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制限時間
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ご主人が忍術育成学校に入学して驚いていた。担任の教官から授業の一番最初に教わることは忍術ではなく、「目的と制限時間」の設定であった。
忍術者育成学校は一年間で終わりだ。この一年間でたくさん技術を継ぐために、そしてご主人自身の成長の為に効率よく成果は劇的に上がる! つまりご主人たちは、「この時間で終わらせよう」という時間制限を意識して努力すると、その時間制限の中でどう努力するか設計することができるようになる。
逆に、「とりあえず算術やろうかな」などと考えていると、目的もなくだらだら時間だけが経過して、結局時間をかけたわりに何も得られていない、という最悪な状態になってしまうことを防ぐために、「この時間内に、この目的を達成しよう」と時間制限を設定したほうが、結果につながりやすい。
「授業は必ず、目的を決めると同時に、「それにかかる時間とかけてもいい時間」を設定すること最初に勉強する。たったそれだけのことで、努力の効率がかなり向上し、結果につながるようになるはずです。 努力する前に、その努力の目的と、それにかかる時間を考える。そして終わったら確認をして、明日の目的を考える。 この習慣があるだけで、結果につながる努力ができるようになります。ぜひ頑張ってみてください!」と教官から指導されていた。
□□□□…………飛彩
忍術屋敷の講義室で橘内の言葉通り、座学の忍術勉強会が行われた。
「参加するのは別に構わないが……ちょっとやり辛ぇな」
ご主人も参加したいと申し出たところ、一応了承はもらった。まあ、心から歓迎されているというわけではなさそうだが。講義室はそれなりに広く、百人近くは座れそうだが、ここにいるのは数人だった。
ご主人の右隣の席には山中琥珀が座っている。結構気合の入った表情だ。やる気があるのだろう。
今回の勉強で役立つ知識が教えてもらえるかは、まだ分からないが、ご主人も琥珀を見習わないと。
ご主人の前の席には明石又兵衛がいる。彼は精鋭部隊を率いているが、頭脳の方はまだまだなので、率先して勉学に勤しむべきではある。
ただ、当の本人は戦闘訓練をしたいようで、「なぁ、こんな事しなくて戦闘訓練しませんかぁ?」と教官に抗議をしていた。
「わがまま言ってると怒られますよ……!」
又兵衛の横の席に座る佐々木小次郎が、又兵衛を慌てて嗜める。小次郎は又兵衛のサポートをする役目をさせているが、それが原因で心労が絶えないようだ。
「富田家には見込みのある奴は多いが、あまりにも教養に欠ける奴が多い。指揮する立場の者として勉強はして当然だ。大人しく受けやがれ」
又兵衛の言葉を聞いていた教官は、毅然とした態度でそう言い放った。教養不足なところは間違いないだろう。身分を問わず採用しているので、平民出身の者も多い。いくら才能があるとはいえ、武家生まれと平民生まれでは教養には差が出てしまう。このように教えれば問題はないのだが。
「確かに又兵衛とかはもっと勉強しないと駄目だよね」とそんなことを言っているのは、ご主人の左隣に座っている毛利吉政だ。どの口で言っているんだと、心の中で突っ込む。
ちなみに吉政は元々サボるつもりだったが、ご主人と琥珀が参加するのを見て、自分も授業に出ると言い出した。相変わらずマイペースなやつである。ちなみに吉政の左隣には、毛利秀政が座っている。
秀政は真面目なので、最初から参加する気だったようだ。
「又兵衛とお前が特に勉強しないといけねぇんだよ」
教官が容赦なくそう指摘する、吉政と又兵衛は最年長だ。
「な、何? 儂も勉強しないといけないのか? こう見えて色々知っているんだぞ…」
「ほう? じゃあ、問題だ。近江国の浅井郡以外の郡を全て答えろ」
「…………えーと、この屋敷があるところ……甲賀郡? あとはガガ……ガモ……蒲生郡?」
「甲賀郡と蒲生郡だ……ここの場所すら知らんのかお前は」
「そんなん知らなくても戦には勝てるし!」
吉政は堂々とそう宣言した。
実際豊前国人一揆戦で吉政に痛い目に遭わされている教官としては、反論の余地がないようで、少し言葉を詰まらせた。こんな奴にやられちまったのか、と言いたげな表情で教官は吉政を見る。
「知識不足じゃ痛い目見る時がいずれ来るかもしれねぇーだろ。お前、忍術の属性とか全部知ってんだろーな」
「当たり前でしょ」
教官に聞かれてドヤ顔で吉政は喋り始める。
「炎を起こすやつと水を起こすやつ。それから土とか潜るやつ。えーと、あと爆発させるやつもあったね。それから木とかのやつもあった。あ、音鳴らすやつもあったじゃん! うーんこれだけかな」
「まだまだあるに決まってんだろ!」
「えー!?」
「忍術の属性ってのは全部で十八種類。あと各遁術を加えると三十六計逃げるに如かずあると言われている」そう言って、教官は忍術の種類を書き始めた。
『火、水、木、金、土、光、陰、闇、風、雷、回復、氷、呪、幻、爆発、精神、時、音』
一応吾輩も長く生きているので、全部知ってはいた、はずなのだが、だいぶ前の話なのでいくつか忘れている属性があった。
「そんなにあるのか。でも吾輩は十二ぐらいしか使ってないんだけど」
「人は全属性を利用出来るというわけではない。忍術の利用には霊水が必要だ。霊水の原料は霊石と呼ばれる鉱石で、国によって採れる霊石と取れない霊石がある。甲賀郡だと木と水の霊石だな。独占している霊石は他の国に流さないよう、どの国も厳重に取り締まっている。ちなみに十八種類とは言ったが、実際はもっと多いと言われている。存在自体が隠されていて、情報が出回っていない属性もそれなりにあるだろうな」
最後は初耳だった。もしかすると、甲賀郡望月家しか知らない属性などもあるのだろうか。
しかし、そんなのがあるなら、前回の戦で伊賀衆か甲賀衆のどちらかが使ってそうなものだが。
そこまで強くないなら、秘密にする必要もなさそうだし……ないのだろうか?
「それぞれの霊石はどの国が独占しているんですか?」
そう質問したのは隣にいた琥珀だ。
「近江国は木と水と土で、伊賀国は火と呪だ。前回の戦いでは使ってこなかったみたいだな。防衛向けの忍術が多いから、攻めの時には使わなかったんだろう。摂津国は回復。山城国は陰と闇、河内国は風と雷。和泉国は、幻と爆発、大和国は氷と精神だな」
「残りの四個は独占ってわけじゃないんですか?」
「ああ、ただ、全ての地域でも採掘出来る霊石ってのはない。地域によって採れたり採れなかったりだな。甲賀郡では雷と氷はさっぱり採れねぇからな」
琥珀は興味深そうに教官の話を聞いていた。琥珀は凄く勉強熱心だ。逆に忍術に詳しくないといけないはずの吉政は、いつの間にか机にうつ伏せになって寝息を立てていた。吉政には琥珀を見習って欲しいくらいだ。
教官は寝ている吉政を見て、怒るより呆れてため息をついた。
「まあ、そいつには無駄に知識とかは入れないほうが逆にいいかもな。代わりに隣のお前! 秀政だったか?」
「ひゃ、ひゃい!?」
吉政の左隣で真面目に話を聞いていた秀政を教官は指名した。教官の鋭い眼光で見つめられ、秀政は緊張し体を強張らせている。
「お前が知識を身につけて、吉政をサポートしろ。隠密部隊の副隊長としてな」
「は……え? 副隊長!?」
「何を驚いている」
「そ、そりゃ驚きますよ! 僕なんか新米ですよ! 副隊長なんか務まるわけないですよ!」
「腕は二番目に良いじゃねーか。今は違うかもしれないがいずれそうなるから、今から勉強はしておけよ」
「え、ええええ!?」
突然副隊長になると宣告されて、秀政は驚いていた。まあ、順当に行けばいずれそうなるだろう。
才能は高く、現時点での実力も急成長している。何より吉政が気に入っている。
太閤馬廻隊の人事は橘内こと山中長俊と宮部継潤が決めているが継潤も七十近くになり、最近は橘内が上申して、最終的な決定は太閤がするのだが、反対することは基本ない。なので橘内次第ではあるが、彼は秀政のことを高く評価しているので、経験をもっと積めばいずれそうなりそうだ。
忍術についての授業は一旦終了した。秀政は勉強しておけと言われ、「忍術の練習もしないといけないのに……」と嘆いていた。
忍術者育成学校は一年間で終わりだ。この一年間でたくさん技術を継ぐために、そしてご主人自身の成長の為に効率よく成果は劇的に上がる! つまりご主人たちは、「この時間で終わらせよう」という時間制限を意識して努力すると、その時間制限の中でどう努力するか設計することができるようになる。
逆に、「とりあえず算術やろうかな」などと考えていると、目的もなくだらだら時間だけが経過して、結局時間をかけたわりに何も得られていない、という最悪な状態になってしまうことを防ぐために、「この時間内に、この目的を達成しよう」と時間制限を設定したほうが、結果につながりやすい。
「授業は必ず、目的を決めると同時に、「それにかかる時間とかけてもいい時間」を設定すること最初に勉強する。たったそれだけのことで、努力の効率がかなり向上し、結果につながるようになるはずです。 努力する前に、その努力の目的と、それにかかる時間を考える。そして終わったら確認をして、明日の目的を考える。 この習慣があるだけで、結果につながる努力ができるようになります。ぜひ頑張ってみてください!」と教官から指導されていた。
□□□□…………飛彩
忍術屋敷の講義室で橘内の言葉通り、座学の忍術勉強会が行われた。
「参加するのは別に構わないが……ちょっとやり辛ぇな」
ご主人も参加したいと申し出たところ、一応了承はもらった。まあ、心から歓迎されているというわけではなさそうだが。講義室はそれなりに広く、百人近くは座れそうだが、ここにいるのは数人だった。
ご主人の右隣の席には山中琥珀が座っている。結構気合の入った表情だ。やる気があるのだろう。
今回の勉強で役立つ知識が教えてもらえるかは、まだ分からないが、ご主人も琥珀を見習わないと。
ご主人の前の席には明石又兵衛がいる。彼は精鋭部隊を率いているが、頭脳の方はまだまだなので、率先して勉学に勤しむべきではある。
ただ、当の本人は戦闘訓練をしたいようで、「なぁ、こんな事しなくて戦闘訓練しませんかぁ?」と教官に抗議をしていた。
「わがまま言ってると怒られますよ……!」
又兵衛の横の席に座る佐々木小次郎が、又兵衛を慌てて嗜める。小次郎は又兵衛のサポートをする役目をさせているが、それが原因で心労が絶えないようだ。
「富田家には見込みのある奴は多いが、あまりにも教養に欠ける奴が多い。指揮する立場の者として勉強はして当然だ。大人しく受けやがれ」
又兵衛の言葉を聞いていた教官は、毅然とした態度でそう言い放った。教養不足なところは間違いないだろう。身分を問わず採用しているので、平民出身の者も多い。いくら才能があるとはいえ、武家生まれと平民生まれでは教養には差が出てしまう。このように教えれば問題はないのだが。
「確かに又兵衛とかはもっと勉強しないと駄目だよね」とそんなことを言っているのは、ご主人の左隣に座っている毛利吉政だ。どの口で言っているんだと、心の中で突っ込む。
ちなみに吉政は元々サボるつもりだったが、ご主人と琥珀が参加するのを見て、自分も授業に出ると言い出した。相変わらずマイペースなやつである。ちなみに吉政の左隣には、毛利秀政が座っている。
秀政は真面目なので、最初から参加する気だったようだ。
「又兵衛とお前が特に勉強しないといけねぇんだよ」
教官が容赦なくそう指摘する、吉政と又兵衛は最年長だ。
「な、何? 儂も勉強しないといけないのか? こう見えて色々知っているんだぞ…」
「ほう? じゃあ、問題だ。近江国の浅井郡以外の郡を全て答えろ」
「…………えーと、この屋敷があるところ……甲賀郡? あとはガガ……ガモ……蒲生郡?」
「甲賀郡と蒲生郡だ……ここの場所すら知らんのかお前は」
「そんなん知らなくても戦には勝てるし!」
吉政は堂々とそう宣言した。
実際豊前国人一揆戦で吉政に痛い目に遭わされている教官としては、反論の余地がないようで、少し言葉を詰まらせた。こんな奴にやられちまったのか、と言いたげな表情で教官は吉政を見る。
「知識不足じゃ痛い目見る時がいずれ来るかもしれねぇーだろ。お前、忍術の属性とか全部知ってんだろーな」
「当たり前でしょ」
教官に聞かれてドヤ顔で吉政は喋り始める。
「炎を起こすやつと水を起こすやつ。それから土とか潜るやつ。えーと、あと爆発させるやつもあったね。それから木とかのやつもあった。あ、音鳴らすやつもあったじゃん! うーんこれだけかな」
「まだまだあるに決まってんだろ!」
「えー!?」
「忍術の属性ってのは全部で十八種類。あと各遁術を加えると三十六計逃げるに如かずあると言われている」そう言って、教官は忍術の種類を書き始めた。
『火、水、木、金、土、光、陰、闇、風、雷、回復、氷、呪、幻、爆発、精神、時、音』
一応吾輩も長く生きているので、全部知ってはいた、はずなのだが、だいぶ前の話なのでいくつか忘れている属性があった。
「そんなにあるのか。でも吾輩は十二ぐらいしか使ってないんだけど」
「人は全属性を利用出来るというわけではない。忍術の利用には霊水が必要だ。霊水の原料は霊石と呼ばれる鉱石で、国によって採れる霊石と取れない霊石がある。甲賀郡だと木と水の霊石だな。独占している霊石は他の国に流さないよう、どの国も厳重に取り締まっている。ちなみに十八種類とは言ったが、実際はもっと多いと言われている。存在自体が隠されていて、情報が出回っていない属性もそれなりにあるだろうな」
最後は初耳だった。もしかすると、甲賀郡望月家しか知らない属性などもあるのだろうか。
しかし、そんなのがあるなら、前回の戦で伊賀衆か甲賀衆のどちらかが使ってそうなものだが。
そこまで強くないなら、秘密にする必要もなさそうだし……ないのだろうか?
「それぞれの霊石はどの国が独占しているんですか?」
そう質問したのは隣にいた琥珀だ。
「近江国は木と水と土で、伊賀国は火と呪だ。前回の戦いでは使ってこなかったみたいだな。防衛向けの忍術が多いから、攻めの時には使わなかったんだろう。摂津国は回復。山城国は陰と闇、河内国は風と雷。和泉国は、幻と爆発、大和国は氷と精神だな」
「残りの四個は独占ってわけじゃないんですか?」
「ああ、ただ、全ての地域でも採掘出来る霊石ってのはない。地域によって採れたり採れなかったりだな。甲賀郡では雷と氷はさっぱり採れねぇからな」
琥珀は興味深そうに教官の話を聞いていた。琥珀は凄く勉強熱心だ。逆に忍術に詳しくないといけないはずの吉政は、いつの間にか机にうつ伏せになって寝息を立てていた。吉政には琥珀を見習って欲しいくらいだ。
教官は寝ている吉政を見て、怒るより呆れてため息をついた。
「まあ、そいつには無駄に知識とかは入れないほうが逆にいいかもな。代わりに隣のお前! 秀政だったか?」
「ひゃ、ひゃい!?」
吉政の左隣で真面目に話を聞いていた秀政を教官は指名した。教官の鋭い眼光で見つめられ、秀政は緊張し体を強張らせている。
「お前が知識を身につけて、吉政をサポートしろ。隠密部隊の副隊長としてな」
「は……え? 副隊長!?」
「何を驚いている」
「そ、そりゃ驚きますよ! 僕なんか新米ですよ! 副隊長なんか務まるわけないですよ!」
「腕は二番目に良いじゃねーか。今は違うかもしれないがいずれそうなるから、今から勉強はしておけよ」
「え、ええええ!?」
突然副隊長になると宣告されて、秀政は驚いていた。まあ、順当に行けばいずれそうなるだろう。
才能は高く、現時点での実力も急成長している。何より吉政が気に入っている。
太閤馬廻隊の人事は橘内こと山中長俊と宮部継潤が決めているが継潤も七十近くになり、最近は橘内が上申して、最終的な決定は太閤がするのだが、反対することは基本ない。なので橘内次第ではあるが、彼は秀政のことを高く評価しているので、経験をもっと積めばいずれそうなりそうだ。
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