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2章 誘拐・融解事件
45話 届いた犯行予告状
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マルスは和葉達に男達から証言を得るのは待っていてほしいと言い残して彼女達を近くの駐在所まで送り届けに行った。元々マルス達は休暇中。そこで事件を発見したなら、近くの軍人達で対応するのが軍規だそうだ。その間に和葉達は冒険者ギルドに逃げ帰った。
夜七時頃、冒険者ギルドに帰ると、ちょっとしたアクシデントが発生していた。
「カズハ、これなんだが……」
ケイとデイヴィスが呆れた顔をした。
黒い封筒に箔押しされた妖精の羽根の模様。ただし、その表面にはデカデカと金色の文字で『ギメイへ』と書いてある。
「どうだと思う?」
「中身次第ですが……」
「中身は犯行予告も兼ねている。ただ、内容が『もう一人殺してヒントをやろう。ギメイ、僕を探せるでしょうか?』だ。ブレーメンからの予告状のつもりらしい」
「はぁ?」
苛立ったように吐き捨てたのはジェシカだ。彼女は和葉宛てのブレーメンの手紙の内容を見ているし、筆跡鑑定も引き受けてくれている。和葉が見ても、筆跡は違うし、手紙の文面も明らかに違う。
「真似るならもっと真似しなさいってーの。『拝啓、ギメイ君。この前も見事な推理で事件解決へ導いてくれて感謝いたします。まさかあそこでシルヴァーニュ伯爵をロリコンだと推理したのには驚きましたが、何故そのトンチキな推理からアプローチを決めておいて、答えにちゃんと辿り着くのか甚だ疑問です。是非ともその答えまで導き出した思考プロセスをお聞かせ願いたいですね。もちろん、君がフェアリーテイルのメンバーとして来てくれたらの話ですが。それでは前文はここまでにして、今回は僕自身を探し出すゲームでもしてもらいましょうかね』が前文よ!」
ジェシカが思わぬ方向にプチ切れした。
シルヴァーニュ伯爵うんぬんは和葉も知らない。手紙の内容を読んで筆跡を鑑定してきたジェシカが、ブレーメン風の口調で適当に作った内容だ。ただ表現の完成度がえぐくて和葉はぞっとした。本当に、いつか似たような手紙が来そうだ。
手紙がギルドに持ち込まれたのは、和葉達が出て行った後。
「五時半前だ。看板上に置いてあったことに気づいた人が、わざわざ職員に渡してくれた」
「看板って折りたためるスタンド式の、やつですよね?」
「レムレスの話ではそうだ」
「五時半前といったら、通り雨が降っていました。私達も移動中に雨に降られている。でもこの封筒と手紙に濡れた痕跡がない。本当に置いてあったなら濡れていて読めない」
はっとケイとデイヴィスが顔を見合わせる。
ならば、ギルドにわざわざ渡しに来たその人物は何者か。
この間、触ったのはレムレスとケイぐらい。ジェシカに指紋採取ついでに、レムレスにその人物の人相と雨に濡れていなかったかを聞いてくるよう頼んだ。忘れずにインクの成分鑑定も同時に頼む。
それと、先程からサビータが待ち遠しそうに紙束を持っているので、話を伺ってみると、今朝和葉が言っていた『アルテミスが単独行動を取った理由』の生徒達の答えがまとまったからだ。
和葉はぺらぺらと捲っていく。一部ロマンチックで珍妙な答えが混ざっていたが、一つ、納得いくものがあった。
「あぁ、なるほど。ミサンガのサプライズプレゼント……」
ミリーやグラシアがミサンガを着けていたのを思い出す。
内容はアルテミスがバルガスや護衛の人達にサプライズプレゼントを計画した、というもの。ミサンガの噂をどこかで聞き、内緒で買ってきてみんなにプレゼントしようという、何とも女性ならではの意見だろうか。
和葉もバルガスからは詳しく聞いていなかったが、『テテ・ルカン』近辺にあるブティックの店名が記載されていた。しかも、リーセルが作ったミサンガを卸している店と、かなり近かった。
「これならアルテミス嬢を単身でおびき出せる」
「何だ、おびき出すって」
「アルテミス嬢はブレーメンが攫っていったんだ。今頃、彼女は上質な接待を受けて事件解決まで監禁状態を強いられているだけで、命の保証は完璧です」
デイヴィスがげんなりとした顔で表情を引きつらせた。
ブレーメンは冤罪事件を使って事件を捜査させるが、あれは愉快犯だ。
証言者の何人かには子供や妻が人質に取られたと泣き喚き、協力せざる負えなかったと証言する人もいる。しかし、しばらくしたら旅行から帰って来たと喜んで報告してくるのだ。キレそうだったのを思い出して頭が痛くなってきた。
「アルテミス嬢の誘拐を行った狙いは『帝都封鎖』を誘発させること。ブレーメンならば犯人の目星がついているんだろう……いや、彼の場合、犯罪者の犯行を洗い出すのは得意分野か」
「アイツが、手を貸してるだとぉ?」
デイヴィスの心底嫌そうな声に、「何だとぉ?」と冒険者達がわらわらやって来るが、言えることはこれしかない。
犯人達に動きが出たとはっきり言えるのは、犯行予告の手紙と昨日の殺害事件だけだ。
「もし仮に『帝都封鎖』が起きると、相手にとって何がまずいんだ?」
「……血液、だろうか。今回、マルスさんは血液を抜いていないと言っていた。もし仮に、血液を抜くのを帝都の外で行っているとしたら、往復で一週間強になる範囲……」
「待った待った、そうなると帝国の地図も必要になるだろう。今持って来る……」
「はい、これ」
「ありがとう、サビータさん……うん? 今、どこから出しました?」
サビータの服の袖に空間魔法が常時展開してあって、任意の場所にある物の近くに空間の穴を配置して、引っ張り出せるそうだ。和葉もその魔法を覚えたいと胸が高鳴った時だ。
「サビータ、お前は何をしてるんだ」
扉を開けた先、ケイがちょっと困ったように来客者を先に入れた。
ダニエルとアッシュ……もとい、アシュレイだった。
夜七時頃、冒険者ギルドに帰ると、ちょっとしたアクシデントが発生していた。
「カズハ、これなんだが……」
ケイとデイヴィスが呆れた顔をした。
黒い封筒に箔押しされた妖精の羽根の模様。ただし、その表面にはデカデカと金色の文字で『ギメイへ』と書いてある。
「どうだと思う?」
「中身次第ですが……」
「中身は犯行予告も兼ねている。ただ、内容が『もう一人殺してヒントをやろう。ギメイ、僕を探せるでしょうか?』だ。ブレーメンからの予告状のつもりらしい」
「はぁ?」
苛立ったように吐き捨てたのはジェシカだ。彼女は和葉宛てのブレーメンの手紙の内容を見ているし、筆跡鑑定も引き受けてくれている。和葉が見ても、筆跡は違うし、手紙の文面も明らかに違う。
「真似るならもっと真似しなさいってーの。『拝啓、ギメイ君。この前も見事な推理で事件解決へ導いてくれて感謝いたします。まさかあそこでシルヴァーニュ伯爵をロリコンだと推理したのには驚きましたが、何故そのトンチキな推理からアプローチを決めておいて、答えにちゃんと辿り着くのか甚だ疑問です。是非ともその答えまで導き出した思考プロセスをお聞かせ願いたいですね。もちろん、君がフェアリーテイルのメンバーとして来てくれたらの話ですが。それでは前文はここまでにして、今回は僕自身を探し出すゲームでもしてもらいましょうかね』が前文よ!」
ジェシカが思わぬ方向にプチ切れした。
シルヴァーニュ伯爵うんぬんは和葉も知らない。手紙の内容を読んで筆跡を鑑定してきたジェシカが、ブレーメン風の口調で適当に作った内容だ。ただ表現の完成度がえぐくて和葉はぞっとした。本当に、いつか似たような手紙が来そうだ。
手紙がギルドに持ち込まれたのは、和葉達が出て行った後。
「五時半前だ。看板上に置いてあったことに気づいた人が、わざわざ職員に渡してくれた」
「看板って折りたためるスタンド式の、やつですよね?」
「レムレスの話ではそうだ」
「五時半前といったら、通り雨が降っていました。私達も移動中に雨に降られている。でもこの封筒と手紙に濡れた痕跡がない。本当に置いてあったなら濡れていて読めない」
はっとケイとデイヴィスが顔を見合わせる。
ならば、ギルドにわざわざ渡しに来たその人物は何者か。
この間、触ったのはレムレスとケイぐらい。ジェシカに指紋採取ついでに、レムレスにその人物の人相と雨に濡れていなかったかを聞いてくるよう頼んだ。忘れずにインクの成分鑑定も同時に頼む。
それと、先程からサビータが待ち遠しそうに紙束を持っているので、話を伺ってみると、今朝和葉が言っていた『アルテミスが単独行動を取った理由』の生徒達の答えがまとまったからだ。
和葉はぺらぺらと捲っていく。一部ロマンチックで珍妙な答えが混ざっていたが、一つ、納得いくものがあった。
「あぁ、なるほど。ミサンガのサプライズプレゼント……」
ミリーやグラシアがミサンガを着けていたのを思い出す。
内容はアルテミスがバルガスや護衛の人達にサプライズプレゼントを計画した、というもの。ミサンガの噂をどこかで聞き、内緒で買ってきてみんなにプレゼントしようという、何とも女性ならではの意見だろうか。
和葉もバルガスからは詳しく聞いていなかったが、『テテ・ルカン』近辺にあるブティックの店名が記載されていた。しかも、リーセルが作ったミサンガを卸している店と、かなり近かった。
「これならアルテミス嬢を単身でおびき出せる」
「何だ、おびき出すって」
「アルテミス嬢はブレーメンが攫っていったんだ。今頃、彼女は上質な接待を受けて事件解決まで監禁状態を強いられているだけで、命の保証は完璧です」
デイヴィスがげんなりとした顔で表情を引きつらせた。
ブレーメンは冤罪事件を使って事件を捜査させるが、あれは愉快犯だ。
証言者の何人かには子供や妻が人質に取られたと泣き喚き、協力せざる負えなかったと証言する人もいる。しかし、しばらくしたら旅行から帰って来たと喜んで報告してくるのだ。キレそうだったのを思い出して頭が痛くなってきた。
「アルテミス嬢の誘拐を行った狙いは『帝都封鎖』を誘発させること。ブレーメンならば犯人の目星がついているんだろう……いや、彼の場合、犯罪者の犯行を洗い出すのは得意分野か」
「アイツが、手を貸してるだとぉ?」
デイヴィスの心底嫌そうな声に、「何だとぉ?」と冒険者達がわらわらやって来るが、言えることはこれしかない。
犯人達に動きが出たとはっきり言えるのは、犯行予告の手紙と昨日の殺害事件だけだ。
「もし仮に『帝都封鎖』が起きると、相手にとって何がまずいんだ?」
「……血液、だろうか。今回、マルスさんは血液を抜いていないと言っていた。もし仮に、血液を抜くのを帝都の外で行っているとしたら、往復で一週間強になる範囲……」
「待った待った、そうなると帝国の地図も必要になるだろう。今持って来る……」
「はい、これ」
「ありがとう、サビータさん……うん? 今、どこから出しました?」
サビータの服の袖に空間魔法が常時展開してあって、任意の場所にある物の近くに空間の穴を配置して、引っ張り出せるそうだ。和葉もその魔法を覚えたいと胸が高鳴った時だ。
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