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20話 冒険者ギルドの騒動
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スキル特務課宛への郵便物も速達希望で出した。
質屋はギリギリ間に合った。メイド服でぬいぐるみ諸々を売り払うのに事情を説明すれば、本人確認もなく売ることができた。このガバガバ具合はありがたい。
そしてもう一つ、ちょっと変なお願いをした。
「どうですか?」
「あぁ、どこから見ても男の子だ」
店主の奥さんに長かった髪を切ってもらった。その後、店内にある男の子が着る服をその場で購入し、着替えたメイド服も売り払った。顔にはそばかすも付けてある。
男の子に変身したエマは質屋の老夫婦と別れを告げ、夜の帳の落ちた城下町にある目的の建物へ。
(冒険者ギルド!)
舞もエマも行きたくて仕方がなかった場所。
冒険者ギルドのギルドカードは身分証になる。これを入手できれば国の外にも出られるはず。
それに依頼をこなしながらお金も貯められる。一石二鳥だ。でも、今日はもう遅いから確認だけにしようと思う。寝床も確保してある。宿は既にお金も支払っているから、今日はゆっくり眠れるだろう。
その道中、大きな縦揺れの地震が起きて、エマは前にバターンと倒れた。道行く人達も何人か倒れていた。
気を取り直して、辿り着いた冒険者ギルド。大きな建物だ。貴族の屋敷のような風貌ではないが、洋装の立派な施設である。その扉を開こうとした次の瞬間、体にぴんっと緊張が走った。すぐにその場を飛び退くと、扉を破壊して大きな男が飛んできた。大男は路上をゴロゴロゴロっと転がっていく。さすがは実力主義集団、暴力で全てを解決!
「少年、大丈夫か」
(やはり、暴力……暴力は全てを解決する……)「あっ! はい!」
自分が心配されているのだと数秒遅れて返事をしたエマは声を掛けてきた人物を見上げた。
ギルドの戸口から溢れる光に照らされた白い髪。まるで雪のように白い髪を上で一つにくくっている。
その顔には、お面。鼻のような凹凸のない、のっぺりとした白い面だ。
その面に空いている穴から、青く澄んだ冬空のような青い瞳が光って見えた。
「冒険者ギルドに用があったのなら、今日は帰りなさい。危険だ」
「えっ?」
「うぅぅ……がぁっ!」
先程の大男が獣のように大きな口を開けて吠えた。白目を剥き歯が数本折れている様子からも、明らかに尋常ではない。そして、男の全身から紫色に光る靄が、湯気のように揺らめいている。
さっき走った緊張は、きっとスキルの『危機察知』による自己防衛の反応だったのだろう。早速役に立ってくれてありがたい限りだ。
壊れた戸口からは、喧騒というにはほど遠い大騒ぎ。暴動、といった方が正解だろうか。物の割れる音、「目を覚ませ!」と切に願う大声、そして先程の男が上げた獣のような雄叫びが複数。確かに、尋常ではない雰囲気だ。
「何だ坊主、ママのお使いか~?」と売られた喧嘩に勝って、派手に打ち負かす流れが来ると期待していたのに!
大男は腕を空に伸ばすと、片手で持つような小さな斧を召喚した。魔法陣もないのに、どうして?
「フランキスカ……具現化スキルか。面倒だな」
(具現化スキル)
何か、格好良い!
興奮していると、遊びじゃないんだぞ、と男性のくぐもった声で静かに諫められた。
はい、とエマはしょんぼりと返答した。顔に出ていたようだ。
エマの目の前に、ゴッツイ金物がぶら下げられた。
「この道をまっすぐ行った先に騎士団の詰め所がある。そこで応援を呼んで来てくれ。オルトランジェ王立騎士団スキル特務部隊のアルフレッド・リースナーからの応援要請だと言えば分かる」
(スキル特務部隊?!)「わっ! 分かりました!」
それを受け取る。ついでだから大男のスキルももらって行こう。
男が飛びかかってきた次の瞬間、身体強化と速度上昇を使って、男の顔面に膝蹴りを叩き込むと、頭をわし掴んでスキルを発動! スキルとステータスだけに狙いを定めて、エマは吸い上げる。ウィンドウが、複数回現れる。
『【邪龍の使徒】を入手しました』
「うん?!」
突然、湧き上がる。
熱を纏う衝動。思考を一点に支配される感覚。
憎い……憎い、憎い憎い憎い!
私を見下してきた兄妹が、私を認めてくれなかった両親が、一緒になって、私をゴミのように扱ってきた使用人が、自分の身可愛さに見捨ててきたサニアが!
「エマ・エルフィールド!」
自分の声だ──────────舞だ。
【邪竜の使徒】を大男にビンタを食らわす形で即座に突っ返す。
エマは倒れる大男を踏み台に大きく跳躍。アルフレッドが行けと言った、騎士団の詰め所へ駆けて行った。
質屋はギリギリ間に合った。メイド服でぬいぐるみ諸々を売り払うのに事情を説明すれば、本人確認もなく売ることができた。このガバガバ具合はありがたい。
そしてもう一つ、ちょっと変なお願いをした。
「どうですか?」
「あぁ、どこから見ても男の子だ」
店主の奥さんに長かった髪を切ってもらった。その後、店内にある男の子が着る服をその場で購入し、着替えたメイド服も売り払った。顔にはそばかすも付けてある。
男の子に変身したエマは質屋の老夫婦と別れを告げ、夜の帳の落ちた城下町にある目的の建物へ。
(冒険者ギルド!)
舞もエマも行きたくて仕方がなかった場所。
冒険者ギルドのギルドカードは身分証になる。これを入手できれば国の外にも出られるはず。
それに依頼をこなしながらお金も貯められる。一石二鳥だ。でも、今日はもう遅いから確認だけにしようと思う。寝床も確保してある。宿は既にお金も支払っているから、今日はゆっくり眠れるだろう。
その道中、大きな縦揺れの地震が起きて、エマは前にバターンと倒れた。道行く人達も何人か倒れていた。
気を取り直して、辿り着いた冒険者ギルド。大きな建物だ。貴族の屋敷のような風貌ではないが、洋装の立派な施設である。その扉を開こうとした次の瞬間、体にぴんっと緊張が走った。すぐにその場を飛び退くと、扉を破壊して大きな男が飛んできた。大男は路上をゴロゴロゴロっと転がっていく。さすがは実力主義集団、暴力で全てを解決!
「少年、大丈夫か」
(やはり、暴力……暴力は全てを解決する……)「あっ! はい!」
自分が心配されているのだと数秒遅れて返事をしたエマは声を掛けてきた人物を見上げた。
ギルドの戸口から溢れる光に照らされた白い髪。まるで雪のように白い髪を上で一つにくくっている。
その顔には、お面。鼻のような凹凸のない、のっぺりとした白い面だ。
その面に空いている穴から、青く澄んだ冬空のような青い瞳が光って見えた。
「冒険者ギルドに用があったのなら、今日は帰りなさい。危険だ」
「えっ?」
「うぅぅ……がぁっ!」
先程の大男が獣のように大きな口を開けて吠えた。白目を剥き歯が数本折れている様子からも、明らかに尋常ではない。そして、男の全身から紫色に光る靄が、湯気のように揺らめいている。
さっき走った緊張は、きっとスキルの『危機察知』による自己防衛の反応だったのだろう。早速役に立ってくれてありがたい限りだ。
壊れた戸口からは、喧騒というにはほど遠い大騒ぎ。暴動、といった方が正解だろうか。物の割れる音、「目を覚ませ!」と切に願う大声、そして先程の男が上げた獣のような雄叫びが複数。確かに、尋常ではない雰囲気だ。
「何だ坊主、ママのお使いか~?」と売られた喧嘩に勝って、派手に打ち負かす流れが来ると期待していたのに!
大男は腕を空に伸ばすと、片手で持つような小さな斧を召喚した。魔法陣もないのに、どうして?
「フランキスカ……具現化スキルか。面倒だな」
(具現化スキル)
何か、格好良い!
興奮していると、遊びじゃないんだぞ、と男性のくぐもった声で静かに諫められた。
はい、とエマはしょんぼりと返答した。顔に出ていたようだ。
エマの目の前に、ゴッツイ金物がぶら下げられた。
「この道をまっすぐ行った先に騎士団の詰め所がある。そこで応援を呼んで来てくれ。オルトランジェ王立騎士団スキル特務部隊のアルフレッド・リースナーからの応援要請だと言えば分かる」
(スキル特務部隊?!)「わっ! 分かりました!」
それを受け取る。ついでだから大男のスキルももらって行こう。
男が飛びかかってきた次の瞬間、身体強化と速度上昇を使って、男の顔面に膝蹴りを叩き込むと、頭をわし掴んでスキルを発動! スキルとステータスだけに狙いを定めて、エマは吸い上げる。ウィンドウが、複数回現れる。
『【邪龍の使徒】を入手しました』
「うん?!」
突然、湧き上がる。
熱を纏う衝動。思考を一点に支配される感覚。
憎い……憎い、憎い憎い憎い!
私を見下してきた兄妹が、私を認めてくれなかった両親が、一緒になって、私をゴミのように扱ってきた使用人が、自分の身可愛さに見捨ててきたサニアが!
「エマ・エルフィールド!」
自分の声だ──────────舞だ。
【邪竜の使徒】を大男にビンタを食らわす形で即座に突っ返す。
エマは倒れる大男を踏み台に大きく跳躍。アルフレッドが行けと言った、騎士団の詰め所へ駆けて行った。
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