盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

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23話 冒険者ギルドの騒動・上

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 暴れまわる冒険者達の制圧は、門番達の増援もあって何とか終了した。ほっとしたのも束の間、一体何があったんだ? と口々に、不安そうな声が冒険者達から上がる。

 それも当然だ。
 酒場として経営している冒険者ギルド。冒険者同士や仲間内で情報交換、酒に酔った連中が肩を抱き合ってやかましいほどの合唱。
 かつてアルフレッドが所属していた冒険者ギルドでは、よくある光景だ。

 そんな中で、突然気が触れたようにこんな騒ぎが起きたのだ。
 対応できなかった冒険者が数名、殺された。怪我人も出た。
 だが、その当たり前の日常が突然、破壊されたことは、僅かながらアルフレッドの精神に響くものがあった。

 アルフレッドは面を外す。視界が一瞬、ぐらりと揺れ、瞳の虹彩が元の紫色へと戻る。

 応援に来てくれた門番達にも礼を言って、辺りを確認する。あのそばかすの少年はいない。
 詰所の騎士は全然来ないが、門番が来たということは、

(詰所の騎士達のほとんどは、話を聞かなかったか)

 騎士団内部でも、スキル特務部隊を潰そうといざこざが多い。
 詰所勤めの一般階級の騎士と新設されたばかりのスキル特務部隊では立場が違う。特務部隊の人間の方が上位だ。彼が良く思わないのも仕方がないが、仕事ぐらい線引きできないのか。

 詰所側で応援に来たのがわずかに酒の臭いのする騎士が1人だけ。それも、暴れる冒険者になす術なく気絶。
 あの少年も、使えないとすぐに判断して増援を呼びに行ってくれたのだろう。

(少年の方が働きが良いのは大問題だ)
「リースナー様、エリック殿下はご無事ですか?! お怪我は?!」
「エリック殿下? 何の話だ?」
「えっ!? エリック殿下がお忍びで来ているのではなかったのですか?!」

 えっ、と冒険者ギルドのメンバーもざわめく。
 王子来てるのか、とざわざわっと「王子がお忍びで?」「いやでも、アルさんは一人だったよな?」と、中は騒然となる。

「誰がそんなことを?」
「リースナー様が腕章を預けたという、そばかすの少年が……」
「そうか、事情は察した。彼はーー」

 アルフレッドが渡した腕章を詰所の騎士に見せたが、酒を飲んでいて相手にしてもらえなかった。だから、確実に増援を呼ぶために騎士ならば絶対に助けに行くであろう人間の嘘を吐いたのだ。
 彼らが駆け付けてくれたことに、改めて礼を述べる。騎士団の上層部に彼らの行動も上申しよう。当然、詰所の騎士達の行為は後で申告する。

「それじゃあ、『邪龍の使徒』という呪いが掛かっているという話も、あの子の嘘なのですか?」
「邪龍の使徒?」

 的確に、アルフレッドの記憶を掠める単語。
 王都付近にドラゴンを崇拝するカルト集団『ファフニール』の目撃情報が上がっている。彼らはドラゴンこそがこの世界を作り上げた創造主であるという思想を掲げ、罪のない一般市民の誘拐や殺害などを行っている。彼らからすれば、人間こそ至高の供物だという。

 眉根を寄せて、アルフレッドはギルドマスターのラカーシュに、取り押さえた冒険者の鑑定を依頼する。
 アルフレッドはその間、門番達と共に事情聴取に当たった。やはり、冒険者達も突然、どうして暴れ出したのか分からないと言った。
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