10 / 12
第一章 一番を手に入れろ
#2 過保護な兄
しおりを挟む
「ん……」
瞼にかかる髪を払いのけるように、寝返りを打つ。
向きに失敗した。閉じた瞼越しに感じる朝日が、起きろと刺激する。
「み……と、今は違うんでした。リーシェさん、起きて下さい」
身体を優しく揺すられる。
起こそうとしているのか、そうでないのか分からない。
「あと五分……」
「その台詞を言いたいだけでしょう。ほら、早くしないと遅刻しますよ!」
バサッ! と、包んでいた温もりが無くなり、急激に寒さが襲う。
「なによ……本当に五分寝たら起きたのに……」
まだ眠い目を擦りながら、ゆっくりと起き上る。
のろのろと視線をベッドのすぐ横に移せば、そこには白いタキシードを来た男性が一人。
背に生えた二枚の羽は魔法で消しているのか、その姿はただのイケメンな執事だ。
けれど間違いなく、彼は私が契約した使い魔――天使ソロエルだ。
彼はモノクルを掛け直すと、ため息を吐く。
「そんなこと言って、貴女が起きるわけないでしょう」
「……アンタはどこのオカンよ」
――私とソロエルの再会から、一週間が経った。
巷では天族召喚事件という大層な名前で、あの日のことが広まっているらしい。
それだけ「天使」を召喚できるのは稀で、見方を変えると異端な出来事だという。
あの日――天使を召喚したこともそうだが、彼と契約までしてしまった。その場に居合わせた生徒たち以外に、教師陣も驚きと困惑で手を出せずにいた。
そこへ、異常な魔力反応を観測した城の騎士団が学園を訪れ、その中にいた私の兄・ヴァルトがひとまず私を自宅まで運んだという。
それから6日間。私は召喚と契約で使い過ぎた魔力を補給するため、眠りについていたらしい。
目が覚めた瞬間の両親と兄、そしてメイドさんや執事さんの安心した顔は忘れられない。
とても心配させてしまったことには申し訳ないと思ってる。けれど同じくらいに、私を大切に想ってくれているのが分かって、とても嬉しかった。
その後、過保護な両親と兄には後一週間、学校を休むように言われたが、何日も休むわけにはいかない。と、今日登校することになった。
同時に、これからのことを理事長と直接話をすることになっている。
魔法のある国とはいえ、強大な魔力は人々の恐れの対象だ。
これからのこと。その言葉の中にどんな意味が込められているのか知らないが、私は悪いことをしたとは思っていない。
だから例え学園最強の魔法使いで、最高権力者だろうと私は自分の意見を貫き通すつもりでいる。
確かにきっかけは兄だった。けれど今はちゃんと心の底から『魔法を学びたい』という気持ちがあるんだから。
それを否定されたくない。
「退学、断固拒否!」
「なに朝から騒いでるんですか。早く着替えないと、貴女の過保護なお兄様がお迎えに来ますよ?」
ソロエルの声を聞いて、ハッと我に返る。
「そうだった! 学校まで送ってくれるって……」
薄ピンク色のネグリジェを脱ごうとして、ピタッと止まる。
視線の先には真顔でこっちを見つめる、ムカつくほどイケメンな顔。
「……ソロエル?」
「冗談ですよ。私は外で待ってますから」
彼は私に背を向けると、部屋を出て行った。
パタンとドアが閉まるのを見届け、私は着替えるために白くて豪華な装飾のクローゼットまで歩み寄る。
「それにしても、未だに慣れないや……。って、まだ一週間しか住んでないんだもん、当たり前か」
前世では普通にサラリーマンの父と専業主婦の母との間に産まれた。
兄弟は弟が一人で、二階建ての普通の家に住んでいた。つまり庶民である。
しかし今世はどうかというと……。
「うわ。シャンデリアとか初めて見る……」
なんとシュトラ家というのは、伯爵という地位を頂いているらしく、いわゆる『貴族』らしい。
ちなみにこの世界の爵位は上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五段階。
その中間って……歴史に詳しくない私でも、偉い家柄だということくらいは分かる。
今いる私の部屋は白と薄桃色がベースで、壁紙や絨毯も暖色系でまとめられていた。
家具は白をベースに、金具や取っ手が統べて銀でできたロイヤル感満載のモノである。
さっきまで寝ていたベッドも、大人三人が寝ても足りるくらい大きなもので、レースのカーテンがついた天蓋付きベッドってやつだ。
どれもこれもお嬢様使用。一体いくらするのやら……。と、値段を考える時点で、私の中身は庶民のままだと安心した。
リーシェとしては生まれてから十七年間、住んでいる家なので落ち着かない訳ではない。
ソロエルの話では「記憶が戻ってすぐのうちは、混乱しているところもあるのでしょう。すぐにそれも無くなります」とのこと。
つまり今の私は、前世という名のミルクを突然入れられた現世のコーヒー。
カフェオレになるには時間が必要みたい、ということだろう。
……我ながら上手いこと言った。
「……って、そんなこと言ってる場合じゃなかった! 早く着替えないと!」
私の体の数倍はあるクローゼットを開けると、入っているのは何十着ものドレス。
その端っこに掛けられた制服に素早く着替えて、側にあった鏡で身だしなみを整える。
改めて自分の姿を見つめる。こっちもやはり慣れない。
艶のある白に近い桜色の髪に、宝石のようなミントグリーンの瞳。肌も白くモチモチで、顔立ちも可愛いと綺麗の中間くらいで、整っている。
背も前世より高くて、胸も大きくなっ――そこはいいか。
とにかく、可愛すぎる!
自分だけど、自分じゃないみたいで……。
「いつまで見惚れているのですか」
「うわ!?」
突然、背後から現れたソロエルに驚いて、足を滑らせる。
後ろに倒れ込んだ私を支えた彼は、面倒くさそうにため息を吐いた。
「遅いので来てみれば……まさか、貴女がナルシストだとは思いませんでした」
「違うから。それより、まだ着替えてるかも知れないのに、ノックもなしに部屋に入るなんて非常識じゃない?」
「言ったでしょう。遅いから来た、と。それにお迎えの方がいらしてますよ」
「え?」
ソロエルに半分抱きかかえられた状態で振り返ると、部屋の入り口にイケメンオーラを放つ青年が立っていた。
髪は白金色、瞳は私と同じミントグリーン。服装は白を基調とし、細かく青と金の刺繍が施された騎士服だ。
「おはよう、リーシェ」
腰に下げた剣を揺らしながら、側まで歩みよってきた彼は膝まづくと、そのまま私の右手にキスを落とした。
「ヴァルト兄様!?」
「ああ、ごめん。あまりにも可愛かったから……つい、ね?」
いやいや、朝から妹にキスする兄なんて聞いたことないです。
悪びれた様子もなく、兄はそのまま背後にいるソロエルに視線を向けた。
「天使様も、おはようございます」
「ええ、おはようございます」
ニコッと微笑んだ兄と笑顔で挨拶を交わす天使。けど、バチっと火花が散ったのは気のせいですよね?
この二人は仲が悪いのか、私が目覚めてからも何度かこうした小さな衝突が起きている。
特にソロエルの方が敵対心を燃やしているみたいだけど……何かあったのかな。
「それにしても、天使さま。女性の部屋に無断で入るなんて、非常識じゃないですか?」
兄さん、それ。さっき私が言いました。
「ちゃんと確認してから入ったに決まっているじゃないですか。アナタの方こそ、朝から妹の手に口づけをするなんてどういう神経してるんですか」
「愛しい妹への愛情表現さ」
こっちにウインクされても、どう反応すればいいのだろうか。
前世では弟がいたので、兄弟とのやり取りには慣れてるつもりだったけど……。この人は何を考えているか分からない。
「こんな人は放っておいて、学校へ行きましょう」
「え、ちょっと、ソロエル?!」
彼にしては珍しく、嫌悪感を露にしている。
よほど兄が嫌いなのか。それにしても、召喚してからまだ1週間だというのに、ここまで嫌われるなんて……。うちの兄は只者じゃないようです。
「お! リーちゃん、おはよう」
手を引かれながら部屋を出ると、そこには兄と同じ格好をした騎士が二人、待ち構えていた。
一人は藍色の髪を撫でつけたように後ろに流し、眼鏡をしていて、冷たい印象を受ける。
もう一人はオレンジ色のくせっ毛をそのままにした、ふわふわの髪を揺らして、挨拶と同様に明るい印象を受けた。
対照的な二人を前に、私は記憶の中から彼らのことを思い出す。
「おはようございます。シェイさん、アルセンさん。いつも兄がご迷惑をおかけして……」
「いえ。リーシェリア様が気にされるようなことは何もありませんよ」
気遣ってくれてるんだろうけど、表情が一ミリも変わらないのは怖いです。
アルセンさんは、笑ったらモテると思うんだよね。
「おい、アル。そんな仏頂面じゃ、リーちゃんに嫌われるぞ?」
「これは生まれつきだ。お前こそ、いい加減リーシェリア様のことをリーちゃんと呼ぶのをやめろ。上司の妹君だぞ」
キラッと眼鏡を光らせるアルセンさんに対して、シェイさんは悪びれた様子もなく、私の肩に腕を回してきた。
「いいじゃん、リーちゃんとは小さいころから仲良しなんだし。ね~」
「あはは……」
彼の正式名はシェイ・ブローダン。あのクールで意地悪で剣バカなジンの実の兄だ。
私とジンがそうであるように、兄たちもまた幼いころから一緒にいる。
シュトラ家とブローダン家は古くから、強い主従で結ばれている。その為か、ジンの家では代々、生まれた子供にはシュトラ家の子息子女の護衛として常に一緒にいることを義務付けているらしい。
人生を“古くからの仕来り”で縛られていることに、彼らは不満や不可解さを持っていない。それが異質であり、心配な点ではあるけど……。
シェイさんやジンは毎日を楽しく生きている。側で見てきた私が言うんだから、たぶん心配はいらない。
「お前のそういう態度が気に入らないんだ!」
「あはは、よく言われる! でも、ヴァルトはこんな俺を好きって言ってくれたから、変わる気はないよ~」
「上司を呼び捨てに、だと……!? もう許さん!!」
無邪気に笑うシェイさんと、今にも剣を抜きそうなアルセンさんが、私の周りで追いかけっこを始める。
この二人は仲が良い。互いを信頼しているという意味では、兄とシェイさんの絆と同等と言える。
兄を含めた三人は私と同じ学園の同級生だ。
聞いた話によると学園のころから三人は目立っていたらしく、入学当初、私とジンは先生から遠い目で見られたのは記憶に新しい。
まったく、学園で何をしたのか……すっごく気になるじゃない!
『騎士は一人で戦う人もいるが、基本はチームプレイだ。互いを信頼しなくては、守るものも守れない。だから騎士として、剣を取ったなら。その力は仲間と守るべき者のために使うんだよ』
幼いころにジンの父親でブローダンの当主が言っていたのを思い出す。
彼らをみていると、本当にそうだなと納得できた。
「こら、二人とも。リーシェを困らせるなんて、どういうつもりかな?」
優しく肩を抱き寄せられる。隣を見上げれば、目を細めた兄が鋭く二人を睨んでいた。
「「も、申し訳ありませんでした」」
ピタッと立ち止った二人は、土下座しそうな勢いで頭を下げた。
ヴァルト兄さんは家族と仕事相手に対する態度が全く違う。今のように『騎士』としての顔は凛々しく、威厳があり、誰もが憧れる騎士だ。けれど――
「リーシェ! 大丈夫だったかい? もうこの二人は近づけさせないよ!」
「そこまでしなくていいから。それと頭を撫でないで」
家族、特に私に対してはココアに角砂糖を二十個入れたくらい甘~い顔になる。
自惚れではない。むしろ、そうであったらどんなにいいか……。
「君が可愛いのがいけないんだ。世界でいちばん愛しい僕の妹ちゃん」
チュッ。と、頬に触れる柔らかな感触。側を通ったメイドさん達が頬赤らめて小さく「キャー!」と叫んで去って行く。
シェイさんは微笑ましく眺め、アルセンさんはメイドさん以上に顔を真っ赤にさせて俯いている。ソロエルはというと、他人の振りだ。
とりあえず……学校に行かせてください。
* * * *
学校に着いたのはお昼過ぎでした。
あれだけ場を荒らした騎士の二人は「仕事があるので俺たちはこれで!」と、学校に着いた途端、颯爽と馬に飛び乗ってどこかへ消えた。
「兄様は行かなくていいんですか?」
「うん、行かないよ? 元々、今日リーシェに同行するのは僕だけだったのに、彼らが無理やりついてきたんだ」
ホント、何しに来たんだあの二人。
「理事長から保護者兼、王立騎士団の一人として立ちあって欲しいと頼まれたし。何より、リーシェと登校できて嬉しいし、断る理由はないよね!」
さりげなく手を繋いできた兄はふわりと目を細めて微笑む。その顔といったら天使(隣にいる彼ではない)のように可愛くて、私たちを遠巻きに見ていた人達が発狂して次々と倒れていく。
校門を入ってからずっと、熱い視線が注がれているのには気づいていた。
こう見えてヴァルト兄様は騎士団の中でも有名で、剣の腕は超一流、契約した召喚獣は天族の次に珍しいとされる幻の竜族。顔もイケメンで、貴族でありながら気取らない態度。女性や子供には特に優しく、騎士を目指す人にとってはとても憧れの存在なのだ。
けれど普段笑わないことでも知れ渡っている兄様だ。こんな甘い顔をしたら、周りが驚くのも無理はない。
「ヴァルト様あぁ~!」
「手を繋いでもらえるなんて! なんて、なんて羨まじいぃー!」
「私も妹にしてくださぁ~い!」
目がハートになった女子の反応はこんな感じだ。それは分かる。けれど……。
「なんて、ずるいんだ! 俺だって手を繋ぎたい!」
「俺もお傍に置いてください!!」
「弟にして下さーい!! それか、養子にしてくれぇー!」
赤い顔をした男子たちのこの反応を、妹としてはどう見たらいいのだろうか。
ちらりと兄の顔を見ると、バッチリ目があってしまった。すぐに顔を逸らす。
「ふふっ、リーシェは可愛いな」
頬を赤らめた兄が私の頬を撫でると、後ろから黄色い悲鳴とドッタン、バッタン倒れる音がした。
今は振り向かないのが賢明だろう。私は繋いだ兄の手を引いて、速足に校舎の中に入った。
廊下を進んでいる間も外と同じことになると面倒なので、兄に頼んで姿を見えないようにしてもらう。
「え? 二人きりになりたいなら早くそう言えばいいのに!」と、嬉々として言われて、正直……引きました。
顔はイケメンなのに、どうにかならないものか。
小さいころから大事にしてもらった記憶はあるけど、ここまで過剰になったのは最近のようだ。なにか理由があるのかな?
「あの。理事長とお話ということでしたから、このまま理事長室に行くんですよね?」
今まで傍観者を決めこんでいたソロエルが口を開く。
「そうだけど……」
それがどうかしたのか。そう聞く前に、ソロエルは私の耳に唇を寄せた。
「二人だけで話がしたいので、終わったら少々お時間を頂けますか」
「もしかして指令のこと?」
同じように小声で返せば、彼はコクリと頷く。
ソウ様とはマスに止まったときにしか話ができない。そんな大事な場面で気絶していたので、詳しい話はまだ聞かされていなかった。
「分かった。でも、理事長と話した後は教室に行こうと思ってるから、その後でもいい?」
天族召喚事件は授業中に起きたことだ。きっと皆も驚いたことだろう。
それに兄を呼んでくれたのは、きっとジンだ。だから迷惑をかけたことへの謝罪と、お世話になったことへの感謝をちゃんと顔を見て言いたかった。
「はい、構いません」
考えが伝わったのか、はにかんだソロエルはそれだけ言うと一歩後ろに下がった。
「いったい何の話をしているのかな?」
グイッと引き寄せられたかと思えば、両頬を大きな手に包まれる。
「いや、今のは……」
「お兄ちゃんには言えないこと?」
「ごめんなさい。い……言えませんっ」
ズキッと胸が痛む。
家族間で秘密を持つのは嫌だ。もちろん嘘を吐くのも、嫌いだ。
前世での価値観を持ち込みたくはないけど、こればかりは譲れない。偽善者と言われてもいい。それでも“嘘”だけは吐きたくない。
けれどその信念を曲げなくてはいけない。
このゲームの参加者のルール『参加者以外にゲームのことを話してはいけない』を破ることになるから。
「……。そんな顔しないで? 困らせるつもりはなかったんだ」
眉尻を下げて微笑む兄が優しく頭を撫でてきた。
「それに乙女というのは秘密の一つや二つあってこそ、美しさに磨きがかかるというものだよ」
「そういうもの、ですか?」
「そういうものです」
胸を張って言うことじゃないのに。得意げな兄が何だか面白かった。
「……ふふっ」
励ましてくれている。撫でる手が優しくて、自然と笑みがこぼれた。
ありがとう。心の中で囁いた言葉が届いたのか、兄さんは手を繋ぎ直すと、廊下を歩き出す。
いつか、ゲームの決着がついたときには、真っ先に兄さんに話そう。
きっと、どの小説や絵本よりも奇想天外で、ワクワクドキドキが止まらない面白い話を。
瞼にかかる髪を払いのけるように、寝返りを打つ。
向きに失敗した。閉じた瞼越しに感じる朝日が、起きろと刺激する。
「み……と、今は違うんでした。リーシェさん、起きて下さい」
身体を優しく揺すられる。
起こそうとしているのか、そうでないのか分からない。
「あと五分……」
「その台詞を言いたいだけでしょう。ほら、早くしないと遅刻しますよ!」
バサッ! と、包んでいた温もりが無くなり、急激に寒さが襲う。
「なによ……本当に五分寝たら起きたのに……」
まだ眠い目を擦りながら、ゆっくりと起き上る。
のろのろと視線をベッドのすぐ横に移せば、そこには白いタキシードを来た男性が一人。
背に生えた二枚の羽は魔法で消しているのか、その姿はただのイケメンな執事だ。
けれど間違いなく、彼は私が契約した使い魔――天使ソロエルだ。
彼はモノクルを掛け直すと、ため息を吐く。
「そんなこと言って、貴女が起きるわけないでしょう」
「……アンタはどこのオカンよ」
――私とソロエルの再会から、一週間が経った。
巷では天族召喚事件という大層な名前で、あの日のことが広まっているらしい。
それだけ「天使」を召喚できるのは稀で、見方を変えると異端な出来事だという。
あの日――天使を召喚したこともそうだが、彼と契約までしてしまった。その場に居合わせた生徒たち以外に、教師陣も驚きと困惑で手を出せずにいた。
そこへ、異常な魔力反応を観測した城の騎士団が学園を訪れ、その中にいた私の兄・ヴァルトがひとまず私を自宅まで運んだという。
それから6日間。私は召喚と契約で使い過ぎた魔力を補給するため、眠りについていたらしい。
目が覚めた瞬間の両親と兄、そしてメイドさんや執事さんの安心した顔は忘れられない。
とても心配させてしまったことには申し訳ないと思ってる。けれど同じくらいに、私を大切に想ってくれているのが分かって、とても嬉しかった。
その後、過保護な両親と兄には後一週間、学校を休むように言われたが、何日も休むわけにはいかない。と、今日登校することになった。
同時に、これからのことを理事長と直接話をすることになっている。
魔法のある国とはいえ、強大な魔力は人々の恐れの対象だ。
これからのこと。その言葉の中にどんな意味が込められているのか知らないが、私は悪いことをしたとは思っていない。
だから例え学園最強の魔法使いで、最高権力者だろうと私は自分の意見を貫き通すつもりでいる。
確かにきっかけは兄だった。けれど今はちゃんと心の底から『魔法を学びたい』という気持ちがあるんだから。
それを否定されたくない。
「退学、断固拒否!」
「なに朝から騒いでるんですか。早く着替えないと、貴女の過保護なお兄様がお迎えに来ますよ?」
ソロエルの声を聞いて、ハッと我に返る。
「そうだった! 学校まで送ってくれるって……」
薄ピンク色のネグリジェを脱ごうとして、ピタッと止まる。
視線の先には真顔でこっちを見つめる、ムカつくほどイケメンな顔。
「……ソロエル?」
「冗談ですよ。私は外で待ってますから」
彼は私に背を向けると、部屋を出て行った。
パタンとドアが閉まるのを見届け、私は着替えるために白くて豪華な装飾のクローゼットまで歩み寄る。
「それにしても、未だに慣れないや……。って、まだ一週間しか住んでないんだもん、当たり前か」
前世では普通にサラリーマンの父と専業主婦の母との間に産まれた。
兄弟は弟が一人で、二階建ての普通の家に住んでいた。つまり庶民である。
しかし今世はどうかというと……。
「うわ。シャンデリアとか初めて見る……」
なんとシュトラ家というのは、伯爵という地位を頂いているらしく、いわゆる『貴族』らしい。
ちなみにこの世界の爵位は上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五段階。
その中間って……歴史に詳しくない私でも、偉い家柄だということくらいは分かる。
今いる私の部屋は白と薄桃色がベースで、壁紙や絨毯も暖色系でまとめられていた。
家具は白をベースに、金具や取っ手が統べて銀でできたロイヤル感満載のモノである。
さっきまで寝ていたベッドも、大人三人が寝ても足りるくらい大きなもので、レースのカーテンがついた天蓋付きベッドってやつだ。
どれもこれもお嬢様使用。一体いくらするのやら……。と、値段を考える時点で、私の中身は庶民のままだと安心した。
リーシェとしては生まれてから十七年間、住んでいる家なので落ち着かない訳ではない。
ソロエルの話では「記憶が戻ってすぐのうちは、混乱しているところもあるのでしょう。すぐにそれも無くなります」とのこと。
つまり今の私は、前世という名のミルクを突然入れられた現世のコーヒー。
カフェオレになるには時間が必要みたい、ということだろう。
……我ながら上手いこと言った。
「……って、そんなこと言ってる場合じゃなかった! 早く着替えないと!」
私の体の数倍はあるクローゼットを開けると、入っているのは何十着ものドレス。
その端っこに掛けられた制服に素早く着替えて、側にあった鏡で身だしなみを整える。
改めて自分の姿を見つめる。こっちもやはり慣れない。
艶のある白に近い桜色の髪に、宝石のようなミントグリーンの瞳。肌も白くモチモチで、顔立ちも可愛いと綺麗の中間くらいで、整っている。
背も前世より高くて、胸も大きくなっ――そこはいいか。
とにかく、可愛すぎる!
自分だけど、自分じゃないみたいで……。
「いつまで見惚れているのですか」
「うわ!?」
突然、背後から現れたソロエルに驚いて、足を滑らせる。
後ろに倒れ込んだ私を支えた彼は、面倒くさそうにため息を吐いた。
「遅いので来てみれば……まさか、貴女がナルシストだとは思いませんでした」
「違うから。それより、まだ着替えてるかも知れないのに、ノックもなしに部屋に入るなんて非常識じゃない?」
「言ったでしょう。遅いから来た、と。それにお迎えの方がいらしてますよ」
「え?」
ソロエルに半分抱きかかえられた状態で振り返ると、部屋の入り口にイケメンオーラを放つ青年が立っていた。
髪は白金色、瞳は私と同じミントグリーン。服装は白を基調とし、細かく青と金の刺繍が施された騎士服だ。
「おはよう、リーシェ」
腰に下げた剣を揺らしながら、側まで歩みよってきた彼は膝まづくと、そのまま私の右手にキスを落とした。
「ヴァルト兄様!?」
「ああ、ごめん。あまりにも可愛かったから……つい、ね?」
いやいや、朝から妹にキスする兄なんて聞いたことないです。
悪びれた様子もなく、兄はそのまま背後にいるソロエルに視線を向けた。
「天使様も、おはようございます」
「ええ、おはようございます」
ニコッと微笑んだ兄と笑顔で挨拶を交わす天使。けど、バチっと火花が散ったのは気のせいですよね?
この二人は仲が悪いのか、私が目覚めてからも何度かこうした小さな衝突が起きている。
特にソロエルの方が敵対心を燃やしているみたいだけど……何かあったのかな。
「それにしても、天使さま。女性の部屋に無断で入るなんて、非常識じゃないですか?」
兄さん、それ。さっき私が言いました。
「ちゃんと確認してから入ったに決まっているじゃないですか。アナタの方こそ、朝から妹の手に口づけをするなんてどういう神経してるんですか」
「愛しい妹への愛情表現さ」
こっちにウインクされても、どう反応すればいいのだろうか。
前世では弟がいたので、兄弟とのやり取りには慣れてるつもりだったけど……。この人は何を考えているか分からない。
「こんな人は放っておいて、学校へ行きましょう」
「え、ちょっと、ソロエル?!」
彼にしては珍しく、嫌悪感を露にしている。
よほど兄が嫌いなのか。それにしても、召喚してからまだ1週間だというのに、ここまで嫌われるなんて……。うちの兄は只者じゃないようです。
「お! リーちゃん、おはよう」
手を引かれながら部屋を出ると、そこには兄と同じ格好をした騎士が二人、待ち構えていた。
一人は藍色の髪を撫でつけたように後ろに流し、眼鏡をしていて、冷たい印象を受ける。
もう一人はオレンジ色のくせっ毛をそのままにした、ふわふわの髪を揺らして、挨拶と同様に明るい印象を受けた。
対照的な二人を前に、私は記憶の中から彼らのことを思い出す。
「おはようございます。シェイさん、アルセンさん。いつも兄がご迷惑をおかけして……」
「いえ。リーシェリア様が気にされるようなことは何もありませんよ」
気遣ってくれてるんだろうけど、表情が一ミリも変わらないのは怖いです。
アルセンさんは、笑ったらモテると思うんだよね。
「おい、アル。そんな仏頂面じゃ、リーちゃんに嫌われるぞ?」
「これは生まれつきだ。お前こそ、いい加減リーシェリア様のことをリーちゃんと呼ぶのをやめろ。上司の妹君だぞ」
キラッと眼鏡を光らせるアルセンさんに対して、シェイさんは悪びれた様子もなく、私の肩に腕を回してきた。
「いいじゃん、リーちゃんとは小さいころから仲良しなんだし。ね~」
「あはは……」
彼の正式名はシェイ・ブローダン。あのクールで意地悪で剣バカなジンの実の兄だ。
私とジンがそうであるように、兄たちもまた幼いころから一緒にいる。
シュトラ家とブローダン家は古くから、強い主従で結ばれている。その為か、ジンの家では代々、生まれた子供にはシュトラ家の子息子女の護衛として常に一緒にいることを義務付けているらしい。
人生を“古くからの仕来り”で縛られていることに、彼らは不満や不可解さを持っていない。それが異質であり、心配な点ではあるけど……。
シェイさんやジンは毎日を楽しく生きている。側で見てきた私が言うんだから、たぶん心配はいらない。
「お前のそういう態度が気に入らないんだ!」
「あはは、よく言われる! でも、ヴァルトはこんな俺を好きって言ってくれたから、変わる気はないよ~」
「上司を呼び捨てに、だと……!? もう許さん!!」
無邪気に笑うシェイさんと、今にも剣を抜きそうなアルセンさんが、私の周りで追いかけっこを始める。
この二人は仲が良い。互いを信頼しているという意味では、兄とシェイさんの絆と同等と言える。
兄を含めた三人は私と同じ学園の同級生だ。
聞いた話によると学園のころから三人は目立っていたらしく、入学当初、私とジンは先生から遠い目で見られたのは記憶に新しい。
まったく、学園で何をしたのか……すっごく気になるじゃない!
『騎士は一人で戦う人もいるが、基本はチームプレイだ。互いを信頼しなくては、守るものも守れない。だから騎士として、剣を取ったなら。その力は仲間と守るべき者のために使うんだよ』
幼いころにジンの父親でブローダンの当主が言っていたのを思い出す。
彼らをみていると、本当にそうだなと納得できた。
「こら、二人とも。リーシェを困らせるなんて、どういうつもりかな?」
優しく肩を抱き寄せられる。隣を見上げれば、目を細めた兄が鋭く二人を睨んでいた。
「「も、申し訳ありませんでした」」
ピタッと立ち止った二人は、土下座しそうな勢いで頭を下げた。
ヴァルト兄さんは家族と仕事相手に対する態度が全く違う。今のように『騎士』としての顔は凛々しく、威厳があり、誰もが憧れる騎士だ。けれど――
「リーシェ! 大丈夫だったかい? もうこの二人は近づけさせないよ!」
「そこまでしなくていいから。それと頭を撫でないで」
家族、特に私に対してはココアに角砂糖を二十個入れたくらい甘~い顔になる。
自惚れではない。むしろ、そうであったらどんなにいいか……。
「君が可愛いのがいけないんだ。世界でいちばん愛しい僕の妹ちゃん」
チュッ。と、頬に触れる柔らかな感触。側を通ったメイドさん達が頬赤らめて小さく「キャー!」と叫んで去って行く。
シェイさんは微笑ましく眺め、アルセンさんはメイドさん以上に顔を真っ赤にさせて俯いている。ソロエルはというと、他人の振りだ。
とりあえず……学校に行かせてください。
* * * *
学校に着いたのはお昼過ぎでした。
あれだけ場を荒らした騎士の二人は「仕事があるので俺たちはこれで!」と、学校に着いた途端、颯爽と馬に飛び乗ってどこかへ消えた。
「兄様は行かなくていいんですか?」
「うん、行かないよ? 元々、今日リーシェに同行するのは僕だけだったのに、彼らが無理やりついてきたんだ」
ホント、何しに来たんだあの二人。
「理事長から保護者兼、王立騎士団の一人として立ちあって欲しいと頼まれたし。何より、リーシェと登校できて嬉しいし、断る理由はないよね!」
さりげなく手を繋いできた兄はふわりと目を細めて微笑む。その顔といったら天使(隣にいる彼ではない)のように可愛くて、私たちを遠巻きに見ていた人達が発狂して次々と倒れていく。
校門を入ってからずっと、熱い視線が注がれているのには気づいていた。
こう見えてヴァルト兄様は騎士団の中でも有名で、剣の腕は超一流、契約した召喚獣は天族の次に珍しいとされる幻の竜族。顔もイケメンで、貴族でありながら気取らない態度。女性や子供には特に優しく、騎士を目指す人にとってはとても憧れの存在なのだ。
けれど普段笑わないことでも知れ渡っている兄様だ。こんな甘い顔をしたら、周りが驚くのも無理はない。
「ヴァルト様あぁ~!」
「手を繋いでもらえるなんて! なんて、なんて羨まじいぃー!」
「私も妹にしてくださぁ~い!」
目がハートになった女子の反応はこんな感じだ。それは分かる。けれど……。
「なんて、ずるいんだ! 俺だって手を繋ぎたい!」
「俺もお傍に置いてください!!」
「弟にして下さーい!! それか、養子にしてくれぇー!」
赤い顔をした男子たちのこの反応を、妹としてはどう見たらいいのだろうか。
ちらりと兄の顔を見ると、バッチリ目があってしまった。すぐに顔を逸らす。
「ふふっ、リーシェは可愛いな」
頬を赤らめた兄が私の頬を撫でると、後ろから黄色い悲鳴とドッタン、バッタン倒れる音がした。
今は振り向かないのが賢明だろう。私は繋いだ兄の手を引いて、速足に校舎の中に入った。
廊下を進んでいる間も外と同じことになると面倒なので、兄に頼んで姿を見えないようにしてもらう。
「え? 二人きりになりたいなら早くそう言えばいいのに!」と、嬉々として言われて、正直……引きました。
顔はイケメンなのに、どうにかならないものか。
小さいころから大事にしてもらった記憶はあるけど、ここまで過剰になったのは最近のようだ。なにか理由があるのかな?
「あの。理事長とお話ということでしたから、このまま理事長室に行くんですよね?」
今まで傍観者を決めこんでいたソロエルが口を開く。
「そうだけど……」
それがどうかしたのか。そう聞く前に、ソロエルは私の耳に唇を寄せた。
「二人だけで話がしたいので、終わったら少々お時間を頂けますか」
「もしかして指令のこと?」
同じように小声で返せば、彼はコクリと頷く。
ソウ様とはマスに止まったときにしか話ができない。そんな大事な場面で気絶していたので、詳しい話はまだ聞かされていなかった。
「分かった。でも、理事長と話した後は教室に行こうと思ってるから、その後でもいい?」
天族召喚事件は授業中に起きたことだ。きっと皆も驚いたことだろう。
それに兄を呼んでくれたのは、きっとジンだ。だから迷惑をかけたことへの謝罪と、お世話になったことへの感謝をちゃんと顔を見て言いたかった。
「はい、構いません」
考えが伝わったのか、はにかんだソロエルはそれだけ言うと一歩後ろに下がった。
「いったい何の話をしているのかな?」
グイッと引き寄せられたかと思えば、両頬を大きな手に包まれる。
「いや、今のは……」
「お兄ちゃんには言えないこと?」
「ごめんなさい。い……言えませんっ」
ズキッと胸が痛む。
家族間で秘密を持つのは嫌だ。もちろん嘘を吐くのも、嫌いだ。
前世での価値観を持ち込みたくはないけど、こればかりは譲れない。偽善者と言われてもいい。それでも“嘘”だけは吐きたくない。
けれどその信念を曲げなくてはいけない。
このゲームの参加者のルール『参加者以外にゲームのことを話してはいけない』を破ることになるから。
「……。そんな顔しないで? 困らせるつもりはなかったんだ」
眉尻を下げて微笑む兄が優しく頭を撫でてきた。
「それに乙女というのは秘密の一つや二つあってこそ、美しさに磨きがかかるというものだよ」
「そういうもの、ですか?」
「そういうものです」
胸を張って言うことじゃないのに。得意げな兄が何だか面白かった。
「……ふふっ」
励ましてくれている。撫でる手が優しくて、自然と笑みがこぼれた。
ありがとう。心の中で囁いた言葉が届いたのか、兄さんは手を繋ぎ直すと、廊下を歩き出す。
いつか、ゲームの決着がついたときには、真っ先に兄さんに話そう。
きっと、どの小説や絵本よりも奇想天外で、ワクワクドキドキが止まらない面白い話を。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
前世では番だったかもしれないけど…
吉野 那生
恋愛
彼を初めて見た瞬間、雷に打たれたような気がした。
頭の中に流れ込んでくる前世の記憶。
——なぜ、今まで忘れていたのだろう?
『ノール!』
そう呼びかけた私に、彼は冷たい眼差しを向けた。
*
「始まりの聖女」のアカリとノールが、誰もが宝玉を抱いて生まれてくる世界に生まれ変わり、また出会うお話です。
「始まりの聖女」をお読みになられてから、こちらをお読みいただく事をオススメします。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる