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17話 幸せの味
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アリアの部屋として使っている、元々エマの物だった物もいらないだろう。ベッドなどの家具は置いていくが、思い出のぬいぐるみ、もらったたくさんの本、そしてエマがかつて着ていた服などをマジックバッグに詰め込んだ。
どんどん思い出の品が部屋から消えていくと、物悲しい気分になる。
そこに丁度、サニアが青い顔で駆け付けてきた。
「お嬢様、賊です! こちらへ!!」
「待ってサニアさん……おぉおぉお?」
とても強い勢いで引っ張られて、落ち着いたところに連れて行かれると、彼女はとある絵画をスライドさせた。隠し部屋だ。ここに隠れて、という意味なのだろう。
大慌てで事情を説明すると、サニアは目を丸くして大慌て。
自分も殴られると思ったのだろうか、これまでの連中のことを考えると同類視されているとは思うだろう。
だから、サニアにはゆっくり話をする時間をもらった。
お菓子とお茶が欲しいからお湯をもらいに行ったら、テメェに出す飯はないとわめいた料理長達をぶっ飛ばした。調理器具も食べ物も散乱したが気にしない。
サニアは顔を真っ青にしていたが、ヤカンに水を入れて使用人室へと持って行った。水は、スキルで加熱する。
お菓子は、エマの大好きなマドレーヌ。
「今日で家を出るの。でも、ターナーが貴族としてあるまじき行為を行っていたから、それを摘発するわ。その証拠も集めたものを提出します」
「え……」
そうなれば、家は取り潰しになる。サニアも行き先を失う。それが分かったのだろう、顔が真っ青だ。
でも、それ以上は言わなかった。
「騎士団が家の中を捜索することになるわ。もちろん、使用人室も例外じゃない。クローゼットの中は今日中に処分してほしいの。さすがに、皿の上の物はまずいわ」
「えっ!? そ、そんなぁ!」
「貼ってある物も念のため処分しておいて。あなたのスキルなら、また思い出を写し出せるでしょう?」
サニアはしょんぼりとする。
そういえば、サニアのスキルをまだ返却していない。エマは心で念じて、体からふっと力が抜ける感覚に一息吐く。
「そうね……もしあれなら、そのスキルを使って広告代理店で働いたり、もしくはお店のチラシを銅貨1枚で10枚刷ってみたりするのはどうかしら? あなたの念写スキルなら、きっと簡単にたくさんの物を刷り上げられると思うの」
「えっ?」
働き先が見つからなかった時のために、副業としても良いだろう。サニアのスキルは彼女自身のセンス次第でデザイン業に向いている。パソコンやスキャナー、コピー機がないこの世界では、まだカラー印刷は定着していない。多色刷りも行われておらず、黒い文字を打つだけの活版印刷だ。
写真入りのビラであれば、人捜しの告知もできる。モンスターの図鑑を見たことがあるが、それも手描きだった。特徴が分かりやすいだろう。何より、サニアのスキルは精度が違う。
「だから、薬代の方を稼ぐ方法を、働くだけではなくて別の方面からも考えてみてほしいの」
「お嬢様……」
「人の役に立つことに使えれば収入につながるわ。頑張ってみて」
マドレーヌを一口。
甘くておいしい。まだ、自分が普通の令嬢だった頃の、幸せな味がした。
どんどん思い出の品が部屋から消えていくと、物悲しい気分になる。
そこに丁度、サニアが青い顔で駆け付けてきた。
「お嬢様、賊です! こちらへ!!」
「待ってサニアさん……おぉおぉお?」
とても強い勢いで引っ張られて、落ち着いたところに連れて行かれると、彼女はとある絵画をスライドさせた。隠し部屋だ。ここに隠れて、という意味なのだろう。
大慌てで事情を説明すると、サニアは目を丸くして大慌て。
自分も殴られると思ったのだろうか、これまでの連中のことを考えると同類視されているとは思うだろう。
だから、サニアにはゆっくり話をする時間をもらった。
お菓子とお茶が欲しいからお湯をもらいに行ったら、テメェに出す飯はないとわめいた料理長達をぶっ飛ばした。調理器具も食べ物も散乱したが気にしない。
サニアは顔を真っ青にしていたが、ヤカンに水を入れて使用人室へと持って行った。水は、スキルで加熱する。
お菓子は、エマの大好きなマドレーヌ。
「今日で家を出るの。でも、ターナーが貴族としてあるまじき行為を行っていたから、それを摘発するわ。その証拠も集めたものを提出します」
「え……」
そうなれば、家は取り潰しになる。サニアも行き先を失う。それが分かったのだろう、顔が真っ青だ。
でも、それ以上は言わなかった。
「騎士団が家の中を捜索することになるわ。もちろん、使用人室も例外じゃない。クローゼットの中は今日中に処分してほしいの。さすがに、皿の上の物はまずいわ」
「えっ!? そ、そんなぁ!」
「貼ってある物も念のため処分しておいて。あなたのスキルなら、また思い出を写し出せるでしょう?」
サニアはしょんぼりとする。
そういえば、サニアのスキルをまだ返却していない。エマは心で念じて、体からふっと力が抜ける感覚に一息吐く。
「そうね……もしあれなら、そのスキルを使って広告代理店で働いたり、もしくはお店のチラシを銅貨1枚で10枚刷ってみたりするのはどうかしら? あなたの念写スキルなら、きっと簡単にたくさんの物を刷り上げられると思うの」
「えっ?」
働き先が見つからなかった時のために、副業としても良いだろう。サニアのスキルは彼女自身のセンス次第でデザイン業に向いている。パソコンやスキャナー、コピー機がないこの世界では、まだカラー印刷は定着していない。多色刷りも行われておらず、黒い文字を打つだけの活版印刷だ。
写真入りのビラであれば、人捜しの告知もできる。モンスターの図鑑を見たことがあるが、それも手描きだった。特徴が分かりやすいだろう。何より、サニアのスキルは精度が違う。
「だから、薬代の方を稼ぐ方法を、働くだけではなくて別の方面からも考えてみてほしいの」
「お嬢様……」
「人の役に立つことに使えれば収入につながるわ。頑張ってみて」
マドレーヌを一口。
甘くておいしい。まだ、自分が普通の令嬢だった頃の、幸せな味がした。
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