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25話 ルルベールの小さなお宿
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「はぁ……みえた」
縮地とスピードアップを併用して使うこと何時間経っただろうか。
町明かりが見えた。王都そばにある、ルルベールという中継地点だ。王都付近で栄えている町の一つで、エマは注意深く散策して、見張りがいないのを確認して町へ入り込んだ。
ここは砂漠からの商人が通る場所で、異国の服を身にまとう日に焼けた大人たちが多い。
とにかく、エマは宿を探す。どこか空いているところがあればいいのだが……しかし、見付けても満杯な場所ばかりで、次から次へと店を尋ねて渡った。
ここもダメだったら、という不安で小さな宿屋を開ける。
トニカという赤毛の若い女性が、いらっしゃいと目を瞬かせた。
「すみません、お部屋は空いてますか?」
「あぁ、空いてるよ」
「一部屋お願いしますぅー!!」
「はっはっは! さては、相当宿を探し回ったね?」
そうなんです! と叫んで、差し出された宿帳を前に実名を書きそうになって固まった。文字が書けないのかと心配されたが、一呼吸を置いて書き直す。
「アルフレッドっていうのかい。良い名前だ! 今、王都で活躍してる『スキル特務部隊』の長をやってる人と同じだねぇ!」
「そ、そうなんですよ」(思い付かなくて、とっさにアルフレッドさんのお名前を使ってしまった……! ごめんなさい!)
相当有名な人だったらしい。
トニカが言うには、アルフレッド・リースナーは元々冒険者だったそうだ。彼が冒険者ギルドから出てきたのは、冒険者との交流をするためだったのかもしれない。
「そうだ、アスカさんを知っているかい?」
「え、えっと、すみません、知らなくて……」
「王都に封印されていた魔神の核を破壊した人なんだよ、アスカさんは!」
「へっ?! もしかして、『終焉の不死鳥』!?」
「そうそう、それさ! アルフレッドさんはアスカさんの仲間でねぇー。この宿にも泊まってくれたことがあるんだよ!」
トニカの話に花が咲きそうで申し訳ないが、今日は休ませてもらうと頭を下げた。でも、その話はすごく気になるから明日是非聞かせてほしいと申し出ておいた。
『終焉の不死鳥』という異名で呼ばれている異世界人という知識ぐらいだ。ずっと気になっていたが、マリアエルがあまりいい顔をしなかったから、詳しい話は知らないのだ。
エマはきれいにされたベッドと質素な家具の並ぶ部屋に案内された。何だか明るいし、きれいな空気を感じる。
私は、あの家を本当に出られたんだ。そう実感する。
そう思ったら、ぽろりと瞳から涙が零れた。
その場にへたりこんで、声を押し殺しながら泣く。それはいつも通りだった。でもそれ以上に、毎日のようにやってくる明日に怯えずに済むという安心感。
胸の内いっぱいに広がる安堵感に、涙があふれてきて仕方がなかった。
縮地とスピードアップを併用して使うこと何時間経っただろうか。
町明かりが見えた。王都そばにある、ルルベールという中継地点だ。王都付近で栄えている町の一つで、エマは注意深く散策して、見張りがいないのを確認して町へ入り込んだ。
ここは砂漠からの商人が通る場所で、異国の服を身にまとう日に焼けた大人たちが多い。
とにかく、エマは宿を探す。どこか空いているところがあればいいのだが……しかし、見付けても満杯な場所ばかりで、次から次へと店を尋ねて渡った。
ここもダメだったら、という不安で小さな宿屋を開ける。
トニカという赤毛の若い女性が、いらっしゃいと目を瞬かせた。
「すみません、お部屋は空いてますか?」
「あぁ、空いてるよ」
「一部屋お願いしますぅー!!」
「はっはっは! さては、相当宿を探し回ったね?」
そうなんです! と叫んで、差し出された宿帳を前に実名を書きそうになって固まった。文字が書けないのかと心配されたが、一呼吸を置いて書き直す。
「アルフレッドっていうのかい。良い名前だ! 今、王都で活躍してる『スキル特務部隊』の長をやってる人と同じだねぇ!」
「そ、そうなんですよ」(思い付かなくて、とっさにアルフレッドさんのお名前を使ってしまった……! ごめんなさい!)
相当有名な人だったらしい。
トニカが言うには、アルフレッド・リースナーは元々冒険者だったそうだ。彼が冒険者ギルドから出てきたのは、冒険者との交流をするためだったのかもしれない。
「そうだ、アスカさんを知っているかい?」
「え、えっと、すみません、知らなくて……」
「王都に封印されていた魔神の核を破壊した人なんだよ、アスカさんは!」
「へっ?! もしかして、『終焉の不死鳥』!?」
「そうそう、それさ! アルフレッドさんはアスカさんの仲間でねぇー。この宿にも泊まってくれたことがあるんだよ!」
トニカの話に花が咲きそうで申し訳ないが、今日は休ませてもらうと頭を下げた。でも、その話はすごく気になるから明日是非聞かせてほしいと申し出ておいた。
『終焉の不死鳥』という異名で呼ばれている異世界人という知識ぐらいだ。ずっと気になっていたが、マリアエルがあまりいい顔をしなかったから、詳しい話は知らないのだ。
エマはきれいにされたベッドと質素な家具の並ぶ部屋に案内された。何だか明るいし、きれいな空気を感じる。
私は、あの家を本当に出られたんだ。そう実感する。
そう思ったら、ぽろりと瞳から涙が零れた。
その場にへたりこんで、声を押し殺しながら泣く。それはいつも通りだった。でもそれ以上に、毎日のようにやってくる明日に怯えずに済むという安心感。
胸の内いっぱいに広がる安堵感に、涙があふれてきて仕方がなかった。
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