盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

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34話 捜索終了

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 日が暮れて、星空が見える。ギャーギャー暴れるアリアも問答無用で連行されることになった。媚びられたが無言であしらう。何故、あんなにコロコロ態度を変えられるのか。

 あの顔を見るだけで、階段からエマを突き落としか顔がちらつくようになった。
 本当に子供なのかと思えるほど歪んだ顔だった。犯罪者と同じ表情だ。聞いていたほどマリアエルも聖人君子ではない。

 その点、自分が殺されると分かって叫んだエマの方がよっぽどきれいな顔をしていた。

「こいつらより幸せになってやる、か……俺だったら、あの状況で絶対言えねぇな」
「そう、ですね……」
「同感です」

 結局、干渉の少なかったサニアと執事長だけが屋敷に取り残されることになった。
 使用人を含め10人以上を暴行罪でしょっぴくことになるとは。連れて行くための馬車は当然足りず、ヴォルグ達は徒歩で直帰することになった。ただし、ヴォルグは始末書と事の顛末を書くため、城下町からは徒歩で2時間の道のりを歩かねばならない。途中で辻馬車を拾えればいいが。

 ヴォルグは帰り際、サニアに頼みたいことがあるんだけど、と手持ちの手帳を開いた。

「ターナーが女装してた時の姿、念写できるか?」
「ぶふ!」ユリウスが噴き出した。

 言われた通り、サニアは手帳に手をかざすと、あの赤リボンに青いドレスのターナーが鮮明に映し出された。思わず吹き出す。ここまで鮮明ならば師匠が見慣れてきた『写真』に近いだろう。

「サンキュー。はい、これ。お暇ができたら城まで返しに来てくれ」
「え?」

 渡したのはヴォルグの腕章。

「クローゼットの中について問わない代わりに、ちょっと特務部隊に顔出してくれ」
「は、はい……謹んで受け取ります」

 エマが絶妙な言い回しで何を隠していたか判明しなかったが、ちょっと違法性のあるものが入っていた可能性はある。しかし、キャシーがスキルを使用させるには限界だ。頑張れと言ったら、本当に頑張ってくれるが無理をしがちだ。
 軽く捜索したが、サニアのクローゼット中には服しか入っていない。証拠隠滅は済んでしまったのだろう。
 エマの思惑通り、彼女を守るために。

 だが、その時エマは面白いことを言っていた。そして同時に、ある可能性がヴォルグの中で浮上している。

「飯、食いに行くか。おごる」
「良いんですか?!」
「ルッシュド・エリに行きたいです」
「バーカ、そんな高級レストラン出せる金なんか持ってねぇよ。冒険者ギルドだ冒険者ギルド」
「やったー!」「えぇ~」

 喜ぶキャシーとは対照的に、ユリウスは不満そうだ。これだから貴族のガキはと思ったが、カラアゲが食べたいと素直に申し出たユリウス。男児はやはり肉。

 それにエマが冒険者ギルドに顔を出している可能性は捨て切れない。仕事の関係上、騎士団と冒険者の折り合いが悪いくて連絡が保留されている可能性も否めない。

 何より、あそこのカラアゲは師匠の作ったカラアゲと味と同じだ。
 そのうち、料理人と顔を合わせてみたいものだ。

 そんな素朴な願いは、叶うことになる。
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