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21話 騎士団の詰め所

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 本当に、私のスキルは余計なものまで盗んじゃうなぁ!
 自画自賛しながらも、エマは速度上昇と縮地スキルを乱用して詰め所へと辿り着く。すみません! と叫びながら、手に握っていた腕章を見せて声を上げる。

 そこには鎧を纏った男達が暇そうに椅子に座っていた。というか、赤ら顔でわずかに酒の匂いが漂ってきている。
 よく見たら、空いた酒瓶がテーブルに乗っていた。

「冒険者ギルドで人が暴れています! 王立騎士団スキル特務課のアルフレッド・リースナー様から応援要請です! 助けて下さい!」

 騎士達は反応したものの、なんだ、と吐き捨てる。

「酔っ払いのゴロツキが騒いでるだけだろう。それを寄越せ、ガキ。お前が持ってて良い物じゃない」
「本当です! 正気を失っているみたいで暴れているんです! このままじゃ、近隣の住民にも被害が……」
「騎士様の言うことが聞けねぇのか!」
「本当に、『邪龍の使徒』という変な呪いに掛かっているみたいなんです! だから、助けてくださ……――っ!」

 ぶんっと動きの遅い拳が、横殴りで飛んでくる。

「ガキが遊びに来る場所じゃねぇって言ってんだ! とっとと失せろ!!」

 再び飛んできた拳にエマはヒラリと身を躱す。こいつら、本当に騎士なのか?!
 エルフィールド家のチンピラみたいな使用人と同レベルの知能だ。

 だったら! と足に力を入れようとするエマに、

(王子の名前をダシに使おう!)
「え? えっと、何だっけ王子様の名前……!」

 殴り掛かってきた拳を避けて、思い出した、エリックだ。

「そうだ、エリック! エリック第3王子がお忍び冒険者ギルドに来てるって言ってたんだよ!!」
「は?」「あ"?」「はぁ?!」
「じゃなきゃ、アルフレッドとかいうお偉いさんがオレみたいな奴に渡すわけないだろ、こんなモン! 給料分ぐらい仕事しろ、この税金泥棒共っ!!」
「あ"ぁ"?! ぶっ殺されてぇのか、クソガキが!」
「攻撃当ててから物を言えよ、このノロマ共! 仕事中に酒なんか飲んで、王子に言い付けてやる!!」

 エマちゃん格好良いー! と舞の心の中の絶叫が聞こえてきた。
 ついでに酒を引ったくって、エマは詰め所から飛び出す。その後を、待て! とよろめきながら、ようやく騎士達は詰め所からおびき出すことに成功した。
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