
上 下
38 / 73

37話 暴かれていくエマの正体・下

しおりを挟む
 次にヴォルグは手帳をめくって、サニアのスキルで念写した写真を見せてきた。それは、女装している男。

「ターナーだ」
「……ターナーに女装する趣味が?」
「違う違う! エマちゃんが着せたんだ」
「なるほど」
「良い性格してるだろ? でも、そっちじゃなくて、後ろ手見てみろよ。縛ってる」

 拘束時に最も負担が少ないのは親指。それを、10歳の令嬢が知っているか? 
 逆に、『異世界人の知識が芽生えた』なら、辻褄が合う。

 少女が家族と使用人へ反旗を翻すと決めた。
 そして使用人達からスキルを奪い、更には兄と妹から奪い取った。その後は、スキルを駆使し、両親を圧倒。スキルがなくなり弱体化したアリアの護衛すら落とし、最後は兄を黙らせた。

 一番気にかけているであろうサニアに次の就職先をスキル特務部隊への推薦し、そして、働き先が決まらなかった時のためにお金を稼ぐ方法の提示した。

スキル特務部隊ここへの推薦……なるほど、確かにここまでの鮮明さを誇るなら、是非とも引き入れたい」
「近々サニアがこっちに来るよう仕向けたから、エマちゃん探すために、彼女の写真を貼り付けた掲示物を彼女に作ってもらおう」
「今はダメだ。エマ嬢は追われている身。そんな掲示物を貼り出せば、彼女が逃げたことを公表することになってしまう」
「それもそうか……あ、そうだ。昨日ギルドに確認しに行ったけど、やっぱり冒険者ギルドに来てなかったぜ」
「そうか。なら、もう王都は出たのだろう」
「? 出てるのか? 隠れてるんじゃなく?」
「転生者と聞いて、何となくだが……アスカと似た行動を取っている気がする。彼女もこちらに転移した当初、流れで冒険者ギルドに行ったそうだ」
「そういや、師匠なんて冒険者ギルドに拾われてそのまま厄介に……いや、全面的に冒険者ギルドの世話してるな」

 あの夜、エマは自分守ってもらうためではなく、王都から出るためにギルドカードを作りに行こうとしたのではないだろうか。

 だが、ギルドはあの騒ぎ。詰所の人間は対応してくれない。自分を助けてくれる人はいないと見限った可能性は高い。
 それでも冒険者ギルドの騒ぎを抑えるべく、彼女が知っている場所で騎士が集まっているところといえば、門番。門番の警備を手薄にすることに成功し、そのまま逃走した。

(マフィアの方もエルフィールド家の逮捕を知れば、追いかけるのを止めるかもしれない) 
「ヴォルグ、出勤時間が来たらメンバーを招集してくれ。その後、会議室で待機を。私は居残り組とメイアへの派遣部隊を選定する」
「何でメイアなんだ?」
「あそこは冒険者ギルドの支店がある。ギルドカードを作りに行った可能性は高い」

 そして、2日前の時点で王都に最も近いルルベールで体を休めたはずだ。だが、冒険者ギルドの情報を集められれば、すぐにメイアへ向かうだろう。『縮地』と『スピードアップ』なら、2、3日。

「そうか。それじゃあ、俺帰るわ。今日から3日間非番だから」
「……」
「あとよろしく……――痛って、何しやがる!!」
「お前は働け。次の休みはキャシーだ」

 昨日から働いてるだろうが! と言い返すヴォルグに、アルフレッドは腕を組んでもう一度「働け」と一言。

 何故、この天才はすぐにサボろうとするのか。仕事は早い、やることはしっかりやる。だがサボることに全力を注ぎ過ぎだ。その分を周囲を手伝うようにと再三言ってるのにやらない。

 分かりましたよとヴォルグは忌々しそうに言う。師匠なら休ませてくれるのに、とブツクサ言うが、もう一度「働け」アルフレッドは吐き捨て、手を差し出す。

 その手とアルフレッドの顔を交互にヴォルグは見る。

「何だよ、その手は」
「始末書を。お前がエマ嬢の酷い状況を知って、暴言を吐かないとは思えない」
「ちっ」
「今日の昼までに書き終えるように」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...