盗人令嬢にご注意あそばせ〜『盗用』スキルを乱用させていただきます!

星見肴

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8話 使用不可?!

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 一つ判明したことがある。
 それは、スキルは物を介して奪えないことだ。先程から何度もアリアに向けてスキルを奪おうと挑戦しているが胸が温まる感覚がない。直接触れないと駄目なのだ。ただ、服越しには奪える。

 痛い、止めてと言えば言うほど狂ったように笑うアリアに、

(こんなカスが妹とか、エマ可哀想……)

 自分自身に憐憫すら覚えてきた。多分、今は舞の気持ちの方が勝っているのだ。この生意気なクソガキの茶番にいつまでも付き合えば良いんだろう、暇だ。

 痛みを感じないだけで今の状況がアホらしくなってきた。

 暇過ぎるのに逃げられない。
 そうだ、家ごと破滅させよう。父親の書斎に何かの不正な証拠品あるだろう。帳簿とか。サニアのスキルパクって念写で同じ物作ってやろう。それで、本物を然るべき機関に提出してやろう。郵送で。

 その時、扉がガチャリと開いた。

「うるさいぞ」

 亜麻色の髪を伸ばし、片側で三つ編みに結っているロレンスだ。身長も成長期の男子らしく順調に身長を伸ばし、もう170センチにもなる。

「いつまでもそんな『』を部屋に転がしておくつもりだ」

 すぐにアリアは「お兄様!」と甘い声を上げて、杖を抱き締めた。
 その瞬間、エマはアリアの靴に触れて『盗用』スキルを発動させる。いつも通り胸に温かく灯って、無機質な画面が出て来た。

『スキル【浄光】(使用不可)を入手しました』

(使用不可?!)

 アリアがエマの手を振りほどくように蹴り上げて、ロレンスの元へと走っていく。

「あの女ったら酷いのよ、自分が被害者みたいに言って、階段から落ちたのは私のせいだっていうの!」
「お前が悪いことをしていないことぐらい、皆知っているよ。だから、こんなのに構うな」
(なんで、スキルが使えないの? もしかしてスキルの一部にはその人固有の……――あっ! 属性だ!)

 エマとアリアの属性は正反対だ。エマが闇属性なのに対してアリアは光属性。この属性は相反するもの。きっとその影響で使えないのだ。

(なら、属性も奪えないかやってみよう)

 冷静にそんな思考が浮かぶ。
 相反すると言っても、伝説の魔法師は全属性を保持していたと記録がある。持てる人間は持てるのだ。
 エマには無理かもしれない。全属性を持てるような偉大な魔法師なんて、夢のまた夢の話だ。そんなすごい人間じゃないのは自分でも分かってる。

 でも、無理だと判断するのは、やってみてからでも遅くない。
 だって、そうじゃなきゃこんな便利なスキル与えられない。
 だってスキルは、

(神様からの、贈り物なんだから)

 エマはむくりと体を起こす。
 かつての兄と妹を睨み付ける。
 それは、決別の意志を持って。
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