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1話 エマ、目を覚ます
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頭が痛い……。
そう思って、部屋の床で目を覚ます。
(私、また倒れて……)
「はっ! いけない、今日のプロジェクトの資料の完成が……――って、え?」
狩津舞、見覚えのない部屋で目覚める。床も木板が敷き詰められていて、フローリングではない。床に寝ていることは何度もあったけど、知らない他人の部屋で仕事をした? いや、そんなはず……。
いや違う。
そう突然はっきりと意識する。
ここは私の部屋。エマの部屋だ。
そう、私はエマ・エルフィールド。妹のアリアに階段から突き落とされて気絶した。頭を打ったが生きている。運は良かった。
ゆっくりゆっくり、記憶が馴染んでくる。
エマの前世、狩津舞として生きてきた日々……そして今、エマとして生きてきた記憶。
「…………………あ"ぁ"?」
無性に腹が立った。これまでエマが積んできた人生を追体験した舞は思わず枕を壁にぶん投げた。
ごめん枕さん、あなたに罪はないのと拾い上げる。でも腹が立って枕を両腕で抱き潰した。
スキルごときで、こんな子供があんな酷い仕打ちを受けなければならないのか。
貴族の侯爵サマを気取った脳味噌ゴミ屋敷の下等生物共が、貴族の面汚しめと、罵詈雑言がブツブツと口か溢れ出る。
「スキルなんだから普通の『盗用』な訳がないだろーが……!」
ここはなんて言ったって異世界。魔法と剣の世界なのだ。不思議なことがいっぱい起きて当たり前。
しかもスキルは神様からの贈り物だという。
狩津舞。アラサー超えたヲタ女、趣味はゲーム、漫画。好みジャンルはファンタジー。
まずはこの家から逃げるためにどうすべきか、それに伴って何をすべきか。日本語で書き記していけば、エルフィールド家の人間に喧嘩を吹っ掛ける気満々だった舞の感情が静けさを取り戻した。
エマに戻ったのだ。これで、今まで通りの私。
だけれど、独りぼっちだった私とは違う。
今まではどうして良いか分からなかった。ただひたすら耐えていくしかないと諦めていた。こんな私を求めてくれる婚約者が現れるまで。
だが今は、両親や家族に依存していた気持ちが水に溶けるように消え失せた。
それは、舞という人間が誰よりもエマの味方になってくれたから。
そして彼女の記憶が、一人でも生きていけるのに十分な知識をエマに与えてくれたから。
(私は要らない子……なら、もう自由に生きて良い……この家を離れて、外の世界を見に行っても良いの!)
光を浴びて煌めく生き生きと生命を広げている緑達、色とりどりの美しい魚達が泳ぎ回り水中という幻想世界に存在する都市……もしかしたら晴れ渡っている蒼天に浮かぶ空中都市があるかもしれない!
期待に胸が膨らんだ。
ならば、やることは決まった。
全てを奪ってやる。スキルも、地位も、名誉も。
『盗』という文字は、そういう意味なのだから。
そう思って、部屋の床で目を覚ます。
(私、また倒れて……)
「はっ! いけない、今日のプロジェクトの資料の完成が……――って、え?」
狩津舞、見覚えのない部屋で目覚める。床も木板が敷き詰められていて、フローリングではない。床に寝ていることは何度もあったけど、知らない他人の部屋で仕事をした? いや、そんなはず……。
いや違う。
そう突然はっきりと意識する。
ここは私の部屋。エマの部屋だ。
そう、私はエマ・エルフィールド。妹のアリアに階段から突き落とされて気絶した。頭を打ったが生きている。運は良かった。
ゆっくりゆっくり、記憶が馴染んでくる。
エマの前世、狩津舞として生きてきた日々……そして今、エマとして生きてきた記憶。
「…………………あ"ぁ"?」
無性に腹が立った。これまでエマが積んできた人生を追体験した舞は思わず枕を壁にぶん投げた。
ごめん枕さん、あなたに罪はないのと拾い上げる。でも腹が立って枕を両腕で抱き潰した。
スキルごときで、こんな子供があんな酷い仕打ちを受けなければならないのか。
貴族の侯爵サマを気取った脳味噌ゴミ屋敷の下等生物共が、貴族の面汚しめと、罵詈雑言がブツブツと口か溢れ出る。
「スキルなんだから普通の『盗用』な訳がないだろーが……!」
ここはなんて言ったって異世界。魔法と剣の世界なのだ。不思議なことがいっぱい起きて当たり前。
しかもスキルは神様からの贈り物だという。
狩津舞。アラサー超えたヲタ女、趣味はゲーム、漫画。好みジャンルはファンタジー。
まずはこの家から逃げるためにどうすべきか、それに伴って何をすべきか。日本語で書き記していけば、エルフィールド家の人間に喧嘩を吹っ掛ける気満々だった舞の感情が静けさを取り戻した。
エマに戻ったのだ。これで、今まで通りの私。
だけれど、独りぼっちだった私とは違う。
今まではどうして良いか分からなかった。ただひたすら耐えていくしかないと諦めていた。こんな私を求めてくれる婚約者が現れるまで。
だが今は、両親や家族に依存していた気持ちが水に溶けるように消え失せた。
それは、舞という人間が誰よりもエマの味方になってくれたから。
そして彼女の記憶が、一人でも生きていけるのに十分な知識をエマに与えてくれたから。
(私は要らない子……なら、もう自由に生きて良い……この家を離れて、外の世界を見に行っても良いの!)
光を浴びて煌めく生き生きと生命を広げている緑達、色とりどりの美しい魚達が泳ぎ回り水中という幻想世界に存在する都市……もしかしたら晴れ渡っている蒼天に浮かぶ空中都市があるかもしれない!
期待に胸が膨らんだ。
ならば、やることは決まった。
全てを奪ってやる。スキルも、地位も、名誉も。
『盗』という文字は、そういう意味なのだから。
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