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ボーンネルの開国譚

第十二話 竜の草原

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(ここには一度クレースと来たことがあるだけだから、なんだか緊張するな。)

竜の草原は主にCランクからAランクの魔物が存在しており、Dランクの魔物は存在しない。
竜の草原という名前はずっと奥に竜が存在したという言い伝えから起因したものである。

「それほど魔物は襲ってこないね」

草原の真ん中を突っ切り進んでいたが魔物はジンたちを避けるように道を開けて全く襲ってくる気配はなかった。

「ああ、だが奥に何か居るな。なんというか嫌な気配を感じる」

警戒をする皆をよそにリンギルは一人考え込んでいた。

(この三人やはり別格だ。それに今の俺ではガルにも及ばない······)

「硬いぜ兄弟、比べるメンツが悪いだけだ。お前の背中は俺に任せときな」

心を読まれたことに若干驚きつつもその言葉にリンギルは安心し、前を歩くものたちを見つめた。

「……いずれ俺も」

竜の草原をしばらく進むと、魔物の姿が完全に見当たらなくなった。

「流石におかしい、奥にいるほど強い魔物がいるはずなのに······」

「全員、臨戦体制をとれ! 何か来るぞ!!」

クレースの叫ぶ声と同時に、全員が巨大な魔力を感じた。

「上だ!」

ジンは一瞬で防御結界を展開すると、結界の周りに強い衝撃波が起こった。
そして一人、幼女の姿をしたものがゆっくりと降りてくる。

「こいつは······やべえな」

少女は警戒するように、そしてよく観察するようにジンたちの方を見た。
少女に対して、リンギルはクレースと初めて出会った時ほどのの強いオーラを感じる。

(確かに敵意はある。でも、それより何か違うものを感じる。真っ暗なところに独り、この子はずっと······誰かを探してる)

だが、悲しそうな顔をする少女のその瞳にもう光はなかった。
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