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12話 マリアエル
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「くそっ! あの下等生物!! ゴミクズのくせに、私に刃向かうなんて!! ゴミ風情が! ゴミゴミゴミゴミゴミゴミクズがっ!!」
アリアは怒りに顔を歪めながら吐き捨てて母のマリアエルのいる部屋へと駆け込んだ。
赤く腫れた頬を見たマリアエルは、どうしたの?! と声を荒げて駆け寄ってきた。アリアはお母様! と泣きつく。
「エマがまた私を殴ったの! 私、何もしてないのに!」
「まったく、あの馬鹿は何度言ったら分かるのか……」
美しいマリアエルは、疲れたように眉間にしわを寄せる。
アリアはどんどん、ないことばかり言葉を連ねた。いつもアリアがエマに思っていることを、並べ立てて泣きじゃくる。
「また、アレには仕置きが必要なようだ」
マリアエルの言葉を聞いて、アリアは腕の中でほくそ笑んだ。
今度こそ、あのゴミがギタギタにされるところを見られるのだと思うと、心が躍った。
*
マリアエルはかつてターナーと同じ魔法師団に務めていた。王立魔法師団は部隊の数字が小さければ小さいほどトップ集団と差別化されている。
そしてマリアエルは第2部隊で団長を務めていた。両親の借金のカタがなければ、ずっと言い寄ってきていたターナーの元に嫁ぐことなく今も現役だっただろう。
聖属性の中でも稀少なスキルである『浄光』を持って生まれたアリア。アリアこそマリアエルの存在を証明してくれる。
『盗用』スキルを持っていたエマのせいで、家の……否、マリアエルへの信用は落ちていく一方だった。
神からの祝福と呼ばれるスキルに犯罪まがいのものがあるのは知っていたが、それは子供の魂が前世に犯罪を犯したからだと言われている。だから、マリアエルは犯罪者の子供を賜ったのだと、まことしやかに騒がれた。
一部の人間は気にするなと言ってくれたが、両親を含めターナーまでもマリアエルを軽蔑するようになった。しかも、ターナーからはどこかで子種を拾ってきたのだろうという謂われのない侮辱まで受けた。贔屓にしていた店主達からも冷ややかな視線を向けられるようになった。使用人までも
しかしアリアのお陰で全てがうまくいくようになった。
今まで不遜な態度を取っていた連中も掌を返すようにマリアエルへの態度を変えた。
エマのことはあったが、さすがは元第2部隊長だと誰もがマリアエルの元来持つ能力と人間性を認めたのだ。
そう、誰もがマリアエルより下等だったのだ。
だからこそ、スキルに頼るだけの無能集団の集まりである部署までできた。有能なスキルを持つ人間なら犯罪者でも受け入れるという堕落っぷりだ。
無能な平民や、おぞましき犯罪者の血が流れている連中を、神聖な王城に入れておくなど言語道断。
登城が許されるのはマリアエルのように優秀な人間のみ。
「アリア、今日は特段キツく灸を据える。お前は私の娘だ。私の使う魔法をしっかり見ていなさい」
マリアエルの持つスキル『聖属性魔法強化』はパッシブスキル。
聖属性魔法を使うだけで常に発動する。
どうせ明日にはもうエマは家から消えるが、片足が使い物にならなくしてしまおう。マリアエルの躾を受けてなお、傲岸不遜で態度を改めようとしない。
アリアを馬鹿にすることは、マリアエルのことも馬鹿にしているからに外ならない。
何度諫めても態度を改めようとしない。いつまでも自分が侯爵令嬢でいるつもりのようだ。
ならば、自分がこの家の人間んではないことの意識を植え付けるには、罰が必要なのだろう。今まで通りでは、いつまでたっても悔い改めることをしないのだから。
「あれはもう、この家の人間ではない。お前も、人々の上に立つ者として人間の風上にも置けないような人間をきちんと戒める方法を覚えておきなさい」
「はぁい、お母様♪」
アリアは怒りに顔を歪めながら吐き捨てて母のマリアエルのいる部屋へと駆け込んだ。
赤く腫れた頬を見たマリアエルは、どうしたの?! と声を荒げて駆け寄ってきた。アリアはお母様! と泣きつく。
「エマがまた私を殴ったの! 私、何もしてないのに!」
「まったく、あの馬鹿は何度言ったら分かるのか……」
美しいマリアエルは、疲れたように眉間にしわを寄せる。
アリアはどんどん、ないことばかり言葉を連ねた。いつもアリアがエマに思っていることを、並べ立てて泣きじゃくる。
「また、アレには仕置きが必要なようだ」
マリアエルの言葉を聞いて、アリアは腕の中でほくそ笑んだ。
今度こそ、あのゴミがギタギタにされるところを見られるのだと思うと、心が躍った。
*
マリアエルはかつてターナーと同じ魔法師団に務めていた。王立魔法師団は部隊の数字が小さければ小さいほどトップ集団と差別化されている。
そしてマリアエルは第2部隊で団長を務めていた。両親の借金のカタがなければ、ずっと言い寄ってきていたターナーの元に嫁ぐことなく今も現役だっただろう。
聖属性の中でも稀少なスキルである『浄光』を持って生まれたアリア。アリアこそマリアエルの存在を証明してくれる。
『盗用』スキルを持っていたエマのせいで、家の……否、マリアエルへの信用は落ちていく一方だった。
神からの祝福と呼ばれるスキルに犯罪まがいのものがあるのは知っていたが、それは子供の魂が前世に犯罪を犯したからだと言われている。だから、マリアエルは犯罪者の子供を賜ったのだと、まことしやかに騒がれた。
一部の人間は気にするなと言ってくれたが、両親を含めターナーまでもマリアエルを軽蔑するようになった。しかも、ターナーからはどこかで子種を拾ってきたのだろうという謂われのない侮辱まで受けた。贔屓にしていた店主達からも冷ややかな視線を向けられるようになった。使用人までも
しかしアリアのお陰で全てがうまくいくようになった。
今まで不遜な態度を取っていた連中も掌を返すようにマリアエルへの態度を変えた。
エマのことはあったが、さすがは元第2部隊長だと誰もがマリアエルの元来持つ能力と人間性を認めたのだ。
そう、誰もがマリアエルより下等だったのだ。
だからこそ、スキルに頼るだけの無能集団の集まりである部署までできた。有能なスキルを持つ人間なら犯罪者でも受け入れるという堕落っぷりだ。
無能な平民や、おぞましき犯罪者の血が流れている連中を、神聖な王城に入れておくなど言語道断。
登城が許されるのはマリアエルのように優秀な人間のみ。
「アリア、今日は特段キツく灸を据える。お前は私の娘だ。私の使う魔法をしっかり見ていなさい」
マリアエルの持つスキル『聖属性魔法強化』はパッシブスキル。
聖属性魔法を使うだけで常に発動する。
どうせ明日にはもうエマは家から消えるが、片足が使い物にならなくしてしまおう。マリアエルの躾を受けてなお、傲岸不遜で態度を改めようとしない。
アリアを馬鹿にすることは、マリアエルのことも馬鹿にしているからに外ならない。
何度諫めても態度を改めようとしない。いつまでも自分が侯爵令嬢でいるつもりのようだ。
ならば、自分がこの家の人間んではないことの意識を植え付けるには、罰が必要なのだろう。今まで通りでは、いつまでたっても悔い改めることをしないのだから。
「あれはもう、この家の人間ではない。お前も、人々の上に立つ者として人間の風上にも置けないような人間をきちんと戒める方法を覚えておきなさい」
「はぁい、お母様♪」
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