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6話 サニアのスキル
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今日だけで何回も見た、無機質な画面がエマの目の前に浮かび上がる。
『スキル【念写】を入手しました!』
なるほど? ロレンスの鮮明な写真はサニアのスキルによるものだったのか。
確かにサニアは一時期、ロレンスの側仕えだった。入浴にも付き添っていた。小等部の頃は学校にもついて行っていた。彼女なら、ロレンスの様々な場面を見る事ができただろう。
念写のレベルが気になって、ステータス欄を開く。
*
エマ・エルフィールド 9歳
Lv 3
体 力 70 魔 力 6740
攻撃力 15 魔法攻撃 322
防御力 19 魔法防御 270
速 度 7
属 性 闇
スキル『盗用』Lv.2
・清掃 Lv.MAX ・気配察知 Lv.42
・身体強化 Lv.36 ・裁縫 Lv.22
・縮地 Lv.62 ・槍術 Lv.27
・剣術 Lv.30 ・鑑定 Lv.48
・念写 Lv.26
アビリティ
*
普通ぐらいだ。それでもあれだけ鮮明な画像が写し出せるのはすごい。エマはステータスを閉じる。
「全部、スキルで写したの?」
「そ、そうなんです! お金は全部母の薬代に消えているんです! なので、写真機なんて買う余裕は……」
「サニアさん、でも盗撮は犯罪よ。それにクローゼットの中を見せたらパパ……――旦那様達は、きっとあなたを解雇してしまうわ」
それだけは止めてくだい! とサニアは土下座で頭を下げる。
「お嬢様の言うことを何でも聞きます! 何でもいたしますからぁぁあああ!」
「なら、私が寝ている間、倉庫の掃除をこっそりやってくれていたことにしてくれない?」
「へ?」
エマは笑うだけ。詳細は教えなくて良い。
だがその笑顔だけで、サニアは了承した。
(そう言えば、スキルを一つだけ返したりできるのかな?)
返そうと思ったら全部返却されてしまうだろうか? それとも、盗んだら盗んだっきりなんだろうか?
そう考えて、念写スキルだけを手放すイメージをした。念写という漢字をふわっと空中に浮かべるイメージだったが、体の中から少し、力が抜けたように感じた。
スキルがなくなったんだ。エマは改めてステータスを開く。
他の人達のスキルは残っていたが、サニアの『念写』スキルだけは、ステータスからなくなっていた。
*
料理長達にも会ってスキルを奪い取っておいた。
これで夜中にいっぱいおいしいマドレーヌが作れると、掃除にも気合が入った。舞の記憶にはマドレーヌのレシピもあった。
(マドレーヌって、パウンドケーキと同じで分量が全て同じなのね!)
エマでも簡単に作れそうだ。いっぱい作ろう。そうしたら、いっぱい食べられる!
いつものように仕事が終わらないふりをして、ミザリーの元へ定時の報告に使用人休憩室へ向かう途中。
「くそっ! 何でこんな料理しか作れないんだ?!」
ぶくぶくに太っている料理長が、炒め物のような料理を前に帽子を床に叩き付けた。
頭をガシガシと掻きむしる。
じっと見ていたエマに気付いた料理長が、ヤクザ顔負けの面構えで「こっち見てんじゃねぇ!」と怒鳴られると、大慌てで使用人休憩室へ逃げ込んだ。
『スキル【念写】を入手しました!』
なるほど? ロレンスの鮮明な写真はサニアのスキルによるものだったのか。
確かにサニアは一時期、ロレンスの側仕えだった。入浴にも付き添っていた。小等部の頃は学校にもついて行っていた。彼女なら、ロレンスの様々な場面を見る事ができただろう。
念写のレベルが気になって、ステータス欄を開く。
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エマ・エルフィールド 9歳
Lv 3
体 力 70 魔 力 6740
攻撃力 15 魔法攻撃 322
防御力 19 魔法防御 270
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・清掃 Lv.MAX ・気配察知 Lv.42
・身体強化 Lv.36 ・裁縫 Lv.22
・縮地 Lv.62 ・槍術 Lv.27
・剣術 Lv.30 ・鑑定 Lv.48
・念写 Lv.26
アビリティ
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普通ぐらいだ。それでもあれだけ鮮明な画像が写し出せるのはすごい。エマはステータスを閉じる。
「全部、スキルで写したの?」
「そ、そうなんです! お金は全部母の薬代に消えているんです! なので、写真機なんて買う余裕は……」
「サニアさん、でも盗撮は犯罪よ。それにクローゼットの中を見せたらパパ……――旦那様達は、きっとあなたを解雇してしまうわ」
それだけは止めてくだい! とサニアは土下座で頭を下げる。
「お嬢様の言うことを何でも聞きます! 何でもいたしますからぁぁあああ!」
「なら、私が寝ている間、倉庫の掃除をこっそりやってくれていたことにしてくれない?」
「へ?」
エマは笑うだけ。詳細は教えなくて良い。
だがその笑顔だけで、サニアは了承した。
(そう言えば、スキルを一つだけ返したりできるのかな?)
返そうと思ったら全部返却されてしまうだろうか? それとも、盗んだら盗んだっきりなんだろうか?
そう考えて、念写スキルだけを手放すイメージをした。念写という漢字をふわっと空中に浮かべるイメージだったが、体の中から少し、力が抜けたように感じた。
スキルがなくなったんだ。エマは改めてステータスを開く。
他の人達のスキルは残っていたが、サニアの『念写』スキルだけは、ステータスからなくなっていた。
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料理長達にも会ってスキルを奪い取っておいた。
これで夜中にいっぱいおいしいマドレーヌが作れると、掃除にも気合が入った。舞の記憶にはマドレーヌのレシピもあった。
(マドレーヌって、パウンドケーキと同じで分量が全て同じなのね!)
エマでも簡単に作れそうだ。いっぱい作ろう。そうしたら、いっぱい食べられる!
いつものように仕事が終わらないふりをして、ミザリーの元へ定時の報告に使用人休憩室へ向かう途中。
「くそっ! 何でこんな料理しか作れないんだ?!」
ぶくぶくに太っている料理長が、炒め物のような料理を前に帽子を床に叩き付けた。
頭をガシガシと掻きむしる。
じっと見ていたエマに気付いた料理長が、ヤクザ顔負けの面構えで「こっち見てんじゃねぇ!」と怒鳴られると、大慌てで使用人休憩室へ逃げ込んだ。
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